【後編】『じゃらんリサーチセンター』の「次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム」が、なぜ日本中の観光地域づくりにつながるのか

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旅館・ホテルの経営者が変わると、周辺の地域も変わる

​​前編​では、『じゃらんリサーチセンター(以下、JRC)』が10年以上に渡って取り組んでいる「次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム(次世代プログラム)」を紹介しました。『JRC』がこのプログラムに投資を続けるのは、観光業界と地域の未来のためです。ではなぜ、次世代旅館・ホテル経営者を育成することが、観光業界と地域の未来につながるのでしょうか。​

最初に、プログラムの卒業生が、旅館・ホテル周辺の地域づくりに貢献した事例をふたつ紹介します。

1期卒業生の永田 祐介さん(熊本県 阿蘇内牧温泉 蘇山郷)は卒業後、インバウンド観光客誘致のために、蘇山郷のパンフレットや説明資料の英語化を進めました。それだけでなく、阿蘇内牧温泉の皆さんと協力して、地域ウェブサイトや地域店舗メニューの多言語化、店舗PR動画の作成、ツアーアクティビティの充実などを図りました。その結果、外国人観光客を数多く受け入れることに成功し、外国人に優しい街づくりモデル第1号として、九州未来アワード・インバウンド観光部門で大賞を受賞しました。

永田 祐介さん​​

永田 祐介さん(熊本県 阿蘇内牧温泉 蘇山郷)​​

阿蘇内牧温泉の英語版Webサイト

阿蘇内牧温泉の英語版Webサイト

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また、4期卒業生の矢崎 道紀さん(山梨県 下部ホテル)は、卒業後、次世代プログラムでの学びを参考に、幹部と一緒になって、下部ホテルらしい「人財評価表」を作成しました。また、全従業員で意見を出し合い、働く上での「心得」も作っています。心得の実行度合いを互いに評価して、優れた社員を表彰する仕組みも始めました。マルチタスク化やIT化、休館日の導入なども進め、働きやすさ向上にも取り組んでいます。以上の取り組みは全て自社の経営改革ですが、加えて、2020年から毎年、下部ホテルの社員が中心となって、100名規模で富士山周辺の国道の清掃活動を行っています。ホテル周辺の地域をボランティアで継続的に清掃しているのです。​​​

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次世代プログラムの卒業生たちのほとんどが、このふたりのように、なんらかの形で周辺地域の皆さんと協力したり、周辺地域に貢献したりしています。多くの場合、周辺地域に貢献している旅館・ホテルほど、経営改革にも成功しています。旅館・ホテルの経営者が変わると、周辺の地域も変わるのです。​

矢崎 道紀さん

矢崎 道紀さん(山梨県 下部ホテル)

山梨県 下部ホテルWebサイト

山梨県 下部ホテルWebサイト

地域企業がサステナブルに栄えるためには、地域全体が栄える必要がある

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観光業界では、近年「DMO(観光地域づくり法人)」が注目されています。DMOとは、ごく簡単に言えば、観光にまつわる地域づくりの司令塔となる組織です。次世代プログラムの卒業生のなかには、自らの地域のDMOをリードしている経営者が少なくありません。

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地域観光には、各地域に根ざすさまざまな企業が密接に関わっています。そのため、1社だけが栄えるようなことはなかなか起こりません。地域の旅館やホテルがサステナブルに栄えるためには、周辺のさまざまな企業が総体的に栄える必要があるのです。DMOのような組織が地域づくりの音頭をとることが、地域全体、ひいては一つひとつの旅館・ホテルが栄えることにつながるわけです。この点は大都市圏とは事情がかなり異なります。

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次世代プログラムは、こうした観光地域づくりの大切さを学ぶ場でもあります。例えば、DMOの成功例のひとつに「雪国観光圏」があります。新潟県・群馬県・長野県の3県の市町村が県境をまたいで協力しているDMOで、魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、みなかみ町、栄村の7市町村を圏域として、一体的な観光圏で新たな展開をすることにより地域活性化を目指す組織です。次世代プログラムでは、この雪国観光圏を率いる井口 智裕さん(株式会社いせん 代表取締役、一般社団法人雪国観光圏 代表理事)が、観光地域づくりの講義をしてくれます。

雪国観光圏

雪国観光圏

井口 智裕さんの旅館・龍言 Webサイト

井口 智裕さんの旅館・龍言 Webサイト

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次世代プログラムでは、受講生たちはテイラー 雅子先生(大阪学院大学 経営学部 教授)から、旅館・ホテル業界の人財マネジメントを学びます。受講生たちは、自社の経営ビジョンに基づいて「人財ビジョン」や「人財評価項目」を実際に作ります。

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この講義を経て、多くの受講生たちは従業員を「資本」としてより大事にするようになり、従業員主体の組織変革に踏み切ります。つまり、次世代プログラムの卒業生たちは、志をともにできる働きやすく働きがいのある職場をつくり、周辺地域に住む社員たちをより幸せにしようとしているわけです。これは周辺地域にとって、決して小さなことではありません。

テイラー 雅子先生

テイラー 雅子先生(写真内右・大阪学院大学 経営学部 教授)

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さらに次世代プログラムでは、半年をかけて経営者自身と旅館・ホテルの「ありたい姿」を探求する時間も多く用意しています。ありたい姿とは、自分あるいは旅館・ホテルが大切にしたい想い・価値観・自分らしさ・強みをベースにした未来像のことです。次世代旅館・ホテル経営者たちがビジョンやパーパス経営を学ぶことが、地域での新たな価値の創造につながっていくだろうと考えています。

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持続可能な地域づくりのために、リクルートは、今後も地域関係者と連携したさまざまな取り組みや支援を続けてまいります。

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