2025年-働くを再発明する時代がやってくる
リクルートワークス研究所が、2005年から5年おきに発表してきた「働く」に関する予測。2015年を迎えた今年も、10年後の「2025年の働く」を展望したレポートが発表された。このレポートでは、就業構造のシミュレーションを行い、超高齢社会を迎える2025年には、労働市場はどうなっているのかを紹介している。
労働市場の構造を図とともに紹介しているこのレポートの中では、雇用機会が消失する悲観シナリオと雇用機会が増える楽観シナリオの2つが描かれている。この先に分岐点がある2つのシナリオのうち、楽観シナリオに近づいていくために我々が取るべき進路がまとめられている。
全体を通じてレポートに込められたのは「働くを再発明せよ」というメッセージだ。
「働く」を再発明することが必要
中村「超高齢社会は待ったなしの状況です。この先、人口構成が変化していくことは間違いない中でどのように働いていくのか。このレポートを読んだ人が、将来を見据えて自分ゴトにしていかないと、社会の変化に働き方の変化がおいつきません」
「2025年の働く」を予測したリサーチのプロジェクトリーダーを務めた主任研究員の中村天江は、そう警鐘を鳴らす。この先、私たちを待ち受ける「働くを再発明する時代」とは、一体どのような時代なのだろうか。
それぞれの立場でできることを考える
中村「このレポートでは、大きく3つのことを伝えたいと考えています。この先、働き方に影響を与えるものが何かということを考えたときに、世界ではAIの登場など技術によるパラダイムシフトが要因として考えられます。ただ、日本だけを見たときは、人口構成の変化の影響が大きい。ですので、人口減少や高齢化を前面に出したということ、これが1つめです。
次に、ここ10年ほど、各企業では労働時間の短縮やリモートワークの導入など、働き方の課題に個別に取り組んでいることが多くなっています。ただ、個別具体的な事例の積み上げでは、経営や人事以外の層には、働き方を変えるという大きな流れが伝わらない。社会全体で「働き方を変える」といううねりを起こしていくために、具体的な取組みを大きな潮流の中で位置づけて、伝えたかったというのが2つめです。
そして、3つめですが、課題先進国といわれる日本が、人口が減少する中でその課題を解決していくには、誰かに責任をおしつけるだけではなく、国・企業・個人全員が取り組んでいかないと、なかなか上手くいかないということです。それぞれができる範囲で、『働き方を再発明する』ことに取り組んでいく必要があると、直接そのことをメッセージにこめました。」
それぞれの立場で、できることを考え、実行していく必要がある、と中村は語る。
このレポートによれば、企業は今後、「個」に焦点を当てたモザイク型のマネジメントを行うことが重要になってくるという。どんどん働く人材が多様化していく中で、個々の志向や制限を理解し、強み弱みを組み合わせ、マネジメント出来る人材が非常に重要な役割を担うようになるのだ。
一方で、一人ひとりの個人はどういったことが必要になるのだろうか。変化に対して柔軟に対応してキャリアを築いていくこと、そして、望む働き方を実現できるよう、職場で強みを発揮したうえで、自ら上司や人事に働きかけていくことの2つが特に重要だと中村は語る。
中村「さらにいえば、労働市場の流動性が高い国では、キャリアを持続していくのに、人的ネットワークそのものが重要な役割を果たしています。今後は、どんなコミュニティに所属するのか、というコミュニティ選択もまた、重要になっていくでしょう」
働き方を再発明することなくして、個人の幸せなキャリアも、企業の永続的な発展もない。このレポートを、そんな2025年への向き合い方を考えるきっかけにしてもらいたい。