希望していなかったマネジャー任用。なってから分かった想定外の楽しさ
法務・プライバシー・知的財産の観点でビジネス推進に伴走する、リクルートの「ソリューション法務室」の責任者を務める岡本玲奈。メンバーの自律性を重んじるマネジメントスタイルには、岡本の経験に基づくマネジメントへの考え方とチーム観が深く関わっていたと言います。
異動直後に、育休・産休を取得
― 今日は「法務」という社内でも堅いイメージがある部署の責任者とお会いして、実はとても緊張しています…。岡本さんのキャリアを教えていただけますか?
岡本:そんなに緊張しないでください(笑)。私は学生時代から法務の仕事に興味があり、入社してすぐに法務の経験を積める企業にご縁があればよいと考えていました。しかし、就職活動中に触れたリクルートの社風や従業員の人柄にひかれ、初めの配属先は分からないものの手挙げで異動できる制度もあるため「すぐでなくてもいつかリクルートで法務がしたい!」と思い、リクルートを選びました。入社時の配属は事業企画室でしたが、初めの1ヶ月は研修で、時には「飛び込み営業」も経験しながら、がむしゃらに頑張る日々。その後お世話になった上司の後を追い、事業開発室へ異動。新規事業の中長期戦略立案やモニタリングなどに携わりました。
― 今は法務の責任者をされていますが、初めから法務というわけではなかったのですね! 法務に異動されるまでに、挫折や苦労もあったのでしょうか。
岡本:はい。事業開発室では、役員の視座についていけず指摘の内容が理解できなかったり、言われたことを伝書鳩のように伝えるだけになっていたり、周囲の期待に応えようと目の前の仕事に向き合っていても正直役に立てていないと感じることもありました。そんな時、携わっていた新規事業でジョイントベンチャーのスキームを再編するプロジェクトに参加することになり、法務・人事・経理など多様なスタッフ組織と接点を持つ機会をいただいて。改めて「自分のしたい仕事って何だったっけ?」と考え、学生時代から抱いていた法務への憧れ・情熱が再燃。そして、入社5年目の2010年、念願の法務部へ異動しました。
ところが、異動した1ヶ月後に妊娠が分かり、その後産休・育休を取得。その間に家族と相談し「お休み明けから仕事に全力投球する」と決め、復職後は家族の協力のもと駆け抜けてきました。
― 異動されてすぐの産休・育休とのことでしたが、育児との両立に不安はありませんでしたか?
岡本:妊娠が分かった後に異動の話があったら、悩んでいたかもしれません。しかし、仕事・家事ともに限られたリソースで何をするべきか考える習慣が徐々に身についてきたため、「やらなければいけないことは、これとこれ。では、勤務時間内でどのように全うしよう?」という思考回路になりました。
チームの欠けている部分を満たすピースでありたい
― 岡本さんがマネジャーになられたのは、いつ頃のことだったのでしょうか。
岡本:振り返り面談などでキャリアについて上司と会話するなかで、上司から「管理職のキャリアも考えてみたらどう?」と言われたのは28歳の頃です。当時の私は「法務は専門性が輝く職務内容なので、経験の浅い自分がマネジャーをするなんてありえない。インプットを行う時間もなくなり、知識の差が開いてしまうだろう」と考え、マネジャーになるくらいなら、と初めて転職を考えました。しかし、ちょうど重要案件を抱えることになり時間を忘れて取り組んでいるうちに、気付けば人事異動の時期が訪れ、私はマネジャーに任用されました。
― 希望されていたわけではなかったのですね…! マネジャーとして活躍される姿が印象的だったので、意外です。
岡本:いざマネジャーになってみたら、心配していた専門性が気にならないくらい、「メンバーの成長をサポートする」という仕事が楽しかったんです。メンバー一人ひとりには必ず長所がありますし、私よりも専門性の高いスキルを持っている人も多くいます。そんな人が今の業務で思うようなパフォーマンスを発揮できていないとすると、何がボトルネックになっていて、どう解消すれば良いのか。このようなアプローチは、課題解決が好きな自分の性格にマッチしていました。各メンバーの成長機会を作ることにはやりがいもありますし、個人が成長した結果、チームとして大きな価値提供につなげられた時の感動はひとしおです。
― 自身がマネジャーになることで、マネジャーに対するイメージが変化したんですね。
岡本:「インプットの時間が減る」というのも、思い込みでした。メンバーが業務で悩む場面では、伴走する自分も勉強するため、より重要かつ難しい事案でのインプットが中心となり、専門性向上の機会はむしろ広がったと言えると思います。
― チームをマネジメントする際、大切にされていることはありますか?
岡本:高い専門性を持ち自律的なプロフェッショナルであるメンバーが、お互いに高め合えるようにすることを一番に考えています。
基本的な話で恐縮ですが…大切にしているのは、「感謝の気持ちを口に出して伝えること」ですね。人が自分ひとりでできることは限られています。自分には難しいことでも、軽々とやってのけ高め合える仲間がいる「チーム」だからこそ生み出せる成果があるはずです。しかし、チームと言っても他人の集まり。知らない相手とはチームワークを発揮できません。
関係性を育むためにも、「きっと誰しもありがとうの言葉は嬉しいはず!」を信条に、感謝をはじめポジティブな感情は必ず言葉にして伝えています。チームの力を最大限に引き出すために、日々の小さな感謝を大切にし、ともに働く仲間との絆を深めていくことが、私の目指す理想のチームづくりです。これからも一人ひとりの力を信じ、チームとしての成長を追求していきたいと思います。
― キャリアのなかでマネジャーに対するイメージが変わったタイミングはありましたが、チーム観が形作られたきっかけもあるのでしょうか。
岡本:実は正直なところ、ひとつの出来事でガラリとチームについての価値観が変わった…という経験はありません。私は日々の気づきのなかで思考をチューニングするタイプなんです。
学生時代から、ダンスや映画制作といったチームで活動する機会に恵まれ、「天才ひとりではなく、チームの構成員がそれぞれの役割を全うするからこそ生み出せる大きな成果」にワクワクしてきました。この原体験から、自分はいつでも何かのチームの一員であると捉え、常に「チームの欠けている部分を満たすピースでいよう」と自然に考えるようになりました。 だから、チームが変われば足りない部分も変わり、自分が果たすべき役割も変わる。変化を繰り返していくなかで、その時々に必要な力や視点を身につけ、気付けばいくつもの引き出しが備わっていました。
今のチームでは、法務のプロフェッショナルであるメンバーに囲まれながら、学びにあふれる日々を送っています。リクルートには「個の尊重」という価値観が根付いていますが、一人ひとりが自律的でプロフェッショナルなメンバーを、私は「部下」ではなく「頼れるパートナー」だと考えています。
― 最後に、これから目指していきたいことを教えてください。
岡本:メンバーが自律的に動きながら専門性を高めれば、一人ひとりが事業の良きパートナーとなる。これが円滑な事業推進、ひいてはビジネスを通じた社会貢献につながると考えています。これからもプロフェッショナルなメンバーの「一人ひとりが輝く」ことを大切に、チームとして社会に貢献していきたいです。
登壇者プロフィール
※プロフィールは取材当時のものです
- 岡本玲奈(おかもと・れな)
- 株式会社リクルート スタッフ統括本部 経営管理 ソリューション法務室 室長
スタッフ統括本部 広報・渉外 政策企画室 -
大学卒業後、2006年に入社。HR領域の事業企画、全社横断の新規事業開発を経験。2010年から、希望していた法務のキャリアへ。事業支援・経営支援領域の法務業務を経験し、現職