『就職白書2025』発表。さらに進む採用活動の早期化と学生の生成AI活用。鍵となるのは働きやすい環境とキャリア支援

『就職白書2025』発表。さらに進む採用活動の早期化と学生の生成AI活用。鍵となるのは働きやすい環境とキャリア支援

株式会社インディードリクルートパートナーズのリサーチセンター(※1)『就職みらい研究所 』 では、毎春『就職白書』を編纂・発信しています。『就職白書』では、年次調査や産学官のさまざまな方への取材などを交えながら、毎年の学生の新卒就職活動・企業の新卒採用活動の動向や、これからの学生・若者と働く組織のより良いつながりに向けた提言をまとめています。

今年も『就職白書2025』が2025年2月に発表され、学生の就職活動および企業の2025年卒採用活動の実態、2026年卒以降の採用の見通しについてまとめており、その調査結果の一部を抜粋してご紹介します。
(※1)『就職白書2025』の発表時は株式会社リクルートの研究機関『就職みらい研究所』

就職確定率は調査を開始して以来の最高値を更新。就職活動における生成AIの活用も急増

まず、2025年卒の学生の就職活動状況について振り返ります。
2025年卒の学生の就職確定率は91.7%と、2012年卒の調査開始以来最高値を更新。学生優位な就職環境が続いています。また、就職プロセス調査の結果では、卒業年次前年3月1日時点の就職内定率(※2)で見ると、2020年卒では8.7%だった内定率が、2021年卒で15.8%と大幅に上昇、2025年卒になると40.3%と4割台となり、内定取得時期および採用活動の早期化が一層進んでいます。
(※2)現行の就職・採用活動日程は2017年卒から(広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降/採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降)

テクノロジーの進展に伴い、就職活動の効率化の兆しも見られ、就職活動における生成AIの使用は34.5%と前年の2024年卒の14.5%から大幅に増加。生成AIの影響力が増していると同時に、使用される場面も自己PRや志望動機などの書類作成だけでなく、面接対策活用など、使われ方にも広がりを見せています。生成AIの活用が就職活動の負荷低減につながり、自らの経験の内省を深める手助けとなれば学生にとってプラスと言えるでしょう。

2025年卒業生(n=1835)及び2024年卒業生(n=1802)の、就職活動における生成AIの使用状況の図表(学生全体/単一回答)

内定が取得しやすい状況下で、就職先を安易に決めてしまったと感じる学生も

その一方で、就職先の決定に関し選定基準や決定プロセスについての自身の認識を尋ねた設問では、「就職先決定を振り返ると、安易に決めてしまったと感じる」が43.6%、「就職活動中に、もっと多くの選択肢を検討すべきだったと思う」が52.1%など、内定が取得しやすい状況を背景に、自己探索・環境探索が不十分なまま、軸や選社基準が定まらない状態で内定を取得する可能性が見て取れます。

就職活動のうち選社基準や決定プロセスに関する自己認識についての回答結果の図表(就職確定者/単一回答)

生成AIの活用についても、「生成AIから得た回答をそのままエントリーシート等に使用した」「生成AIを使用して、エントリーシート等の内容を本来の自分以上に良く見せても良いと思う」と答える学生の割合が増加傾向にあり、就職活動の負担軽減は歓迎すべき動きではあるものの、過剰な効率化には慎重な議論が求められます。

就職活動の早期化やテクノロジーにおける負荷軽減などにより、学生が自らのライフキャリアについて深く考える機会が十分でないまま入社した場合、入社後のミスマッチや早期離職につながるリスクとなり、企業が個人のキャリアをこれまで以上に支援することの重要性が増していくことも想像されます。

中小企業を中心に採用難は継続。採用充足企業と未充足企業では働き方の情報提供に差

企業における2025年卒の採用活動についても振り返ります。
2025年卒の採用数の計画に対する2024年12月時点での充足状況は、「計画通り」「計画より若干多い」「計画よりかなり多い」を合わせた採用充足企業の割合が37.2%と、2024年卒の採用状況から1.1ポイントの微増となりました。ただ、直近3年の充足率は3割台後半~4割程度に推移しており、かなり低い状況にあると言えます。
従業員規模別に見ると、「5,000人以上」「1,000~4,999人」企業が増加傾向にあるのに対し、「300~999人」「300人未満」企業は微減していることから、とりわけ、中小企業を中心に採用難が続いていることが分かります。

従業員希望別と地域別で見る、2025年卒の採用数の計画に対する2024年12月時点での充足状況についての図表(2025年卒の採用実績企業/単一回答)

採用充足企業と未充足企業ではどのような差があるのでしょうか。まず、「新卒3年以内の従業員の離職を課題として捉えている」という企業の割合(「当てはまる」「やや当てはまる」の合計)を見ると、2025年卒採用における充足企業では44.1%であったのに対し、未充足企業では53.1%で、未充足企業が上回っていました。
また、採用充足企業では、採用時に「働き方の制度 (在宅ワーク・副業兼業・フレックスタイムなど)」や「オフィス環境、設備」などを情報提供する割合が未充足企業よりも高く、加えて、社員が利用できる社内制度においても、充足企業のほうが「自己申告制度」や「上司とのキャリア相談」などのキャリアに関する制度の利用が活発に行われています。
これらを踏まえると、働きやすい環境の整備や社員がキャリアについて考える制度を整えるなど、既存社員の働きやすさや働きがいの向上につながる取り組みへの注力が、採用活動においても良い影響をもたらしている可能性があると考えられます。

採用で提供する情報とその割合についての図表(2025年卒の採用実績企業/複数回答)

2026年卒採用の面接開始時期はさらなる早期化が見込まれ、2月までに半数が開始予定

最後に、企業の2026年卒採用の見通しを見ていきます。企業の2026年卒採用予定数の平均は31.9人で、2025年卒実績の平均30.3人から微増。従業員規模別に見ても全ての規模で増えており、企業の堅調な採用意欲が見られます。

採用方法・形態の予定は、「部門別採用」が最も高く、次いで「スカウト・オファー型の採用」「通年採用」となっています。なかでも2025年卒実績と比較して増加したのは「採用直結と明示したインターンシップ等からの採用」、「スカウト・オファー型の採用」、「リファラル採用(社員などからの紹介を通じた採用)」などです。「スカウト・オファー型の採用」について従業員規模別に見ると、大企業での実施予定率が高く、「通年採用」では「300人未満」企業が他の規模に比べて高くなっています。

面接開始時期については、2025年2月までが半数を占め(「未定」「分からない」を除く)、2026年卒の各採用プロセスの開始予定時期の「卒業年次前年2月までの累計」を見ると、2025年卒に比べて面接(対面)が11.6ポイント増、面接(Web)が11.0ポイント増、内々定・内定出しが13.1ポイント増と、一層の早期化が推定されます。

対面面接開始時期のグラフと、web面接開始時期のグラフ。どちらも未定を除く(新卒採用実施または実施予定企業/単一回答)

今後、労働供給制約社会の到来が見込まれるなかで、企業はこれまでの採用手法や配置配属のあり方等を見直す必要性に迫られています。従来の一律的で画一的な採用施策や人事制度を見直し、今の時代に最適な人事制度へとアップデートしていけるように取り組み続け、既存社員も含めた働き手にとって魅力的な職場となっていくことがより重要となるでしょう。
『就職白書2025』冊子版 では、キャリア形成支援プログラムの現状や働く個人から選ばれる組織づくりについても言及しています。ぜひ本誌でご覧ください。

調査概要

【学生調査】
2025年卒(大学生・大学院生)の就職活動振り返り調査
 調査目的:就職に関する学生の活動実態を把握する
 調査方法:インターネット調査
 調査協力:株式会社インテージ
 調査対象:調査協力会社のモニターにスクリーニング調査を行い、
      民間企業等を対象に就職活動を行った全国の大学4年生・大学院2年生
 調査期間:2025年卒-2024年11月22日~2024年12月4日
      2024年卒-2023年11月22日~2023年12月4日
      2023年卒-2022年11月21日~2022年12月5日
 集計対象:2025年卒-1,835人、2024年卒-1,802人、2023年卒-1,618人

【企業調査】
大学生・大学院生の就職活動振り返り調査
 調査目的:新卒採用に関する企業の活動実態を把握する
 調査方法:郵送調査・インターネット調査を併用
 調査協力:株式会社電通マクロミルインサイト
 調査対象:全国の新卒採用を実施している従業員規模5人以上の企業
      2025年卒-4,876社、2024年卒-4,826社、2023年卒-4,851社
 調査期間:2025年卒-2024年12月2日~2025年1月10日
      2024年卒-2023年12月1日~2024年1月10日
      2023年卒-2022年12月2日~2023年1月11日
 回収社数:2025年卒-1,510社(回収率31.0%)
      2024年卒-1,488社(回収率30.8%)
      2023年卒-1,569社(回収率32.3%)

≪集計方法について≫
●大学生については、性別、専攻、所属大学の設置主体の構成比が実際の母集団に近づくよう、文部科学省「学校基本調査」の数値を参照し、ウェイトバック集計を行った。大学生と大学院生を合わせた学生全体については、大学生と大学院生の構成比に関して、同様のウェイトバック集計を行ったため、大学生と大学院生の合計値が、学生全体の値と一致しない場合がある。

≪調査結果を見る際の注意点≫

●%を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、%の合計値や差の数値と計算値が一致しない場合がある。
●図表の一部で、今回調査と過去調査のポイント差をカッコ内に記載した。
●データは無回答サンプルを除いて集計している。
●サンプル数50未満の集計値は参考値として取り扱う。
●企業は従業員規模の無回答企業があるため、従業員規模別の計と全体は一致しない。
●無回答項目はグラフ・数表内で「-」と表記。
●2025年卒業や2026年卒業を「2025年卒」「2026年卒」と表記。
●キャリア形成支援プログラムとは、インターンシップをはじめ、オープン・カンパニー、キャリア教育を含むキャリア形成支援に係る取り組みの総称を指す。


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