コミュニケーションでビジネスを生み出すプロデューサー 川路 武さんのリクルート考

コミュニケーションでビジネスを生み出すプロデューサー 川路 武さんのリクルート考

リクルートグループは社会からどう見えているのか。 私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2018年6月号からの転載記事です

今後どんな仕掛けで「不」を解決するのか デジタル時代のコミュニケーション力に期待

リクルートさんとのお付き合いは、2001年ぐらいから。当時は『住宅情報』という名だった『SUUMO』に、当社のマンション広告を出稿していました。以来、10年間ほど、さまざまなリクルートの人と接点がありました。広告営業の担当者、編集や制作の人、あらゆる職種の人たちといろいろなプロジェクトを手掛けましたね。

私はビジネスマンにはリベラルアーツが重要だと思っています。商談の場でいきなり企画書出して話し始める、とかはしたくないんです。まずは雑談から始めます。雑談していると、相手の頭の中がよく分かる。対峙している人の周辺情報が分かれば、本題の話も深めることができます。立場が上の人になるほど雑談に時間を割き、本題の仕事の話は残り数分で済ませることが多いです。

そういう観点で、リクルートさんは雑談力が高い人が本当に多い。観察力も鋭くて、引き出しも多いです。だから、1時間の商談でも45分ぐらいは、本題とは違う話をしていたように思います。雑談から派生して特集の見せ方をこう変えよう、次はこんなチャレンジをしようといった新たな方向性が生まれることが多くて。ご担当いただいた2年目の若手営業が頑張って挑戦しようとする姿に触発されて、僕も社内調整頑張ってみようと思えることもありました。雑談を通じて時間を共有してるので、信頼関係も生まれていましたね。

3年前のTOPGUN FORUM(リクルートグループ全体で優れたナレッジをシェアするための社内イベント)にゲストスピーカーとして呼んでいただきました。その時も、野口孝広さん(リクルート執行役員)からショートメッセージで「○月○日空けておいて」って依頼がきたんです(笑)。もちろん喜んで快諾しました。TOPGUN も10年ぐらい前からやっているのだから、ある程度確立されたイベントなのかと思いましたが、まだいい意味で試行錯誤されている印象を受けました。毎年新しい取り組みをしているということに新鮮な驚きを感じました。

リクルートさんは、広告媒体を持ち、媒体の作り込みの妙によって「社会の不」を解決するというビジネスモデルだと思います。それって、クライアントやカスタマーとのコミュニケーションの媒介物を作っているということですよね。かつてはそれが紙だったけれど、デジタル時代になり、媒介物はネットやアプリなどに変わってきている。デジタル化される前は、コミュニケーションにおける空気感を創るのが上手だなと思っていました。つまり「これは私向けの媒体なんだ」と思わせる力がすごかったのです。ブランドメッセージや編集後記、誌面のあらゆる場所でコミュニケーションを発生させる「余白」の機能がありました。一方、検索の世界になると、効率はアップしますが、最適化を目指すほど、こうした余白が減っていくという傾向があるように思います。

コミュニケーションの力で人々の不を解決するというリクルートのお家芸は、デジタル時代においてはどれだけ進化しているでしょうか。最近僕の周囲で『ゼクシィ縁結び』の話をよく聞くのですが、あのサービスが多くの人に支持されているのは、ユーザーに寄り添うことを大切にしながら『ゼクシィ』が築いてきた余白のコミュニケーション力に支えられている部分が大きいのではないでしょうか。

私は会社員の傍ら、2011年にNPO法人『日本橋フレンド』を立ち上げました。日本橋に長らく勤めながら、街のことを何も知らない自分に気付いて危機感を抱いたんです。僕のように感じている人が他にもいるんじゃないかと、日本橋で働く人と地元に根付く老舗企業やベンチャー企業とを交流する朝活『アサゲ・ニホンバシ』を定期開催しています。日本橋を媒介として、コミュニケーションを生み出し、何か新しいものが生まれるきっかけになればいいなと思っています。

私は「人は本心ではもっと人とコミュニケーションを取りたがっている」という仮説を持っています。素でぶつかり合いたいのに、鎧を着てしまう状況に置かれているのが、都市生活者の悩みです。今後は、鎧を脱がせてコミュニケーションを取りやすい形にしてあげることや、どんな機能や仕掛けがあればコミュニケーションがもっと生まれるのか。事業全体をデザインする際、そうした視点がさらに必要になっていくのではないでしょうか。

昨年の4月からスタートした『WORKSTYLING』も、コミュニティ×ビジネスという観点から何かできないかと、私が事業提案しました。人と人をつなぐビジネススタイリストを置いたり、ミーティングが促進されるような会議室の設計にしたりと、ユーザーの声を取り入れながらどんどん進化させています。リクルートさんとの新たな共創の場として、何か一緒に仕掛けていきたいですね。

プロフィール/敬称略

川路 武(かわじ・たけし)

三井不動産株式会社 ビルディング本部 ワークスタイル推進部
1998年三井不動産に入社。官・民・学が協業する街づくりプロジェクト「柏の葉スマートシティ」など、大規模案件におけるコミュニティづくりや、環境マネジメント案件の企画開発に多数携わる。三井不動産レジデンシャル(マンション事業の新商品開発等を担当)に出向していた2011年に、朝活『アサゲ・ニホンバシ』を開催するNPO法人『日本橋フレンド』を立ち上げる。ビルディング本部・法人営業グループの統括を経て、2017年にワークスタイル推進部を発足。統括として、多拠点型シェアオフィス『WORKSTYLING』の総合プロデューサーを務める。

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