やる気最大化の仕組みで成長したQuipperインドネシア

やる気最大化の仕組みで成長したQuipperインドネシア

*本記事はBusiness Insider記事からの転載です。転載にあたり、一部記述を修正しております。

想像してみて欲しい。

わずか2年で、インドネシアという異国の地でスタッフ数を0から600まで拡大し、オンライン教育サービスでNo.1のサービスというポジションを確立するまでの道のりを。異文化の国で現地のコミュニティーに入り込み、保守的になりかねない教育関係者や学校との関係を築き、サービスを徹底的に現地化する奮闘を。

「Quipper」インドネシアの共同代表である船瀬悠太が、現地に初めて降り立ったのは2015年5月のこと。3カ月前の2015年2月には一足先に本間拓也がインドネシアに単身で乗り込んでいた。船瀬はマッキンゼー&カンパニーを退職した後、2013年にQuipper日本オフィスに入社、Quipperフィリピンで10カ月ほど経験を積んだ後、インドネシアへ。本間と共にゼロからのスタートだった。

それがいま、営業チームは500人にまで拡大した。

Quipperとは、経済的・地理的事情から生まれる教育格差をなくす目的で生まれたオンライン学習サービス。カリスマ講師の授業をいつでもどこでも受講できる「Quipper Video」と学校の先生向けの宿題管理ツールである「Quipper School」を合わせると、インドネシアでのユーザー数は300万人を超える。

「インドネシアには34の州、約500の市町村がある。そのうち400市町村をQuipperの営業スタッフは既に訪問しているんです」

現地の人々にとっては「リクルート」も「Quipper」も未知なるもの。わずか2年間で、ここまで事業規模を拡大できたのは、なぜなのか。

"解"が仕組み化されたアイデアボックス

人口約2.5億人、平均年齢は28歳。10代に限れば、日本の4倍近い1学年約400万人が暮らす。インドネシアは"若い国"だ。都市部の若者たちのスマートフォン保有率は80%を越える。

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Quipper Videoを使ってジャカルタの難関大学に合格した学生との合格祝賀会で。左はQuipperインドネシアを一緒立ち上げた共同代表の本間。

若い世代は日常のあらゆる場面でスマホを使いこなしている。それでも、オンラインで学習することへの抵抗感は万国共通。そこを突破するには、「直接ユーザーに会い、生の情報を伝え、生のサービスを見てもらうしかない」と船瀬は言う。

6人の営業チームを組み高校に出向き、サービスの使い方、メリットを生徒に対して生徒目線で細かく説明する。なぜ学校に行くのか。それはターゲットである生徒が、オフラインで一同に介する唯一にして最大の場だからだ。

毎年、生徒たちは入れ替わる。だから、学校との関係構築は欠かせない。営業スタッフ一人一人のコミュニケーションの質が落ちることのないよう、教育し続ける必要もある。

「この辺りのノウハウをリクルートは圧倒的に持っている。使えるものは、どんどん使っています」

Quipperは2010年にイギリスで設立され、2015年にリクルートの傘下に。船瀬は、ここで初めてリクルートならではのやり方に触れることになった。

リクルートが培ってきた知見を「アイデアボックス」と表現する。

例えば、なかなかパフォーマンスの上がらないスタッフがいるとする。そんなときは、このアイデアボックスを探りに行く。トレーニングの仕方、ロールプレイのやり方......。その時々の課題を解決するためのノウハウを探すと、そこには必ず"解"があること、その"解"が仕組み化されていることに驚くという。

「トップパフォーマーを生み出し、それを『型』化することで、ベストプラクティスを全面展開する。鍵は、人のやる気を最大化させる仕組みです。優秀な成績を上げたスタッフを褒め、表彰された者はその過程を言語化し、シェアする。そのサイクルが非常によくできていると思います」

参考にしたHOT PEPPERの拡大ストーリー

リクルートのアイデアボックスが最も活きたのは、Quipperインドネシアのスタッフが50人から500人に拡大したときだという。

「この急拡大をどうやって実現するか、と悩んだときに、参考にしたのがHOT PEPPERの拡大ストーリーなんです」

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Quipperインドネシアの年度始めのキックオフ。ここでいい結果を残したスタッフの表彰も行う。

HOT PEPPERも営業スタッフを全国で急拡大させた時期がある。最もうまくいっていた「札幌」の営業の仕組みを「型」化し、全国で展開したのだ。

「実際に携わっていた方々に話を聞きながら、『インドネシアでも応用できる』『時期尚早』と考えながら、利用できるものはどんどん利用させてもらっています」

日本でのスタディサプリの営業活動に自らが同行したり、インドネシアのスタッフを同行させたりしたこともある。

とはいえ、リクルートのやり方をそのまま持ち込むのではなく、その国の特性に合わせたアレンジも必須だ。例えば褒め方やかけ声一つとっても、フィリピンやインドネシアであれば、よりエモーショナルにするなど。細かいことだがコミュニケーションの重要な要素だ。

「キックオフでは、『Quipper! Super!』と皆で一緒に叫びます。日本ではあまり言わないですよね(笑)」

勉強したい子どもたちのために

教育現場での経験があるスタッフ、コンサルティング会社出身者、マーケティングのエキスパート......。現地の営業スタッフのバックグラウンドはさまざまだ。人材紹介会社を通してだけでなく、ビジネス特化型のSNS「LinkedIn」を利用し、船瀬自ら気になる相手にコンタクトを取ることも日常茶飯事。拡大期は、採用に注力する。毎週末カフェに籠もり、ひたすら人と会う日々が続く。

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意外にも、現地スタッフには「Quipperはインドネシアの会社」という認識があるのだという。

「それはインドネシアの教育にコミットする、ということをメッセージとして出し続けており、スタッフ一人一人が教育事業に携わる自覚を強く持ってくれているからだと思います」

グローバルな会社ではあるけれど、現地化するべきところは徹底的に現地に合わせる。同じくQuipperを展開するフィリピン、メキシコとの横の繋がりも大切にしているが、コンテンツはもちろん、学校訪問の仕方、教師たちのコミュニケーションの取り方といったオペレーションの部分は現地の人々の目線で進める。グローバルな部分とローカライズをバランスよく保てるように意識しているのだという。

船瀬自身、Quipperがインドネシアにもたらす未来をポジティブにイメージし続けている。

「インドネシアのような、島がたくさんあって、インフラが整っていない国でもオンラインのサービスであればどこでもアクセスできる。教え方の上手な先生がいないような地域もありますが、勉強をしたいという子どもたちはいる。教育格差のギャップをなくす、という課題解決もQuipperとリクルートのコンビなら可能になると思うんです」

Business Insider記事はこちら

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