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【前編】m-flo VERBALがLDHで見つけた「夢をサポートする」ことの大切さ

グローバル , グローバル人材 , ビジネススキル , 事業推進 , 海外から見た日本

文:葛原 信太郎 写真:須古 恵

アーティストだけでなく、経営者でもあるm-floのバイリンガルラッパー VERBAL氏。日本と海外を行き来する中で磨かれた国際感覚と、コミュニケーションの断絶を埋める方法を聞いた

日本語と英語を縦横無尽に操り、まるでひとつの言語のようなラップを紡ぎ出す「m-flo」のバイリンガルラッパー VERBAL氏。アーティスト活動の他、EXILEや三代目 J SOUL BROTHERSを擁する「LDH JAPAN」の国際事業部プロデューサーや、アパレルブランド「AMBUSH®︎」の経営者としても手腕を振るう。海外のビッグアーティストとの親交も深く、国内外の音楽・アパレルシーンに対して、プレイヤーと経営者、双方の目線も持ち合わせる稀有な存在だ。本記事では、VERBAL氏に「海外から見た日本」をテーマに話を聞く。

「誰かの夢がビジネスを生む」―アーティストを支えるLDH独自の仕組み

中目黒駅から徒歩数分のところにある、LDHのビル。VERBAL氏の座る位置、写真の撮り方などを考えながらインタビューの準備をしていると、品格漂うスーツを上品に着こなしたVERBAL氏が現れた。

その手には自身の名刺を携えていた。一般的にアーティストとは名刺交換をしない。連絡先の交換が必要なのはマネージャーであり、アーティストは挨拶を交わすのみだ。しかし、VERBAL氏は役職名の書かれた名刺を丁寧に差し出した。

現在、VERBAL氏はLDHに所属するアーティストでありながら、同社の執行役員/国際事業部プロデューサーを務める。海外のビッグアーティストやブランドとのコラボレーションにまつわる様々な業務をこなすビジネスパーソンでもある。

「これまでキャリアの中では、海外アーティストとの楽曲制作やコラボレーションなど様々な挑戦をしてきました。場合によってはスタッフを通さず自ら商談し契約書を書いたり、海外のエージェンシーと交渉をしたりということもあり、ずっとアーティストとビジネスサイド、双方を兼務してきたんです」

VERBALさん

2012年にデビュー当時から所属していた事務所から独立、自身で事務所を立ち上げた後、2016年からはLDHに所属する。VERBAL氏とLDHとの関係は、楽曲のコラボレーションからスタートした。アーティストとして、そしてグローバル案件のコーディネート役としても、LDHを挑戦の場に選んだのは、同社が持つ、所属するアーティストを支えるための仕組みにあるという。

「アーティストマネジメント会社が、興行を自社でやりつつ、アパレルも飲食もウェデイングもやっている。そんな企業は世界のどこを見てもありません。一般的には、服がつくりたければ服のブランドや業者を頼る。飲食をやりたければ飲食のプロに頼む。しかし、LDHは自分たちでやります。なぜかというと、アーティストの夢はパフォーマンスをすることだけではないからです。飲食店をやってみたい、アパレルのデザインをしてみたい。そういった夢や希望を、会社としてサポートするのがLDHのカルチャーです」

たくさんのアーティストを抱えていると、衣装代だけでも大きな支出となる。内製するために社内にアパレル部門をつくる。そこにアパレルに興味があるアーティストが参加し、ブランドになっていく。

所属アーティストやパフォーマーのために健康的な食事を提供する福利厚生的な意味合いからスタートした飲食部門。飲食に興味があるアーティストが自身のコーヒーブランドを展開したり、アーティストプロデュースのメニューなども提供するなどの展開が起こり、次第にファンだけでなく一般の人々とLDHの接点を生むようになっていった。

アーティストの夢や希望、マネジメント会社としてのアーティストに提供したい理想の環境、経営戦略がオーガニックにつながり、同社の多角的なビジネスが生まれている。

「アーティストとして入ったとしても、他の事業に興味が湧いてどっぷりとやってみたければやればいい。音楽だけで生計を立てるのは世界的にも難しい時代です。音楽やパフォーマンス以外のキャリアパスも示す方法は、海外の音楽関係者に強い刺激を与えています」

EXILE HIRO氏による "おもてなし"が組織文化を創る

こうしたLDHの基本姿勢を「アーティストにとっての理想郷」と、VERBAL氏は表現した。

その根本にあるのは、同社代表のEXILE HIRO氏の存在が大きいという。

「HIROさんは周りの人に対してとても細かく配慮される方です。たとえばゲストを招いての会食の席ではみんなが楽しんでいるか常に目を配っているし、スタッフの節目にはプレゼントを欠かさない。アーティストとの接し方も同じです。具体的な夢がある人はそれを応援するし、ない人にも様々なアドバイスや感想をフィードバックしてその人がフィットする居場所探しの手伝いをする。もちろん、社外の人やクライアントに対しても一緒です」

自身は石橋を叩いて渡る慎重派だというVERBAL氏も、LDHの誰かの夢をサポートする体制に助けられているという。彼は、アメリカの大学で経済学と哲学を専攻し、ボストンの金融街で証券マンとして働いていた時期もある。アーティストとして生きるかを迷い続けた時期もあったと言うが、その中で背中を押してくれるHIRO氏の存在はとても大きかったと振り返る。

「自分だけで考えていると、どうしたって考え方が狭くなりがちです。だだでさえ、僕は保守的な傾向があるので。自分一人で考えていたら『やれて5ぐらいまでかな』と思っても、LDHの仲間は『いや100でしょう!』と背中を押してくれるし、実際にサポートしてくれる。そうすると『さすがに100は無理でも50まで頑張ろう』と思える。LDHにはそういうポジティブな空気があります」

独自進化と、K-POPから学ぶこと

もちろん、LDH含め、VERBAL氏が挑む本丸は、音楽業界にある。日本のマーケットは様々な領域で「ガラパゴス」と評され、独自の発展を遂げてきた。それは音楽にも言えることだという。

「日本のマーケットで支持される音楽は独特です。メロディーがはっきりしていて、展開が分かりやすい。Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→転調して「大サビ」というような王道のパターンが好まれます。一方、海外のトレンドは複雑です。サビが全くない曲や極端に暗い曲が突然ヒットチャートに登場したりすることもあります」

VERBALさん

日本の音楽マーケットはなぜガラパゴス化したのか。それは日本のマーケットが大きく、閉じた状態で十分な売上が見込めていたからだ。

「元々日本の音楽マーケットは、アメリカの次に巨大なものでした。例えば宇多田ヒカルさんのファーストアルバムは800万枚のセールスを記録しましたが、これは世界的に見ても驚くべき数字です。ジャネット・ジャクソンですら世界で400万枚ほど。日本の音楽マーケットはそれだけよくCDが売れていたんです」

日本の音楽マーケットと対比してVERBAL氏が語ったのは、韓国の音楽マーケットだ。2018年、韓国の男性7人組グループ「防弾少年団」の最新アルバムは、アメリカの週間アルバムチャート「ビルボード200」で初登場1位。韓国の4人組のガールズグループ「BLACKPINK」の新曲は、アジアを飛び越え18カ国のiTunesグローバルシングルチャートで1位を獲得した。K-POPは、今、世界を席巻している。

「韓国では90年代からCDの海賊版が広く出回っていました。正規のCDを1,000円で販売する店の前で、100円の海賊版が売られている。そもそも人口も少ないですし、世界に出ていかざるをえなかった。サウンド的にもビジュアル的にも、欧米や日本のトレンドを取り入れながら、常に世界を狙っていたんです。エンタメを世界に輩出することが国策としてあり、サポート体制が整っていることも含め、それが今、実を結んでいる。素晴らしい成果であることは間違いありません」

韓国と対比すると、世界に存在感を示せなかった日本の音楽マーケット。

しかし、VERBAL氏は日本が培ってきた独自性を活かしつつ、世界を見据えている。今後、日本の音楽はどのように世界に出ていくべきだろうか。後編では日本が世界にはばたくために必要なマインドを聞く。

後編へつづく

【後編】価値観の断絶を埋めるための『翻訳』。m-flo VERBALの国際感覚とは

  1. 前編
  2. 後編

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

VERBAL(バーバル)

【Producer. MC. DJ. Designer.】
m-floでの活動の他、超豪華ラップグループ TERIYAKI BOYZ® 、クリエイティブユニットPKCZ®
新たにスタートしたユニット HONEST BOYZ® のメンバーとしても知られ、独自のコネクションを活かし数多くのアーティストとコラボレーション。
Pharrell Williams、Kanye West、AFROJACK など海外のアーティストとも交流が深い。

近年はDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱い。
デザイナーのYOONと共に2008年にスタートしたアクセサリーブランド "AMBUSH®" ではクリエイティブディレクションを手掛け、これまでに Louis Vuitton (Kim Jones)、sacai、A Bathing Ape® など錚々たるブランドともコラボレーション作品を発表している。

2016年9月2日には東京にてブランド初となるショップを東京にオープンし、従来のショップ形態の枠を超える新たなクリエイションやカルチャーを発信するスポットとして大きな注目を集めている。
世界のファッションビジネスを中心とするオンラインニュースサイト"Business of Fashion (BOF)" が発表する「ファッション界を変える世界の500 人」にVERBAL & YOONの2人が2015〜2018年度、4年連続精選されるなど、その活躍の場は多岐にわたる。

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