社会課題をビジネスで解決するプロデューサー 三宅孝之さんのリクルート考

社会課題をビジネスで解決するプロデューサー 三宅孝之さんのリクルート考

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2018年1・2月号からの転載記事です

しがらみなく自由に発想し、動けるのが強み 稼ぐ力で社会を変える大きなビジネスの創造を

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私は、ドリームインキュベータという会社で業界トップからベンチャーまで、企業における新規事業創出の支援をお手伝いしています。今日本企業の多くが、新しい事業を生み出さねばという危機感を抱きながらもできない、始めても大きく育てられないという悩みを抱えています。基本的なニーズに対しては既に何らかの事業やサービスが存在している現代において、数百億、数千億といった事業になりうる新しいニーズを見つけるのは大変困難です。

そうしたなかで私たちが提案しているのが「ビジネスプロデュース」という手法。社会的な課題を取り込み、それを解決する形での構想を描き、その実現に向けた仲間作りをして連携していく。それによって数百億、数千億円規模のビジネスを創っていきます。

創業以来十数年間、こうしたビジネスプロデュースの手法と格闘してきたなかで培ってきたいくつかの要諦を書籍としてまとめ、出版しました。それを見たリクルートさんから連絡をいただいたのをきっかけに、2016年に RECRUIT VENTURES(リクルートの新規事業開発プログラム)で講演をさせてもらいました。それからしばらく経って、昨年の10月には別の場で講演する機会をいただき、リクルートマーケティングパートナーズで婚活事業の責任者をされている貝瀬雄一さんともトークセッションをさせてもらいました。

正直なところ、リクルートと頻繁に接点を持つようになったのはごく最近で、それまでは、雑誌をたくさん発行していて、多種多様な情報を扱っている企業、もしくは「新卒」という概念を生み出した企業というイメージしかなく、あまり詳しく知りませんでした。しかし、知れば知るほどリクルートとはシンクロする部分が多くて、今まで出会わなかったことのほうが不思議なぐらいに感じています。

特に婚活事業は、まさに僕が伝えたかったビジネスプロデュース戦略のお手本のような動きをされていますよね。人口減少という社会課題に対して、リクルート単体だけでなく、多様なパートナー企業と組みながら対峙している点や、自身に持ち合わせていないアセットを協業することでレバレッジを効かせ、自社だけでなく、相手もWinになるような関係性をうまく築けている。自社の利益だけでなく、組む相手や社会にとっての利益を考えられる俯瞰的な視座がないと、このように動けません。

私は仕事柄、さまざまな企業の方とお会いしますが、皆さん何らかのしがらみや思考の枠組みにとらわれていることが多いです。しかし、リクルートにはあまりそれを感じない。世の中を視野に入れながら、自由に発想して動こうとする。リクルートには皆さんが想像する以上にいろいろなことができる可能性がある。そこが強みではないでしょうか。

欲を言えば、もっと国に対して積極的に働きかける術も身につけると、より大きなビジネス創造に向けた可能性が広がると思います。私は通産省(現経済産業省)で6年間、政策や法律の改定・策定に携わっていましたが、その時に、政策や法律は変えられることを学びました。その後ビジネスの世界に入ってみて、ビッグビジネスは規制と規制の間に生まれることを体感。ファクトやデータを揃えて、今の政策や法律のこの部分を変えると大きなビジネスになるぞと、元同僚と連携することも多々あります。世の中を変えるためにはどうしたらいいのかという視座で会話をすれば、国だって強力なパートナーになりうるのです。

リクルートに入社を希望する人は、社会的な課題を解決したいと志している人も多いと聞きました。若くしてそこに注力できる人はそのまま続けて欲しいと思いますが、既存事業の売上を支える舞台で奮闘している人も多くいると思います。「稼ぐ力」は、ビジネスプロデュースにおいては最も重要な力です。お金の儲け方を知らない人は、世の中を変えられませんし、単なる批評家で終わってしまう。変える力のない人の周りには支援者や協働者は集まりません。今は苦手だと思うことでも、真剣に頑張ってみると、後から大きな力になって発揮される時がきます。僕自身を振り返っても、大学時代の理系の経験と経産省時代の政策・法律、そしてビジネスという一見関係ない3つの専門性が今になって融合し、ビジネスプロデュース業に活かされているように思います。目の前のことを腐らずに、筋トレのようにこつこつ続ける時期も必要なんだと思います。

日本に暮らしていると、少子高齢化をはじめ、さまざまな社会課題を目にします。サステナビリティを確保するためにも、今後こうした課題をビジネスとして解決していくことがより一層日本企業には求められていくでしょう。私たちでお役に立てることがあれば、ぜひ声をかけてください。ともに挑戦しましょう。

プロフィール/敬称略

三宅孝之
株式会社ドリームインキュベータ(DI)執行役員
京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。 経済産業省、A.T. カーニー株式会社を経てDIに参加。経済産業省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、環境エネルギー、まちづくり、ライフサイエンスなどをはじめとするさまざまな新しいフィールドの戦略策定及びビジネスプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、医療、IT、金融、エンタメ、流通小売など幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。東洋経済オンライン「ビジネスプロデューサー列伝」シリーズのインタビュアーも務める。

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