国連事務総長 特使/Tesla, Inc. 社外取締役 水野弘道さんのリクルート考

国連事務総長 特使/Tesla, Inc. 社外取締役 水野弘道さんのリクルート考

DEIの実現で、さらに強靭な企業体質を目指して欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2023年1-2月号からの転載記事です

SDGsとESG投資が経営をアップデートする

国連事務総長 特使/Tesla, Inc. 社外取締役 水野弘道さん

私は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の理事兼最高投資責任者を務めていた時からESG投資を推進してきました。

GPIFは、世代を超えた超長期投資家であり、考慮する期間は100年間。投資先が短期的な利益だけを求め、サステナブルな経営を実行しなければ、長期的に見てリスクが高まってしまうのです。

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)。企業活動が社会や環境負荷に責任を持ち、透明性高いサステナブルな経営の実現を市場が監視していくという意味合いもあります。世界のなかでも「SDGs」という言葉の認知度がトップクラスの日本では、SDGsとごっちゃになっている時もありますが。

SDGsは、国連全加盟国が紛争をなくすだけでなく、広い意味で持続的で誰ひとり取り残さない世界を創るという17のゴールを合意して協働していこうという考え方。そしてその実現に寄与する企業活動こそが利益を生み、投資を引き寄せるような資本主義へのアップデートが進みつつあります。

成長のエンジンはSXとDX 日本ではジェンダーから

今後、グローバル経営において、成長するエンジンはふたつしかないと思っています。

ひとつは、SX(Sustainability Transformation)。先ほども触れたように、企業活動をサステナブルなモデルに変化させていくこと。GX(Green Transformation)などと呼ばれる環境負荷の低いプロダクト開発や循環型のビジネス展開を含む概念です。

もうひとつは、DX(Digital Transformation)で、デジタルテクノロジーの活用による(今までアナログだった)企業活動の変革です。そして今後はどちらの変革も必要ない、最初からデジタルでグリーンな企業もどんどん生まれてくるでしょう。

分かりやすい例として、テスラは「持続可能なエネルギー社会への変革を加速する」を社是とし、当初から全ての車が人工知能を活用した常時コネクティドです。

サステナブルというのは持続可能という意味と、インクルーシブ(包摂的)であるというふたつの意味があります。多様性をエンジンとしたインクルーシブな経営をするのにはまずは目の前のダイバーシティ、特にジェンダー課題に取り組むべきでしょう。

よく、ダイバーシティというと、ジェンダーだけでなく人種、LGBTQ+、障がい者などたくさんの課題があるなかで、何から取り組むべきか? という質問も受けます。答えは、最終的には「全て」なのですが、人種などの多様性に触れる機会の少ない日本人にとってはまずはジェンダーで経験を積むべきでしょう。

日常的にダイバーシティ問題によるリスクと対峙している世界のグローバル企業と比較し、日本企業は圧倒的に経験が少なくリスク認識すらない。例えばテスラでも、黒人女性へのパワハラ訴訟に対して1・3億ドル超の賠償金を求める訴訟が起こされました。

投資家から見ても、ダイバーシティ課題を解決できていない企業は経営上の大きなリスクを抱えているということ。人口の半数を占める女性とのエクイティが実現できない組織に、社会的な少数派を包摂した真の多様性を実現できる可能性は皆無でしょう。

ダイバーシティ実現には文法とトレーニングが必要

リクルートグループでは、「2030年度までに女性管理職比率50%の実現」というアグレッシブな目標を掲げていましたね。まずは不均衡になっている状況を整えると、改めて潜在化していた問題が顕在化してくると思います。私も海外に出てダイバーシティのさまざまな問題に直面し、痛みを伴う体験をして時間をかけて学びました。

この問題は英語学習と似ています。子どもであれば、英語環境に飛び込んで体験のなかで身に付けることができますが、大人になってから学ぶ時は、文法を学んでからのほうが習得は速いし苦労も少ない。

今、多くの日本企業では、特に男性はジェンダー問題について、痛みを伴う経験も少なく意識も乏しい人が多い。スピード感を持って変化していくためには、文法を学ぶようにルール化したり、事例集にあたるナレッジシェアが必要です。

リクルートグループは、常に新しいことに挑戦している企業という印象。今後グローバル企業として、こうしたダイバーシティ経営のトレーニングをいち早く推進していくことで、2030年には強靭な筋肉がついているはず。ダイバーシティ経営のお手本を示し、真の意味のサステナブルな経営をリードしていって欲しいと思います。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

水野弘道(みずの・ひろみち)
国連事務総長 特使(革新的ファイナンスと持続可能な投資担当)
Tesla, Inc. 社外取締役

1988年より住友信託銀行にて日本国内、シリコンバレー、ニューヨークなどで投融資業務に従事。2003年ロンドンのプライベート ・ エクイティ・ファンドであるコラーキャピタルのパートナーに就任。2015年年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) の理事兼CIO(最高投資責任者)に就任。ハーバード、オックスフォード、ケンブリッジ、ノースウエスタンのビジネススクールのフェローとしてサステナビリティファイナンスの推進や、仏ダノンミッション委員会委員などを歴任。2020年Tesla, Inc.(米)社外取締役、経済産業省参与に就任。現在、革新的ファイナンスと持続可能な投資に関する国連事務総長特使、グローバルな課題に取り組むNGO The B Team等に参加

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