グローバル化する日本企業経営者の支援者 三浦智康さんのリクルート考

グローバル化する日本企業経営者の支援者 三浦智康さんのリクルート考

多様な人材を原動力にイノベーションを体現する企業であり続けて欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2019年11月号からの転載記事です

アイデアから始まり試していく軽やかな機動力

GROWTH FORUM(リクルートグループ横断でナレッジのシェアを行う社内イベント「FORUM」の商品開発・改善部門)の社外審議員も今年で3年目となりました。毎年、事前審査から当日の熱気に触れるのを楽しみにしています。

PDCA(Plan Do Check Action)によって経営管理をしている企業は多いのですが、FORUM で発表されるイノベーティブな案件は、アイデア(Idea)から始まるIDCA になっていてとても印象的です。プランに時間をかけ過ぎて新しい挑戦ができなくなっている老舗企業が多いなか、60周年を迎えようとしているにも関わらず、軽やかに新しいものを生み出し続けるリクルートの企業文化に感服しています。

GROWTH FORUM の冒頭でも北村吉弘さん(株式会社リクルート取締役社長)がTシャツとジーンズでご挨拶をされていましたね。経営とメンバーの距離を感じさせない軽やかさが新しいアイデアを大切にしている企業風土を表しているようで印象的でした。

もうひとつ特徴的なのは、テクノロジーを苦にせずビジネス開発しているところです。例えばハイテクメーカーや研究開発を中心としている企業など技術的に進んでいるところは世の中に複数社あるかと思います。しかし、リクルートの方々は、どんな進んだ技術も実践的にビジネスに活かして現場で試していく。

テクノクラートと言われるビジネスと技術をつなぐ人材がなかなか育成できず、また採用もできないといわれるこの時代に、リクルートではビジネス側と技術側をつなぐコミュニケーションに長けている人材が潤沢だということでしょうか。正しくこの機動力が高速なビジネス開発に直結しているのだと考えます。

GROWTH FORUM の3年を振り返ってみても、各年に登場するコンテンツが、1、2年遅れて世の中の企業のアジェンダになる傾向が見て取れます。やはり、いち早く新しいトレンドに挑戦しているからこそ、自然と世の中の先行指標になっているのかもしれません。

グローバルで苦戦する日本企業にグローバル経営のお手本を

さて、私が担当している野村マネジメント・スクールは、エグゼクティブを養成する機関として間もなく40年の節目を迎えます。海外の名門ビジネススクールから講師陣を招聘し、現地のビジネススクールと同質のカリキュラムを提供しています。受講生は上場企業役員や経営幹部候補が中心で、卒業生は既に6000名を超えました。

よくグローバル企業と日本企業の人材育成における潮流の違いを問われることがありますが、忘れてはならないのは日本企業の主戦場はもはやグローバルであるということ。株式公開している企業なら、なおさらです。

しかし、グローバル企業として日本企業を見た時、経営力は国際標準に追いついておらず、国際市場で競争する覚悟も足りないと感じます。そんななか、急速に国際化しているリクルートが、経営の新機軸を示してくれるのではと注目しているところです。

多様な人材のなかで切磋琢磨し実践で学び、経営に活かす

財務・ファイナンスにおいては、専門的な知識だけではなく、経営判断に活かせる実践的な知識こそ重要です。野村スクールでは、ハーバード大やウォートン校の講師を招聘し、臨場感あふれるケーススタディで実践学習する方式を採っています。御社のFORUMも、実例を題材に一人ひとりに考えさせるきっかけを与える方式であり、とてもよくデザインされているなと感じています。

イノベーションにおいては、多様性がとても重要な要素です。グローバル企業の多くは、国籍を含め多様なバックボーンを持つ人材が切磋琢磨しながら新しいものを生み出しています。

しかし、日本企業は同質の人材でチーム編成されることが多い。そこで野村スクールでは、異業種他社の受講生が集結し討議することで、モノの見方自体を変える教育を実施しています。

これまでリクルートは、多様な人材を動員し、新しいものを生み出し続けてきました。しかし、急速に巨大化しているのも事実。それは機動性を損なうリスクです。今後も、大企業病に陥ることなく、多様な人材を原動力にして、イノベーションを体現する企業であり続けることを期待しています。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

三浦智康(みうら・ともやす)
株式会社野村総合研究所理事
公益財団法人野村マネジメント・スクール学長

1986年東京大学大学院を修了後、野村総合研究所に入社。金融業界を中心に、経営戦略、営業・マーケティング、信用リスク管理、システム戦略に関するコンサルタントとして活躍。2009年執行役員に就任後、コンサルティング本部、金融システム本部、総合企画センターを担当。17年3月まで未来創発センター長として、地方創生、インフラ輸出など国家成長戦略に関する提言に取り組む。現在、野村総合研究所理事、野村マネジメント・スクール学長を務める

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