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インターネット産業をけん引する 藤田 晋さんのリクルート考

Recruit , イノベーション , リーダーシップ , 事業推進 , 人材活用

リクルートグループは社会からどう見えているのか。 私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2018年3月号からの転載記事です

リクルートは勝負しやすい場所のはず 挑戦しないことがリスクになりますよ

大学生の頃、リクルート出身のOBが作った会社で2年半アルバイトをしていました。リクルートのメディアを売る代理店のような企業だったので、よくG8ビル(リクルートGINZA8ビル)やG7ビル(リクルートGINZA7ビル/現 ヒューリック銀座7丁目ビル)へ出入りしていました。従業員の方との接点も多くて、新規事業を一緒に仕掛けたこともあります。

サイバーエージェントを起業したのが今から20年前。特に組織作りにおいてリクルートから多大な影響を受けています。優秀な人材を採用して、彼らのモチベーションを上げ、どんどん権限委譲して本気で育成していくこと。ただ権限委譲するだけでは、烏合の衆になってまとまりがつかなくなるので、ある程度の枠組みやレギュレーションを作り、そのなかで自由にさせるということも、リクルートから学んだ育成の考え方です。

最近の接点だと、2016年に行ったRECRUIT VENTURES(リクルートの新規事業開発プログラム)がきっかけで、リクルートと一緒に会社も作りましたね。そこで販売している従業員のコンディション変化発見ツールである『Geppo』というサービスは、サイバーエージェントで長らく運用してきたものです。

また、3年前からリクルートの前副社長である、ぼんちさんこと、中村恒一さんに社外取締役をお願いしています。我々の企業文化をよく理解してくださる方を長らく探していて、リクルート関係者しかいないと、ぼんちさんにお願いすることになりました。一般的には、社外取締役会という場に来てもらうパターンが多いのですが、そんなつまらない場にぼんちさんを呼びたくはありませんでした。なので、役員ミーティングに出席いただき、活きた議論を交わしながら、うちの会社の一番重要な意思決定に関わってもらっています。

経営者の観点からここ数年すごいと感じるのは、自らを変えていくパワーです。僕が知っている時代のリクルートは、トップ営業を何人も抱える、営業が強い会社でした。営業力によって商品が強化されていく側面はありますが、営業が偉い文化というのは、一方で技術がないがしろにされたり、事業内容がドメスティックになりやすいという傾向があります。また、買収も苦手。

実は、リクルートはITとグローバルに関しては弱点ではないかと思っていたんです。ところが、峰岸真澄さんが社長になってからはむしろ、IT、グローバル、買収が強みに変わりました。企業文化が強い会社が、自らを変革させていくのは、並大抵のことではありません。それをやり切っているのは、本当にすごいことですし、株式市場でも評価されていますよね。

かつて抱えていた多額の借金を返しきった先輩たちの馬力のすごさは誰もが認めるところかと思いますが、激変する環境のなかで、自らを変革するエネルギーというのも、目を見張るものがあります。

もうすぐ還暦を迎える企業の割に、経営幹部の皆さんがとても若い。ある程度のところまできたら、スパッと潔く身を引く文化というのも見事ですよね。当事者になってみると、内心続けたいと思うのが自然なこと。幹部陣の引き際の潔さがあるからこそ、現場も自然とそうなるのだと思います。

私から見ると死角がないように思えるリクルートですが、敢えて挙げるとするなら、ネットの新規事業開発におけるスピードでしょうか。ともに新規事業開発に取り組んだ時、驚くほど緻密にやっているなという印象を受けました。ネットビジネスは変化が激しいため、ゆっくり準備していると環境が変わってしまいます。そして、投資コストも人件費とパソコン代ぐらいでほぼかからない。ローコストで始められるので、とりあえず作ってから考えたほうが圧倒的に早いのです。こうした考え方が我々のベースにあります。リクルートの緻密さはネットの新規事業開発領域においては少々慎重すぎるかもしれません。ただ、その緻密さがあるから、大きくスケールする事業が生まれるわけなので、そこは分けて考えてもいいと思います。

ネットビジネスにおいては、我々のような後輩企業が出てきたことで、暴れづらくなっているかもしれないですね。でも、若くて優秀な人たちがたくさん入社してくるのですから、そういう人たちがもっとガツガツと頑張ればいいのにと思います。リクルートでは、失敗しても懲罰人事や報復人事などは起こらないはずです。リスクとリターンで考えると、ローリスクで挑戦できて、リターンを得られるということ。勝負しやすい場所にいるのだから、挑戦しないのはもったいないですよ。

プロフィール/敬称略

藤田 晋

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長
1973年福井県生まれ。青山学院大学経営学部卒業。学生時代からベンチャー企業で営業経験を積み、97年、株式会社インテリジェンスに入社。98年、同社を退職し株式会社サイバーエージェントを設立。2000年、当時史上最年少の26歳で東証マザーズに上場を果たす。創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりを目指し、「21世紀を代表する会社を創る」を会社のビジョンに掲げる。現在は、「AbemaTV」の総合プロデューサーとして事業立ち上げに注力。新経済連盟副代表理事。著書は『渋谷ではたらく社長の告白』『藤田晋の成長論』『起業家』など多数。

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