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SPECIAL INTERVIEW

【前編】小林可夢偉に聞く。世界最高峰の舞台から見る日本人がグローバルで活躍する術

グローバル , 働き方
インタビュー:小林可夢偉

インタビュー:Meet Recruit編集部 文:鈴木貴視 写真:依田純子

日本人唯一のF1ドライバーとして、モータースポーツの頂点で活躍し続ける小林可夢偉に、世界で通用する国際人に共通する項目や、改めて思う日本の魅力について語ってもらった。

モータースポーツ界における最高峰のカテゴリーとして、世界最先端の技術とトップドライバーが集結するフォーミュラ(F1)。その中で、日本人では18人目となるF1ドライバーとして、2009年のデビューから戦い続けてきた小林可夢偉。レーサーとして、一人の日本人として。世界で求められることとは一体何か。自身のキャリアを振り返りながら、グローバルで活躍するための術を聞く。

----幼少期の頃からカートレースに参加してキャリアを積まれてきましたが、明確にF1というカテゴリーを意識したのはいつ頃からでしょうか。

初めてモータースポーツに触れた時は、まだF1というもの自体を知りませんでした。後にカートを始めてから、モータースポーツの最高峰がF1だということを知って実際に乗ってみたいと思いましたね。最初は単純に、カーレーサーになりたい、その気持ちだけでした。

----9歳の頃からカートを始められましたよね。

そうですね。それで、10歳の時にレースデビューしました。

----後に、フォーミュラ・ルノー、F3、GP2(注:F1への登竜門となる、フォーミュラカーレース)などで実績を積まれていくわけですが、それらのカテゴリーとF1ではどのような違いがありますか?

スピードはもちろん違いますが、エンジンやタイヤの大きさなど、車体そのものも違います。その中で、やはりモータースポーツの最高峰に位置づけされているのもあり、ドライバーも速い者だけが集まってきて、レベルも上がりますね。

小林可夢偉

----F1に辿り着くまでに、ご自身としても考え方・やり方も試行錯誤しながら進まれたんですか?

はい。経験も含めて、各カテゴリーやヨーロッパという場所で戦ってきたことがF1で活かされていきましたね。カテゴリーが上がっていくにつれて、実力があるドライバーだけに絞られていきますし、お互いの特徴も分かってくる。その中で、技術を競ったり駆け引きをしながら進んできたという感じです。

言語の壁よりコミュニケーションの壁をどう超えるかが大切

----世界のフィールドで戦おうとすると、言語の壁と直面する人も多いと思いますが、可夢偉さんはいかがでしたか?

僕自身も、最初は英語を話せない状態で海外へ行きました。ただ、言語の壁というよりも、コミュニケーションの壁をどう超えていくかのほうが大事ですよね。話せないから恥ずかしい、ということもあると思いますが、まずは間違っていても話すという行為そのものが大切。実際それが、英語を早く話せるようになるための一番早い方法でもありますから。

----なるほど。コミュニケーションの壁、とありましたが、コミュニケーションを取る上で、何か気を使っていることはありますか?

むしろ、日本人はもっと気を使わなくても大丈夫だと思います。例えば、日本人が"やり過ぎた!"と思ったとしても、ほとんどのことが外国人に比べたら到底およばないレベルのことだったりもして(笑)。

----余計な気を使いすぎなのかもしれませんね(笑)。

日本人の多くは、気を使う場面でもないのに、相手の顔色を伺い過ぎて自分を見失うことが多い気がします。外国人は、根本的に自分ベースで物事を考える事が多いので、極端に言うと、自分が勝てたらいい、と考える事が多いんです。ある意味では、すごくシンプルなアイデアを持っている人が多いので、そういう人達と戦うのであれば、そういう戦いをしなければいけないんですよね。

小林可夢偉

----ドライバーという職業はただ速く走ることだけが仕事ではなく、マシンのポテンシャルを引き出したりタイヤをマネジメントしたり、チームメイトに状況を伝えるなど様々なことに対応しなければいけません。ご自身では、ドライバーの役割をどういうものだと捉えていますか?

チームとしてのコミュニケーションを円滑にするために、ドライバーも手助けをしなければなりません。当然、その中で車の開発に必要なアドバイスもしていかなければならない。単純に不備がある箇所を指摘するのは、チームの誰もができますが、実際にマシンを運転しているドライバーは、より意味のあるアイデアを伝える必要性がある。しかも、それをどうやって信じてもらうか、どう上手く伝えるか、その指摘に関してどれだけ信憑性があるかまで考えなければいけないですよね。

----伝え方に関して、何か良い方法はありますか?

まず、矛盾があることは言わない。その中で、例えば問題が10個あったとしても10個全て投げるのではなく、1番大切なことを選んでしっかりと伝えてあげること。一度に多くの問題を投げてしまうと混乱を生む可能性があるので、なるべくシンプルにすることが大切だと思います。タイミングを計りながら、最適なものを選ぶというか。

"楽しいことをしたい"という想いが、結果的に世界に出ていく

----ちょっと話は変わりますが、日本と海外でチームの特色も異なる部分もあると思いますが、それぞれに何か差を感じたりすることはあるんでしょうか?

個人的には、あまり感じたことはありません。ただ、組織が大きくなるとコミュニケーションの機会が減りますよね。例えば、10メートル先にスタッフがいるのに、直接話さずメールで連絡を取ったりとか。僕はメールが苦手なのでダイレクトに話かけてしまいますし、ちゃんと接することも大事かなと。大きな組織や企業であれば、そういうことを見極めてあげられるボスが必要だと思います。

----多国籍を象徴するF1業界ですが、色々な人達と携わる中で「国際人だな」と思う人はいますか?

個人的には、国際的でなくても"楽しいことをしたい"というシンプルな想いが、結果的に世界に出ていくんじゃないかなと思っているんです。

小林可夢偉

----ということは、可夢偉さんにとっては、楽しいこと=レース、になるんでしょうか。

レースというものは積み重ねで成り立つものですし、"楽しいことをしよう"と思ってレーサーになったわけではないので、そういう意味では少し違うかもしれません。もし国際人になろうと思うのであれば、レースで勝つということよりも、車を降りた時に一人の人間としてどう在るべきかを考える必要があるのかなと思います。

----人間性の部分ですよね。

この人と一緒に仕事したり遊んだりしたら面白い、そう思ってもらうほうが魅力的に映るはずなんです。やっぱり、楽しい人と一緒に仕事をしたりご飯を食べに行きたいですから。常に楽しいアイデアを持っていること、楽しい人間であることが大切だと思います。

----ご自身は、何のために仕事をしていますか?

もちろんご飯を食べていくためですが、個人的に一番ダメだと思うのは休日に何もしないこと。そうなってしまうと、本当にご飯を食べるために仕事しているだけであって、人生そのものが楽しくなくなってしまう。仮に楽しいことが無いという人は、楽しいことを見つけていないんじゃないかと思ってしまうんです。だから僕は、常に楽しいことを考える。そういうアイデアを持っていれば、自然と人から好まれ、いろいろなことに挑戦できるんじゃないかなと思うんです。

後編に続く

小林可夢偉に聞く。世界最高峰の舞台から見る日本人がグローバルで活躍する術

  1. 前編
  2. 後編

プロフィール/敬称略

小林可夢偉

レーシングドライバー

兵庫県尼崎市出身。9歳の頃にカートを始め、1996年にカートレースにデビュー。2000年には全日本ジュニアカート選手権のシリーズチャンピオンとなり、2001年には全日本カート選手権ICAシリーズチャンピオンを獲得、フォーミュラトヨタレーシングスクールを受講しスカラシップ生に選出。その後、フォーミュラルノーやF3を経て、2008年にGP2に参戦し数多くのタイトル獲得。2009年のブラジルグランプリで、トヨタF1チームからF1デビューを飾る。2010年から2012年まで、BMWザウバーF1チームのドライバーとして活躍。2012年の鈴鹿での日本グランプリでは、自身初の表彰台を獲得。2013年は、アジア人ドライバーとして初めて、イタリアの名門フェラーリ(スクーデリアフェラーリ)の一員としてGTレースに参戦。2014年、ケーターハムF1チームと契約し、再びF1に戻ってきた。

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