ギャルは「自由と個性」の象徴。Z世代のegg編集長から学ぶ多様な価値観の共存方法

シリーズ

Z世代の視点

egg-akaogi_main_common
文:葛原 信太郎 写真: 関口 佳代

私、生まれたときからギャルなんです── 。『egg』編集長の赤荻瞳さんは、ギャルを「自由と個性の象徴」と定義する。周囲を気にせず自分らしく生きるZ世代から、これからの時代に大切な価値観を学ぶ。

1990年中盤以降生まれの「Z世代」が、いよいよ社会で活躍をはじめている。彼らは、「スマートフォンが当たり前」「大災害による社会の混乱」「SNSで世界中と交流できる」など、まったく新しい環境で育っており、「社会課題への意識が高い」「学校・会社以外のコミュニティを持つ」「慣習に縛られず一直線に目的を目指す」といった傾向が強いそうだ。

今回話を聞いたのは、1996年生まれでギャル向けメディア『egg』編集長の赤荻瞳(あかおぎ・ひとみ)さん。1995年に創刊され、2014年に休刊するまでの約20年間「ギャル」と称される若者カルチャーを支え続けたeggが、2018年に復活にあたり編集長に就任したのが赤荻さんだ。憧れの媒体を引き継ぎ、全盛期に負けず劣らずの盛り上がりをつくる赤萩さんに、ギャルを通じて見えてくるZ世代の価値観を聞いた。(本取材は2021年7月に行いました)

生まれた瞬間から“ギャル”だった

── 赤荻さんはいつからギャルなんですか。

生まれた瞬間からギャルだったんですよ(笑)。赤ちゃんの頃からかわいいものに囲まれていて、自然とギャルが好きになっていったんです。ママは服が好きでとてもオシャレ。「目立ってなんぼでしょ」「周りの人に合わせる必要なんてない」っていう感覚はママから受け継いだと思います。

小学校の頃から、ママが持っていた『GALS!』(カリスマ女子高生たちの友情を描いたギャル漫画)を読んでかわいいなって思っていたし、『モーニング娘。』のミニスカートやキラキラした格好に憧れて育ちました。小学校のいつメン(いつものメンバー)とは、雑誌を回し読みしていました。私はegg担当で、他の子は違うギャル雑誌。それぞれが雑誌を買って、貸し合っていました。

写真

── そんな赤荻さんはなぜeggの編集長に?

高校の頃にはいつも渋谷にいて、卒業したら渋谷で働きたいと考えていました。その後、ギャルサー(ギャルサークル)の先輩が声をかけてくれて、渋谷の広告会社に就職。その会社でeggをWebメディアとして復活させるという話が持ち上がり、すぐに「編集長をやりたい!」と手を上げました。当時の社長が熱意を認めてくれて、私は編集長兼広告営業として担当することに。

コンテンツをつくるメンバーが2人加わり、編集部がスタートしました。現在はYouTubeの動画をメインコンテンツとし、Instagram、Twitter、TikTok、LINE LIVEなども運用しています。

── 紙の雑誌も、年2回発行という形で復活されましたね。

当初は、ぶっちゃけ、紙の雑誌ってどうなんだろう…って気持ちもありました。私自身、最近はほとんど雑誌を読んでなかったですし。でも、私が読んでいたeggは雑誌だったから、絶対に復活させたいとも思ってたんです。実際、モデルのみんなもYouTubeの視聴者さんも、雑誌の復活を期待してくれていた。そういう声をたくさんもらって「実は需要あるじゃん」って。

ただ、今の時代に雑誌を復活させるなら、月刊誌ではすぐに飽きられちゃうだろうと考えました。それに、自分が購読していた小学生・中学生のころを思い出すと、毎月雑誌に500円以上を払うのはしんどかった。私たちにも、読者にも無理がない頻度を考えて、発行ペースを年2回と決めました。実際に店頭に並ぶと、大好評でうれしかったです。

── 今のeggにとって雑誌はどんな存在なのでしょうか。

YouTubeの視聴者さんに対しての恩返しというか、ご褒美というか、グッズみたいな感じです。物として残るのは、満足感が高いですよね。SNSはどんどん更新されていっちゃうので、雑誌のほうが見やすいと感じる部分もあります。

── メディアとして一番力を入れているのはYouTubeですか。

そうですね。復活当初からYouTubeがメインのメディアです。YouTubeと雑誌、YouTubeとTikTokなど、それぞれを連動させて企画を立てています。

写真
egg公式サイトより

SNSの使い方も、かなり戦略的に考えています。例えば、InstagramとTwitterはYouTube更新のお知らせに、TikTokは集客用として使っていますね。それぞれのチャネルに異なるユーザーがいるので、チャネルを掛け合わせれば広く情報が届くんですよ。TikTokでバズると、Instagramのフォロワーがめちゃ増えたりします。

LINE LIVEは、モデルのオーディション用。厳しい言い方になっちゃうけど、今はかわいいだけではモデルとして通用しません。動画時代なので、喋ったり、表現したり、いろんな要素が必要なんです。そういった視点でLINE LIVEを使って審査し、上位3名ほどまで絞って、最後は私が直接会って面接します。

最前線は世代交代。主役からプロデューサーへ

── eggの企画を考える上で、大事にしていることは何ですか。

出演するモデルたちの良さをどれだけ引き出せるか、ですね。eggってその名の通り、まだ「タマゴ」状態なモデルたちとみんなで一緒に成長したいんです。「eggモデル」って肩書きをどんどん利用してもらって、自分の夢を叶えてもらいたい。だからこそ、みんなの個性をどれだけ光らせることができるかに気を配っています。

写真

── 赤荻さんが表現したいことというよりも、それぞれの個性を大切にされているんですね。

はい。だから、どんな小さなことでもモデルたちに意見を聞きます。編集部が下手に手を加えたり、判断したりせず、彼女たちの感性を活かす。モデルたちには、やりたいことをやってもらえればいいんです。私たちの役割はそれをバズらせることですから。

── 赤荻さんは主役ではないってことでしょうか。

はい。主役はモデルたちです。私は小さい頃からずっと目立ちたがりだったし、ギャルの中でも目立ちたいという気持ちが誰よりも強かったんです。「全部、私にやらせて!」ってタイプだったので。だけど今は自分よりもモデルたちを!と思っています。彼女たちが今のギャルの最前線です。彼女たちからいろいろ引き出して発信していくのが私の仕事。はじめて、裏方であるべきだと思ったんです。こんな感情は生まれてはじめてですね。

── 赤荻さんの世代と、今の最前線のギャルを見ていて、違いを感じますか。

全然違いますね。私たちより上の世代は、がっつりストリート派なんですよ。センター街に入り浸って、洋服やメイクを見せる場所もストリート。情報はストリートや雑誌から得ていました。雑誌のモデルや有名人に憧れて、誰が「トップ」なのかもわかりやすかったです。私も安室奈美恵さんや、eggのモデルが大好きでした。

一方、今のギャルは、SNS派です。自分を見せる場所もSNSだし、自分のスタイルの参考にするのもSNS。メディアもインフルエンサーも多様化しているから、「トップ」は細分化しています。活躍の場がSNSになったことで、今は渋谷に行かなくても日本中どこにでもギャルはたくさんいますよ(笑)。

私は、ストリートもSNSもどっちも知ってる間の世代ですね。

写真

── 間の世代としては、ストリートとSNSどっちが楽しかったですか?

私は、断然ストリート派ですね。やっぱり、人がリアルに集まれる場があったほうが楽しいと感じます。私が渋谷にいない間に渋谷で楽しいことがあったら悔しいじゃないですか(笑)。だから、とにかく渋谷にいました。そんなにお金を使わなくても、渋谷に行って人と会って一緒にいることが楽しかった。今思えば、お金をかけなくても何をしたら一番楽しいかをいろいろ工夫して遊んでいたと思います。

── 今の子たちの遊び方は違いますか。

今の子たちは “映え”にお金をかけて遊んでますね。いろんなお店に行ったり、観光地に行ったり、どれだけ映えるかを考えながら遊んでいる。フォロワーが多い子は、アクセサリーも洋服も、同じ組み合わせにならないように気をつけています。

友達と会う・一緒にいる、という感覚も変わっていると思います。私の頃は渋谷に行けば誰かがいたし、会いたい友達には事前に連絡をしていました。でも今の子たちは、InstagramのストーリーやZenlyという位置情報アプリで、誰がどこにいるかを知って会いに行く。友達と直接会って遊ぶ代わりに、Instagramのライブ機能でコラボすれはそれでオーケーだったりもしますね。離れた場所にいても一緒に遊んでいるという感覚なんだと思います。

たくさんある“かわいい” をそれぞれが極める

── eggのコンテンツのフォロワーは、Z世代やもっと下の世代が中心かと思います。フォロワーにはどんな特徴がありますか。

意外に思うかもしれませんが、見た目がわかりやすくギャルな子ばかりではないです。オーディションを受ける子も、ファッションやメイクまでギャルにするのは、放課後や週末、夏休みだけって子も少なくない。学校の校則やおうちの決まりが厳しくて、見た目までギャルになるのが難しい子もいるんです。

私はそういう子たちのことをすごく応援しています。どんな環境であっても、工夫して頑張る。本当にすごいですよ。

私は、ギャルって「自由と個性の象徴」だと思っているんです。

── 「自由と個性の象徴」?

この仕事をはじめて「ギャルってなんですか」って聞かれることが増えました。私はギャルであることが当たり前に生きていたので、改めて言葉にしてって言われても難しいんですよね。でも、いろんな方に取材していただいたり、自分で考えたりしながら、見つけた言葉がそれです。

ギャルって、好きなことに対して本当に純粋なんです。個性を出すことを躊躇せず、自由に自分を表現する。日本人って、そうやって生きることが苦手な傾向があると思うんです。でも、やれちゃってるのがギャルなんですよね。だからいろんなギャルがいていいんです。

放課後だけギャルファッションな子でも、自由と個性を大切にするマインドがあればギャルです。

写真

── いろんなギャルがいてもいい、という傾向は、昔からありましたか。

私が高校生のころからありましたよ。渋谷に行けば、ヤマンバギャルもまだまだいました。そのころから、ギャルにもいろんな方向性がありましたが、それがもっと多様化しているのが最近です。 「強めギャル」「うさギャル」「清楚系ギャル」というように、ギャルにもいろいろなカテゴリがあるんですよ。

でも、カテゴリがあっても、お互いをリスペクトしていますし、かわいければお互いにどんどん真似します。メディアとして整理して見せたり、ギャルの種類を聞かれたりするからカテゴリで表現するだけで、実際はグラデーションがある。誰かが「◯◯」って自分のカテゴリを名乗れば、それがカテゴリになりますし。

── なるほど。つまり、かつてのカリスマのようなお手本がいないってことでしょうか。

それぞれに好きな人、憧れの人はいると思いますが、その人に自分を寄せるというよりは、その人と自分の好きな要素をミックスしていくようなイメージです。そのまま真似するだけじゃない。

「かわいい」は、たくさんあるんです。「かわいい」を決めるのは、自分ですから。

── 昔からあるかわいさや、誰かが決めたオシャレさではなく、自分自身で基準を決める、と。

そうですね。それぞれが自由に、自分の個性を大切にすればいいと思うんです。例えば、最近はレズビアンを公表している子もいます。でも、そういう子がいるのは当たり前じゃないですか。上の世代の人たちが思っているほど特別なことじゃない。いろんな子がいることが昔よりもずっと普通のことになっています。

肌が白いのもかわいいし、日焼けして黒いのもかわいい。身体のラインが細いのもかわいいし、むっちりしているのもかわいい。メイクやファッションが派手なのもかわいいし、黒髪で大人っぽいのもかわいい。全部かわいいんです。ギャルは、その中で「自分の一番かわいい」を目指しているだけ。「ベストオブかわいい」は、ギャルの数だけある。「かわいさ」は、どんどん広がってるんです。

── リクルートの目指す世界観である「Follow Your Heart」とも通じるものがあるように感じました。大切にしている価値観の一つに「個の尊重」もあるんですよ。

たしかにそれって、ギャルと近いかも。めっちゃギャル会社ですね(笑)。

写真

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

赤荻瞳(あかおぎ・ひとみ)

1996年生まれ。埼玉県出身。高校1年のときにギャルサークル(ギャルサー)で活動。高校中退後、2015年に広告制作会社に入社、2018年3月に『egg』をウェブで復刊させ、編集長に就任。ウェブ版『egg』を運営するエムアールエーの社長も務める。2022年3月をもって編集長を退任予定。

関連リンク

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする

同シリーズの記事:Z世代の視点

1990年代中盤以降に生まれた、新たな価値観を持つ新世代「Z世代」。幼少期からインターネットが身近に存在し、思春期にはスマートフォンもSNSも当たり前に存在する―。こうした環境は、個人が触れられる情報量や人々の関係性、物事の捉え方を大きく変化させてたといわれている。これからの社会の中核を担っていくこの世代独自の価値観を、多様な方面から紐解いていく。