リモートワーク制度で単身赴任を解消。約10年ぶりに家族同居へ
リクルートは個の多様性を尊重するため、「個々人の働き方を選択しやすい環境」の提供を会社として約束している。働く「場所」「⽇・時間」を個⼈の⽣活環境に合わせて⾃由に選択できるよう、施策のひとつとしてフレックス勤務や理由・回数を問わないリモートワーク(テレワーク)を全社導入。交通費の特急料金も条件付きで許可されたため、遠方からの通勤もしやすくなり、単身赴任を解消したケースも生まれている。リクルート クライアントサクセス企画部で部長を務める杉田良平は、リモートワーク導入が後押しとなり約10年にわたる単身赴任を解消。2022年より家族と一緒に暮らし始めた。これまでのキャリアにも触れながら、リモートワークで変化した働き方について聞いた。
ラフさと情熱。そのメリハリに惹かれて2004年リクルートに入社
リクルートの面接を受けるまでは、本当に社会人になれるのか、果たして自分は社会人になりたいのか、暗中模索でした。バンド活動で音楽漬けの大学生活を送っていたので、音楽を仕事にするか悩み、かといってスーツを着て満員電車に乗っている自分もイメージできない。そんな時、リクルートの求人を見かけ、面接を受けました。働く先輩たちの服装や話し方はラフでフラットな一方、仕事はとことん本気でやる職場。最後まで悩みましたが「このメリハリが自分には合っていそうだ」と、入社を決めました。
入社後は笑ってしまうくらい多忙を極めましたが、今思うと迷いなく働ける、とても楽しい時期だったと思います。『タウンワーク』などの求人メディアの営業・制作を経験し、メディアや事業を仲間たちと一緒に創り上げる楽しさを教えてもらいました。
単身赴任の始まりは入社5年目。自分は東京、妻と子どもは京都で
妻とは入社2年目、異動先の大阪支社で出会い、結婚。4年目には長女を授かりました。一方、職場ではさまざまな経験を積ませていただくなかで、私の仕事はお客様1社1社の広告クリエイティブを担う役割から、徐々に組織全体を企画・統括する役割に変化していき、5年目からは再び東京に転勤することになりました。企画統括という職種の性質から、仕事を続けるには東京のオフィスで働く以外の選択肢が無く、また当時はリモートワーク制度も整っていない状況でした。第二子の出産も控えていたことから、妻が子育てに安心して取り組めるよう安定的な基盤を築いていきたいと考え、妻と話し合いを重ねました。「仕事」と「家族」どちらも諦めずにより良いものにするために、妻と子どもは実家のある京都で育児を担い、自分は東京で単身働くことを決断。こうして約10年にわたる単身赴任が始まりました。
単身赴任のリアル。一緒にいられる時間をとことん楽しむ
試行錯誤を経て、家族と過ごすのは月1回、週末に京都に帰るスタイルが確立されていきました。東京にいる時は、妻が送ってくれる子どもの写真を見ながら、子どもの成長を励みに過ごし、京都に帰宅した時はのんびりと家族で一緒に過ごしたり、子どもたちの学校の行事に出席したり。京都にいる時間を貴重に感じて、子どもとよく遊びに出かけたので、関西圏のおでかけスポットはかなり制覇しているかもしれません(笑)。一方、たまにしか会えないので、子どもたちをなかなか叱れず、優しくなりすぎてしまっていたのは反省点です。
京都に帰るのは毎回楽しみでしたが、それでもつらい思い出もあります。娘がまだ小さかった頃、夜自分が東京に帰る時に、玄関で「パパと一緒にいたい」と大泣きされたこともありました。子どもたちにも寂しい思いをさせ、育児を妻ひとりにお願いしている以上、仕事は頑張らないといけない。自分に発破をかけて、仕事を通じて家族に恩返しをしたいという思いは10年間常にありました。
リクルートのリモートワーク(テレワーク・在宅勤務)とは?
リクルートでは2008年から、育児や介護などのプライベートな事情を抱える社員を対象にリモートワーク(テレワーク)を導入していました。15年頃から実証実験をスタートし、オフィスに出社しない働き方ができるよう環境整備を開始。16年にはリクルートホールディングスを中心に自律的に仕事ができると上司が判断した社員(一部組織を除く)にリモートワーク(テレワーク)の対象を広げていました。
コロナ禍でリモートワークが当たり前に。働く場所に捉われないメリットが
リクルートでは2020年のコロナ禍に入ってすぐ、多くの従業員がリモートワークを開始。自分もそれまで未経験だった在宅勤務をスタートしました。初めこそ慣れない部分もありましたが、長引くコロナ禍のなかでオンラインでのコミュニケーションは当たり前に。自分の職種では、ドキュメントベースでアウトプットをすり合わせ、中間成果物に対してフィードバックをし、そのサイクルを早く回すようにしています。そうすることで、対面だけで働いていた時よりも生産性はずいぶん上がってきたという手応えもありました。
リモートワークがメインになってから特に大切だと思うのが一緒に働く方々との信頼関係です。ひとりの人間として信頼感を持ってもらい、職場のなかでつながりを作るため、メンバーとの1on1や雑談の時間はお互いの近況や最近の興味関心など、業務以外のことも話すようにしています。オフィスに出社する機会があれば滞在時間を長めにとり、あえて対面で「じっくり会議」をやってみるなど、メンバーとリアルなコミュニケーションをとるようにすることで、業務の生産性と職場としての居心地を両立できるようチャレンジしています。
娘の思春期突入が単身赴任解消のきっかけに
リモートワークにも十分慣れ、さらに通勤手当として特急料金の支給が開始されたことも知っていましたが、すぐには東京を離れるイメージは持てませんでした。そんななかで、単身赴任を解消するきっかけになったのは娘の思春期への突入でした。緊急事態宣言下で帰宅が叶わない状況が続いたものの、家族とビデオ通話をするのが習慣になり、一緒に時間を過ごすことはむしろ増えたように思います。ところが、娘が中学2年生になったあたりから微妙な感情の変化が読み取りにくくなっていきました。思春期に入り、受験も控えるなか、月1回の帰宅やオンラインでのやりとりではなく、直接自分がサポートしたいなと感じるようになり、京都に帰ることを決意しました。周囲に相談すると事情を知っている上司や同僚からは「そっか、やっとか」「分かった、いいんじゃない」とあっさりしたリアクションが多かったのはよく覚えています(笑)。本当に住む場所は関係なく仕事ができる時代になったんだなと実感しました。
リモートワークのおかげで10年ぶりに家族と一緒に暮らす。小さな変化も共有できるように
家族と同居するのは不思議な感覚でした。2022年1月に家族のもとに帰ったものの、10年間別々に暮らしていたので、最初は生活スタイルが合わない。些細な一言がケンカに発展することもありました。でもそれもお互いの「あたりまえ」を確認して、生活を一から構築していくための、必要なプロセスだったと思っています。
一緒に暮らすことで、いいことも、難しいことも、小さな変化を共有できるようになりました。子どもたちの本音は、思春期ならなおさら言葉にならないことが多いと思います。ちょっとした態度の変化に気付けることが増え、それに対して夫婦で相談してすぐに対応できています。
妻との関係も少し変化してきたように思います。もちろん今までも、何か変化があった時にはお互いに相談をしていましたが、離れていた間は、それぞれの役割を責任を持って果たす、背中を預け合うような感覚でした。一緒に暮らすようになったことで、圧倒的に話をする時間が増え、同じ方向を見ながら関わり合うことができるように。本当にちょっとしたことですが、ランニングが好きな自分に「このマラソン大会、出たら?」と勧めてくれたりする。そういうささやかな会話が楽しいと感じますね。
10年後にかけがえのないものを残したい
リクルートで働き続けて、気づいたらもう20年が経とうとしています。この上なく嬉しいことも、すごく大変なことも、全てを含めて仲間たちと作り上げていく仕事のプロセスそのものが毎日楽しいですね。10年後もそんな会社であり続けて欲しいと思っています。そのために、10年後のお客様やリクルートで働いている人たちが、「あの時のこの仕組みがあったから今があるんだよね」という仕事を残していきたいと思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 杉田良平(すぎた・りょうへい)
- 株式会社リクルート クライアントサクセス推進室 クライアントサクセス企画部
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大学卒業後、2004年リクルートに入社。『タウンワーク』などHR領域メディアの営業、制作、企画統括を経て、『SUUMO』など住まい領域のBPR企画やメディアの業務設計を担当。2020年より領域横断したカスタマーサクセス・クライアントサクセス機能の企画・推進を担う