若者のクルマ離れは本当? 「カーセンサー中古車購入実態調査2022」をポイント解説

若者のクルマ離れは本当? 「カーセンサー中古車購入実態調査2022」をポイント解説

中古車マーケットの現状把握と活性化のために、リクルート自動車総研が調査を開始して9回目となる「カーセンサー中古車購入実態調査」。今回は、調査から見える注目ポイントや業界の未来、また今後自動車総研がどう業界に貢献していきたいかについて、自動車総研所長の西村泰宏に話を聞いた。

不明瞭な中古車マーケットの実態を明らかにするために始まった「中古車購入実態調査」

―「中古車購入実態調査」について、そもそも始めた理由を教えてください。

西村:リクルートは中古車情報誌『カーセンサー』を手掛けており、消費者動向を知りたかったことが理由のひとつにあります。調査を始めた2014年当時、中古車マーケットはとにかく正確な情報が少なかった。中古車は、どこで、誰が、いくらで買っているのか不明瞭で、その上、「中古車は新車を買えない人が買うもの」「安かろう悪かろう」というようなマイナスイメージもありました。日本の自動車産業は新車販売がメインで、中古車マーケットを調査して把握することのニーズが、世の中にあまりなかったのです。ただ、エンドユーザーはどんなニーズを持っているのか、どんな経路で購入しているのかなど、実態を明らかにしていくことで、事業の発展だけではなく、中古車業界全体や中古車を検討している一般の方にも貢献できるのではないかと考え、この調査を始めました。ちなみに、この調査は『カーセンサー』を通した中古車売買に閉じず、さまざまな形で売買された幅広い情報を集めており、一次調査で20万件、二次調査では4000件超の回答数を集計しています。

クルマの製品自体の質の向上と、中古品購入の一般化が追い風に

―中古車のイメージが悪かったと言う2014年当時に比べ、中古車マーケットはどう変化してきたと思いますか?

西村:「中古車って不安」「壊れそう」というマイナスなイメージは年々減っています。そもそも国産車・輸入車問わず、車自体がどんどん進化して壊れにくくなったことで、価値が向上しており、その分、中古車になってもその価値は維持される。中古でも十分にバリューを感じることができるので、お得に買える車として認識されるようになってきたようです。また、残価設定ローンの登場によって使用年数の浅い中古車が多く出てくるようになったのも、マーケットが拡大してきた要因になります。他には、フリマアプリで洋服や楽器など中古品を買うことが当たり前になったように、車の世界に限らず、中古で買うこと自体が一般化していますし、中古品購入自体が賢い消費として捉えられてきていますよね。このように消費行動の変化も追い風になっていると思います。

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中古車の平均購入単価は増加中

―中古車市場は拡大しているとのことですが、今回発表された最新の「中古車購入実態調査2022」での注目トピックスを教えてください。

西村:まず注目すべきは、中古車の平均購入単価が今回も増加したことです。中古車購入単価は156.6万円で、前年より1.6万円増加し、過去8年間で39.3万円増加しています。理由としては先程お話したように、使用年数2、3年ほどの状態の良い中古車が増えているので、中古車にしては比較的金額が高くても、年数の浅いものを選ぶ人が出てきているから。また、中古品購入へのハードルが下がってきていることから、中古車も悪くないと、予算のある新車購入層が中古車マーケットに流れてきていることも理由のひとつです。その上、性能向上により新車自体のそもそもの単価も上がっているので、それにあわせて中古車の単価も上がってきています。このように、買われるモノと買っている人が変化しているのです。

20代・30代に注目! 中古車マーケットでは“若者のクルマ離れ”は当てはまらない

―調査に関して他にポイントはありますか?

西村:“若者のクルマ離れ”みたいなラベルが世の中的には貼られていますが、少なくとも中古車マーケットにおいては、20代・30代のカスタマーは市場のエース的存在。中古車を高く買って、短サイクルの乗り換えで市場を活性化してくれている存在なんです。20代・30代は40代以降のどの年代に比べても購入単価が高く、20代の1台あたりの乗車期間は3.9年と短い。60代は7.4年なので、倍くらい違うんですよね。若者は投資に近い感覚で、クルマを売買しているのだと思います。

中古車販売店のなかには「若者はどうせクルマなんて買ってくれないから」と若者向けの営業に消極的になっているところもありますが、このような調査を実施・開示することで、現状が正しく伝わり、それに合わせた営業施策を練れるかもしれません。調査が中古車市場全体を活性化する糸口になるのではないかと考えているんです。

■前回購入したクルマの乗車期間<二次調査>
【前回購入したクルマがある人のうち、有効回答者/単一回答】

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それにクルマの選び方も若者は面白いですね。若者に人気のクルマはもちろんありますが、それぞれが本当に欲しいものをリサーチして、納得して“推しのクルマ”を買っている感じが見て取れます。

ーちなみに、コロナ禍による中古車マーケットへの影響はありましたか?

西村:自由に移動ができるプライベートな空間として使えるツールだと再認識されたのは大きかったですね。また、今まではクルマを選ぶ時は年に数回帰省があるから大きめの車を選ぶなど、第三者の影響が大きかったのですが、ライフスタイルの変化により、自分たちの目的にあわせて本当に欲しいクルマを選ぶ方が増えました。良い意味でわがままにクルマと向き合えるようになったのだと思います。あとは、昨今ニュースにもなっている半導体不足や新車の納期遅れもあり中古車マーケットへの注目が加速していきました。

ークルマの選び方が変わりつつあるなか、今人気の中古車は何でしょう?

西村:新車で需要の高いクルマが中古車でも人気になる傾向があり、SUV人気は長く続いていますね。車体はかっこいいですし、現実的に使えるクルマですし、SUV自体の性能も向上してきているので全世界的に人気の車種になっています。ただ、今年はSUV人気も少し落ち着いてきて、30代・40代を中心に「ミニバン」にも人気回復の兆しが見られますね。他にも調査では、中古車の購入を検討したが1年以内に購入しなかった理由など、消費者動向に迫る結果も開示しているので、見ていただけたら中古車マーケットの今が見えてくるかもしれません。

■直近で購入した中古車のボディタイプ<二次調査>
【1年以内に中古車を購入した人/単一回答】

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リサーチを進化させ、中古車マーケットの発展に貢献していきたい

―今後、自動車総研として目指していきたい方向について教えてください。

西村:中古車マーケット全体を盛り上げ、貢献していくこと。私たち自動車総研が重んじていることです。現在は年に1回の実態調査ですが、これからは引き続きマーケット動向をリサーチしつつ、旬のトピックスなどにも細やかに対応できるようにし、発信する回数をさらに増やしていきたいと思っています。

また、例えば自動運転でAI分野が参入してくるように、自動車業界と協業していく異業種の人たちは今後も増えることが予想されます。そのような方に対して、自動車業界を知ってもらうための確かなファクトとして、調査結果をシェアできればと思います。調査・発信を続けることで、中古車マーケットの仲間を増やしていけたら嬉しいですね。

―最後に、西村さん個人の中古車マーケットに対する想いを教えてください。

西村:私の想いはひとつ。「クルマが好き」と誰もが気軽に言える世の中にしていきたいです。野球とかサッカーって、プレーをしたことがなくても、ルールに詳しくなくても「好き」って気軽に言えますよね。でも「クルマが好き」となると、かなり詳しくないとそう言えない雰囲気があって、なんだかハードルが高くなってしまうんです…。ただ、クルマって日常の中に溶け込んで存在しているもの。もっと気軽に楽しんで欲しいんです。クルマとの関わりを心からハッピーに思えて、抵抗感なく「クルマが好き」と言えるような世の中になるよう、これからもクルマの今を伝えていけたらと思っています。

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プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

西村 泰宏(にしむら やすひろ)
株式会社リクルート自動車総研所長 『カーセンサー』統括編集長 『Carsensor EDGE』編集長

自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入する全ての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事。愛車はフォルクスワーゲン カラベル

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