プロデューサー/研究者 若新雄純さんのリクルート考

シリーズ

リクルート考

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社会をリードする役割を背負いながら多様な視点や存在を“ひいき”する存在でいて欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2020年11月号からの転載記事です

粗削りな若者を受け入れる寛容さにあふれていたリクルート

リクルートとの出会いは、ドリームゲートです。実は大学1年生の時には会社を立ち上げていて、2003年に学生向けプログラムの1期生になりました。

当時、経済産業省のプロジェクトだったドリームゲートをリクルートが受託していて、ご担当だったのが、当時『アントレ』(現在はサービス移管)の松谷卓也さん(現ドリームゲート運営株式会社プロジェクトニッポン代表取締役社長)。リクルートのインターンの方やアントレ編集部の方々とともにいろんな活動をご一緒しました。

福井を出て大学生になって、初めて出会った「大きな会社」。大企業なのに働く人も経営者も若い、都会のキラキラしたイメージを受けました。その時ご一緒したキャラの濃いインターン生たちは、起業する前にとりあえず入社して勉強しようと考えている人もいたし、一方リクルート側もそんな人たちを粗削りだけど預かってみようかといった寛容さがあるのが面白いと感じていました。

正解や絶対はない アンチテーゼを唱える存在

最近もリクルートのいくつかのプロジェクトをご一緒させていただいていますが、直近4年間務めさせていただいているのは、『リクナビNEXT』主催の企業内の個人の取り組みを評価するGOOD ACTIONアワード(働き方の多様化が求められる現代において、一人ひとりがイキイキと働くための職場の取り組みに光をあてる。2020年に7回目を迎えるプロジェクト) の審査員。

最初、「GOODはやめませんか? GOODかどうかわらかないけれど疑問を呈すような可能性を感じる取り組みなら評価したい」といって意見をぶつけた経緯があります。結局、リクナビNEXT編集長の藤井薫さんから、「審査員として入っていただきながら新しい基準を一緒に考えて欲しい」と口説かれてお引き受けすることにしました。

審査員全員が同じ考え方で評価するなら審査員はひとりで十分です。多様な視点から、揺らぎを起こす存在が、アワード全体にドラマや深み、進化を生み出せるのではないかと思い、審査員を続けさせていただいています。

実はこのスタンスが、自分自身の仕事で最も大切にしていることです。どんなものにも、王道主流、メインストリームとしての責務を担う存在と、そこから少し離れて別の視点から問題を提起する存在が必要だと思うのです。

例えば、音楽業界のなかにも、誰もが支持する国民的アイドルグループや、大ヒット曲を飛ばすアーティストの横で、セールスはそこまでじゃないけれど熱狂的なファンがついていて、音楽業界や社会にアンチテーゼを投げかける「伝説のアーティスト」と呼ばれる存在がいる。

王道を走るアーティストは世の中の総意としての主役を務め上げ、誰もが正しいと思えることを言い続ける責務を背負っているともいえます。ただ、それだけでは、業界や社会の変化に対応できませんし現実とかけ離れてしまう。

真の現実の姿とは、不完全で不安定で変化し続けるもの。不安で弱く正解を迷い続けている。だからこそ、誰もが正解だと思い込んでいることに対し、「それは本当に正解なのか?」と投げかける存在が必要です。僕は常にそういう存在でありたいと考えています。

不完全さに向き合い納得解を探す 上手に迷うスキルを

女子高生と地域行政とのコラボ事業や、『スタディサプリ』などに関わらせていただくなかで、10代の若者たちと向き合ってきました。彼らが信頼する大人とは、自らの不完全さや弱さを受け入れ、一緒に不安がってくれたり、悩んだりしてくれる大人。世の中、迷いたくない人が多いから「結論」を支持したがる人が多いわけですが、いくつになっても、もっと上手に迷えるスキルが大事です。

どんなに成熟しても、自らを不安で弱い存在だと認識し、常に未完成であると言い続けたいと考えています。だからこそ変化し、成長し続けられると思うので。

リクルートは今や巨大なグローバル企業。社会をリードする王道の役割も背負っていると思います。今から創業当時のベンチャーのようなマインドに戻ろうとしても難しい。それでも柔軟にさまざまな視点や技術、多様な人材を取り込みながら成長をしていくためには、緩やかな関係性で新しい人や企業のエネルギーを取り込んでいったらよいと思います。

例えば、「人材採用」だけでなく、「関係採用」みたいなのはどうでしょう。リクルートと関わりたいというスタートアップや若者を“ひいき”して緩くつながる仕組みがあってもよいかもしれません。消費者やクライアントとともに悩み続けられる存在として、多様な視点や存在に寛容な企業であり続けて欲しいと思います。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
プロデューサー/研究者

株式会社NEWYOUTH代表取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師、福井大学産学官連携本部客員准教授、GOOD ACTIONアワード審査員。専門はコミュニケーション論とオープンイノベーション政策。在学中に起業を経験。大学院終了後独立し、全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や週休4日で月収15万の「ゆるい就職」、女子高生による自治体改革事業「鯖江市役所J K課」など、人と組織、地域社会との多様な成長モデルを研究・模索する実験的プロジェクトを多数実施。テレビコメンテーターや、企業・団体の人材・組織開発コンサルティングを行っている。著書に『創造的脱力~かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』(光文社新書、2015年)、『スタディサプリ 三賢人の学問探究ノート(2) 社会を究める』(ポプラ社、2020年 水無田気流、小川仁志との共著)

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