【だから、私はきょうも働く】~高校生たちが自身の可能性に気付き、将来の選択肢を広げられる世界をつくりたい~
高校・大学入試・大学の3つを一体として教育改革に取り組む≪高大接続改革≫が進められる中、社会で活躍できる人材を育成するためのキャリア教育に関心が集まっている。その一つの解として、リクルートマーケティングパートナーズの上本絵美がとある大学に提案したのが、オープンキャンパスで高校生が就業体験をできるプログラムだ。高校生、大学、企業をつないだ新しいキャリア教育の取り組みについて上本に話を聞いた。
高校生時代の原体験が新しい提案のヒントになった
「クライアントである大学に、最初に高校生の就業体験プログラムを提案したのは、2016年のことでした。当時、その大学は全国的には知名度が高いとは言えず、高校生からの出願を集めるのにも苦労していました。高校生に興味を持ってもらうためのオープンキャンパスも行っていましたが、大学生向けの講義をそのまま行う模擬授業では高校生の興味喚起につながらず、思うような結果を出せていませんでした。何か、高校生が楽しめると同時に、ためになるようなプログラムを提供したい。そう考えたとき、ふと思い出したのが、私自身が高校生のときに抱いていた歯がゆい想いでした。
地方の公立高校に通っていた当時の私は、情報の限られた世界の中でもがいていました。普段接する大人たちの職業の幅は狭く、自分が将来どんな職業に就ける可能性があるのか、いったい何者になれるのか、未来が拓けていくイメージを持てなかったんです。≪このままでいいのか。外の世界に出たい≫。そう思いながらも広い社会に触れられる機会には恵まれず、田舎の教室の窓から空を眺め遠い都会に想いを馳せていたことを思い出したんです。
就活で入社先としてリクルートを選んだのも、≪情報で人の未来を拓いていく≫という事業に魅力を感じたから。今の高校生にも高校時代の私と同じような悩みがあるのなら、未来を切り拓く力となる情報や体験の場を提供してあげたい。そう考えた私は、働く大人と触れ合うことで大学卒業後に広がるキャリアの可能性を感じられる就業体験プログラムという発想に行きつきました」
1年目から、高校生・大学・企業ともに満足いく結果に
「大学側も≪面白いね!≫と興味を持ってくれ、1年目は就活生向けのインターンシップに力を入れているブライダル関連企業に協賛を依頼し、ブライダルプランナーの仕事を体験できるプログラムを実施しました。数名のグループに分かれて結婚式の演出プランを作るプログラム。企業の人事だけでなく、大学生にもファシリテーターとして協力していただくことで、高校生・大学・企業の三者をつなぐことを狙いました。その結果、プログラム終了時には高校生も大学生も感動して涙するほどで、想像以上に好評でした。協賛企業も、採用候補となり得る優秀な大学生との関係性を築けたと満足してくださり、次年度につながる大きな手応えを得ることができました」
高校生の弾むようなコメントが嬉しい。他大学にも広がる動き
「4年目を迎えた今年までに協賛企業は大幅に増え、春・夏2回のオープンキャンパスで、それぞれ16種類の就業体験プログラムを実施できるまでになりました。プログラムは毎回ほぼ満席で、進学校として有名な高校からも参加者が集まるほどです。大学への出願数も4年前と比べて2倍ほどに増え、高校からも企業からも≪良質なキャリア教育ができる大学≫として高い評価を得られるようになりました。そんな中、一番嬉しかったのはやはり高校生たちの反応です。参加後のアンケートに目を通していると、≪普段接することのない働く大人を間近で見て、働くって実は楽しいことなんだなと思いました≫ ≪苦手な分野だと思っていたけれど、チャレンジしたいと思えるようになりました≫といった前向きなコメントがぎっしりと書かれていて、文字も楽しそうに踊っているように感じます。
今はまだ一つの大学での実施ですが、他大学からの関心も高く今後広がりを見せそうな流れも生まれています。これからも一人でも多くの高校生たちに社会との接点を提供し、将来が見えないという悩みを解消してあげたい。将来の選択肢を示し、様々な可能性があることに気付いてもらいたい。一過性の取り組みではなく、長く続けていくためにも、高校生・大学・企業の三者がみんなメリットを感じられる仕組みを、世の中に広めていきたいですね」