活用の仕方が多様化する「クラウドソーシング」という仕組み
ここ数年で「クラウドソーシング」という言葉を耳にすることが増えてきました。クラウドソーシングとは、不特定多数の人に対して協力を募り、必要とするサービス、アイデア、またはコンテンツを提供してもらうプロセスのことを指します。
これまでもアウトソーシングという形で、外部に専門性の高い業務を外注するというケースはありました。アウトソーシングでは特定の人への発注でしたが、インターネットの普及により、社外の「不特定多数」の人に業務を外注するというケースが増えています。
近年では、クラウドソーシングを通じて東京の仕事を地方在住の人が受注することも増えており、働き方のひとつとして注目を集めています。
「クラウドソーシング」の由来
よくありがちなのが、クラウドソーシングの"クラウド"を「Cloud(雲)」だと勘違いしてしまうこと。クラウドソーシングのクラウドは「Crowd(群衆)」から来ています。
元々は、2005年にWIRED Magazineの編集者であるジェフ·ハウ(Jeff Howe)氏とマーク·ロビンソン(Mark Robinson)氏が、企業が個人に仕事を外注するためにインターネットをどのように使っているかについての議論した末に、「クラウドソーシング」という用語を生み出したそうです。
クラウドソーシングの市場規模
クラウドソーシングという言葉が生まれたのは2005年。その後、クラウドソーシングは急速に成長を続けています。
矢野経済研究所が発表している、、「クラウドソーシングサービス市場に関する調査結果 2014」によれば、2018年度のクラウドソーシングサービス流通金額規模は、1,820億円に達すると予測されています。
こうしたクラウドソーシングの市場活性化に伴って、サービス事業者の参画も続いており、既に数十社がサービスを提供しています。
国内外に存在するクラウドソーシングサービスたち
日本では、最近上場したクラウドワークス、ランサーズといったプレイヤーの他、Yahoo!クラウドソーシング、シュフティなど、数々のプレイヤーが参入。
国内のクラウドソーシングサービス提供者たちは、2014年5月に一般社団法人クラウドソーシング協会を立ち上げ、国内の市場が活性化するように働きかけています。
海外にもoDesk、freelancer、Elance、99designsなど多数のサービスが存在しており、世界中でクラウドソーシングのサービスが提供されています。
クラウドソーシングサービスの種類
世界に数多存在しているクラウドソーシングサービスは、専門性の高低と仕事のジャンルの幅広さによっていくつかに分けることができます。
クラウドワークスやランサーズといったサービスは、掲載される案件は専門性が高いものから低いものまで、仕事のジャンルも幅広く取り扱っています。
細かな作業を依頼できる
専門性は低いですが、掲載される仕事のジャンルが多いサービスには、Zaarlyのような家の掃除や日用品の買い物など、ちょっとした家事やおつかいなどを代行するサービスがあります。
専門性が低く、特定のジャンルの案件だけが掲載されるサービスも存在します。部屋の掃除を代行してくれるHomejoyなどはそのひとつ。
専門性の高いことを依頼できる
専門性が高く、掲載される仕事のジャンルが多いものは、各分野の専門家に解決策となるアイデアを聞くことができるInnoCentiveといったサービスがあります。
専門性が高く、特定のジャンルの仕事を取り扱うクラウドソーシングサービスはサービス提供型と位置づけることができます。
クラウドソーシングの仕組みを活用しているサービス
提供するサービス内容を1つに絞り、そのサービスのために必要な専門家を集めることで、サービスをシンプルなものにすることが可能になります。
サービス提供型のクラウドソーシングでは、他のサービスでは必要となる依頼主であるユーザーと案件を受けるワーカーとのコミュニケーションをサービス提供者が引受けることが可能になります。
例えば、秘書業をクラウドソーシングするZirtualというサービスでは、サービス内容を「秘書業の提供」に絞ることで、秘書をしてくれる人の選別や労働時間の調整といったコミュニケーションをZirtualが引き受けられるようにしています。
他にもいくつかサービス提供型のクラウドソーシングを紹介してみましょう。
生活を便利にしてくれるサービスたち
サービスには日常生活をより便利で快適にしてくれるものがあります。
たとえば、FiNCが提供しているダイエット家庭教師というサービスでは、ユーザー1人に対して、栄養士などダイエットの専門家がアドバイスをしてくれます。
CaSyというサービスでは1時間2500円程度で家事をクラウドソーシングすることができます。
Conyacは 約4万人の翻訳者が登録しているクラウド翻訳サービス。24時間いつでも依頼を受け付けており、最短10分で翻訳結果が返ってきます。
より仕事を楽にしてくれるサービスたち
先述した秘書業をクラウドソーシングするZirtualもここに含まれます。
その他にも、Bizerというサービスでは税理士、社労士、司法書士、行政書士、弁理士といった士業の人々が登録しており、顧問サービスをクラウドソーシングで提供します。
北米のTeleborderというサービスは、VISA申請、税金計算、リロケーションといった海外駐在員向けの人事業務サービスをクラウドソーシングで提供しています。
クラウドソーシングが与える影響
ここまでクラウドソーシングサービスの全体像を紹介してきました。クラウドソーシングはいくつもの可能性を生み出しています。
「地方に居を構える人や育児中の人に仕事を作り出し、働き方の新しいスタイルを提供する」
「専門家の活躍の場を生み出し、これまで高いお金を支払わなくてはならなかったサービスを安価で享受可能に」
「家事やちょっとした事務作業なども、クラウドソーシングを通じて切り出して依頼ができるように」
クラウドソーシングという仕組みが広まることで、人々の働き方には選択肢が生まれてきており、今後普及していくにしたがってさらにこの流れは加速していくでしょう。
将来、人々の働き方はどのようになっているのか。それを考える上で、クラウドソーシングは大きなポイントのひとつになりそうです。