【後編】対談:2人の17歳CEOが語る、ビジネスと教育と日本の未来

【後編】対談:2人の17歳CEOが語る、ビジネスと教育と日本の未来

文:鈴木貴視 写真:依田純子(写真は左から三上さん、若林氏、浅部さん)

17歳にして、アプリや学生向けサービスを展開する浅部佑さんと三上洋一郎さん。日本版『WIRED』の若林氏が聞く、10代で起業した理由。

若干17歳にして、自らの会社とサービスを運営する、株式会社NEXTRIYA代表の浅部佑さんと株式会社GNEX代表の三上洋一郎さん。ファリシテーターとして『WIRED』日本版 編集長・若林恵氏を迎え行われた対談も、遂に最終回。早熟の2人が語る、ビジネスにおけるビジョンと日本の未来とは?

若林恵(以下・若林) 1998年生まれの世代にとって、子供の頃のヒーローってどんな人ですか? アニメの主人公でも経営者でも、誰でもいいんですが。

浅部佑(以下・浅部) 僕はアメリカからの帰国後、6歳の頃にスティーブ・ジョブスが凄いなと思ったんです。自分には行動力が足りないと思っているので、そういう意味でジョブスの行動力は見習うべきところですね。

若林 6歳でジョブズを!? ちなみに、当時のアップルの象徴的なプロダクトは?

浅部 iMacのG5などでしたね。小学3年生の頃に初めてパソコンを触り始めたんですが、父親がアップルのファンだったこともありましたし、学校の先生も積極的にコンピューターを使っていこうという考え方の人だったので、友達とwebサイトを作ったりしていました。

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三上洋一郎(以下・三上) 僕は特定の誰かというのはいませんでしたが、将来の夢に関しては子供の頃からずっと"科学者"でした。なので、ニュートンとかアインシュタインの伝記とか読んでいましたね。

若林 話は変わりますが、2人とも拠点は国内ですよね。自分達の活動をグローバルマーケットで展開するのではなく、日本で行っていることにこだわりはありますか?

三上 世界全体を考慮しないと意味がないサービスもありますが、僕らが提供している『BridgeCamp』に関しては日本の学生向けのクラウドファンディングなので、むしろ国内で展開しないと意味がなくて。日本でしかできないものをやろう、という想いもありますが。

浅部 僕は日本だけじゃなく、海外でできるサービスがあれば展開して、そこから日本へ何かしら貢献してきたいなと思っています。東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年までは、海外と関連するようなサービスをやりたいですし、更にその後のことまで考えていきたいですね。

三上 僕らが今やっていることは、2020年を超えた後に日本が潰れないための努力をしているようなものだとも思っています。

若林 なるほど。ちなみに、今の大人たちをどう思いますか? 尊敬できる大人はたくさんいますか? それとも、あまりいないですか?

浅部 ごく一部かもしれませんが、尊敬できる大人はいます。例えば、ずっとサポートしていただいてるLife is Tech !の水野雄介さんなどですね。

三上 僕は特定の誰かというよりも、尊敬できる人はたくさんいます。例えば、官公庁が作成する資料ひとつにしても、スライド1枚の中にあんなにも広大な情報を入れ込めることって純粋に凄いなと思ったりしますね。

中途半端な経験の供給は可能性をつぶす

若林 日常において、「これは許せない」と思うことはありますか? 最近怒ったことや、嫌いなものがあれば教えてください。

三上 大人が若者に対して、何事も中途半端に経験させるような風潮は良くないと思います。そのことで個々が過信してしまって、可能性がストップしてしまうのはもったいないなと。例えば、高校生同士で日本の政策を話す場が設けられたとします。それ自体は悪くないですが、身の回りで起きていることだけに着目して、根本的な要因や解決策も語らずダメだと言ってしまうのは......。そういうことが起きるのも、中途半端な視野を持たせてもらったり、持ってしまったことにも原因があるのかなと。

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若林 情報がたくさん溢れているので、影響を受けやすい環境になっているのかもしれないですね。情報の取り方、情報との距離感で気をつけていることはありますか?

三上 僕自身は、世の中的に囁かれているメディアの信頼が失墜したという意見はあまり信じていなくて、その中で本当に信用できる情報を得られるのが既存のマスメディアだと思っています。僕は主に、日本経済新聞を読んでいます。あと、ブルームバーグとか。

浅部 僕は主にネットメディアですね。ひとつだけじゃなく、色々なメディアを見るようにして情報を比較しています。その中で、ニューヨークタイムズやハフィントンポスなど海外のメディアは必ず目を通すようにしています。というのも、東日本大震災の時に海外のメディアの情報が早かったという記憶が今もあって。

三上 日本ではメディアの情報に少しでも間違いがあると、そこだけに批判が集中しますよね。正確性を担保しなければいけないんじゃないかなとは思います。

自分が本当にやりたいことを見つけること

若林 では、それぞれ将来の目標を教えてください。

三上 僕は中学2年の時に起業しましたが、ほぼ成功なんてしないだろうと思われながら、それでも出資してくれたのがサムライインキュベートでした。同じように、僕自身も35歳くらいまでに次の世代を育てたり支援する立場になりたいと思っています。『BridgeCamp』に関しては、将来的には日本の高校教育に組み込んでいけたらなと。社会に対して何かを発信していく、その経験を高校生の頃から積んでもらうことはおもしろいと思っています。

浅部 大学で工学と医学を学び、いずれITを融合させていきたいですね。例えば、医療の分野での活躍も期待されているIBMが開発した人工知能搭載スーパーコンピューターのワトソンや、マイクロマシン内視鏡といった医学用ロボットの開発などに興味があります。そういう分野を学び、サービスやビジネスにも繋げていきたいと思っています。

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若林 最後に、二人が活動を通して学んだことで、今の中学生や高校生へ伝えたいことはありますか。

浅部 自分が今こうやって活動できているのは、やっぱり自分が好きだと思えることを見つけられたからです。成功させる自信がなくても、追求してみようという気持ちや好きだからやってみるという意識を持つことが大事だと思います。

三上 インプットの量を増やす事が大事なのかなと。学生時代に結果を出すことってそれほど必要ではないですし、仮に会社を起こして失敗しても、家族に頼っている身であれば生きていけます。なので、とりあえずやってみる。そこまで踏み切れないのなら立ち止まって、自分が何をやりたいのか、何をやるべきかを考えてみる。僕は中学2年の時に、今起業するのと10年後に企業へ就職することのどちらがリスクがあるかを考えて、起業したほうがリスクがないと考えたんです。正しいか正しくないか分からないですが、当時そのことに気付けたということが大きかったかなとは思っています。

プロフィール/敬称略・名称順

浅部佑
株式会社NEXTRIYA 代表取締役

1998年生まれ。2013年に『アプリ甲子園 2013』にて、iPhoneアプリ「SoundGuess」が優勝。『Mashup Awards9』でU-18 賞を受賞。2013 年11 月「株式会社NEXTRIYA」(ネクストリア)を設立。代表に就任。

三上洋一郎
株式会社GNEX 代表取締役

1998年生まれ。2011年4月、当時中学2年で学生団体GNEX を結成。サムライインキュベートからの支援により、2013年3月に法人化。中学・高校生を対象としたクラウドファウンディングサービス『BridgeCamp』を展開。

若林恵
『WIRED』日本版 編集長

1971年生まれ、ロンドン、ニューヨークで幼少期を過ごす。早稲田大学 第一文学部 フランス文学科卒業。大学卒業後、平凡社に入社。『月刊 太陽』の編集部スタッフとして、日本の伝統文化から料理、建築、デザイン、文学などカルチャー全般に関わる記事の編集に携わる。2000年にフリー編集者として独立し、以後、『Esquire日本版』『TITLE』『LIVING DESIGN』『GQ JAPAN』などの雑誌、企業や大使館などのためのフリーペーパー、企業広報誌の編集制作などを行ってきたほか、展覧会の図録や書籍の編集も数多く手がけている。また、音楽ジャーナリストとして『intoxicate』『MUSIC MAGAZINE』『CD Journal』等の雑誌で、フリージャズからK-POPまで、広範なジャンルの音楽記事を手がけており、近年では音楽レーベルのコンサルティングなども行っている。

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