埼玉大学経済経営系大学院 宇田川元一准教授のリクルート考

シリーズ

リクルート考

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“未来をあきらめない”青臭さと高い視座で稀有な存在であり続けて欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2021年6月号からの転載記事です

何にも似ていない独特の雰囲気とナラティヴが魅力

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小学生だった私とリクルートとの最初の出会いは、ニュースで見た創業者の江副浩正さんでした。友達が『ドラゴンボール』などアニメの話で盛り上がるなか、自分は国会で話す江副さんの姿を見て、何か他の大人とは違うものを感じてニュースに釘付けになっていました。一般の経営者像とは違う、新しさや自由さを感じたのかもしれません。

その次の印象的な出会いは就職活動。当時、どの会社でも面接官に質問していたのは「仕事における目標はどのようなものですか」ということ。学生に質問をしておきながら、ほとんどの面接官が言い澱む。一方、リクルートの人たちは「社会ってこういうものだから」といった斜に構えるところがなく、「自分自身の違和感を大切にして、自分たちで変えていく」といった少し青臭く“あきらめない感じ”がとても心に残りました。

自らの強みを言語化し理解していることが強み

私は現在、経営学者として、社会構成主義に基づくナラティヴ・アプローチなど、人文系やケアの領域の理論を基盤にしながら、経営戦略論・組織論の領域で、企業変革やイノベーション推進などについて研究しています。その傍ら大手企業やスタートアップ企業で、イノベーション推進や企業変革のためのアドバイザーを務めています。

書籍出版前後からリクルートマネジメントソリューションズをはじめとして、リクルートグループ各領域との協働も増えるなか、リクルートの人たちの日々の仕事、考え方に受け継がれる「ナラティヴ」があることを実感しました。

実は、多くの企業は変革や新規領域への挑戦が重要だと理解しながらも変革できずに徐々に死を迎えていく。変革できる企業と変革できない企業、その違いは、さまざまな変化に意味付けができるかどうかの差異であると思います。

そのために重要なのは、独自のナラティヴを持っているかどうかです。自分たちの大切にしているものや特徴が日々の仕事を通じて受け継がれていることが、異質な出来事や他者に対して解釈をする拠り所となるので、変革に伴う衝撃を和らげることができます。

その結果、柔軟にビジネスモデルや組織体制を変化させ生き延びることができるのです。常に変化し続け、変化の度に強くなるリクルートのナラティヴにとても興味を持ちました。

個の違いを歓迎しあう 変化に挑む共同体

リクルートワークス研究所 所長 奥本英宏さんと学会発表をさせていただいた際に、創業からの変遷やその理念についてお話を伺いました。

創業メンバーのひとりであった大沢武志さんの「個をあるがままに生かす」、江副さんの「自ら機会を創り出し、、機会によって自らを変えよ」、現在も経営理念に掲げる「個の尊重」という言葉に最初に触れた時には、強い個の集団であることを目指している言葉なのかと思いました。

しかし、徐々にこれらの言葉に対する最初の印象が誤解であると気付きました。リクルートが目指しているのは、「会社や社会を創っていくのは、そこにいる一人ひとり。全員で助け合って社会を変えていくことを目指している共同体である」ということ。

1942年に書かれたピーター・ドラッカー『産業人の未来』では、「企業はそこに集う人たちを“社会の目的実現のため”に参画させると同時に、ひとりの人生につながる働く意味を与える共同体であるべきだ」ということを語っています。

江副さんはドラッカーをよく読まれていたそうで、まさにこういう企業を目指していたのではないかと感じました。

リクルートに集まる一人ひとりの違いを歓迎し、互いに活かし合い社会をより良く変えていくことを目指す。そこにはやはり「あきらめ」などない青臭さとさわやかさを感じます。

リクルートがすべきことを自分たちにしかできない方法で

研究やアドバイザーとしての関わりを通じてさまざまな企業を見てきましたが、リクルートというのはどこの会社にも似ていない稀有な存在だと感じています。独特な運動体と言ってもいいかもしれません。

これからも、常に自ら変わり続け、自らの違和感をまっすぐに受け止め、社会をより良く変革するという視座の高いゴールを持ち続けていただきたい。

日々の仕事のなかでも「自分たちはいったい何を追求しているのか」を定期的に捉え直したり、問題に対して対話的に挑み続けることこそ大切です。

表向きのビジネスモデルや制度にとらわれず、リクルートにしかできないことを、リクルートにしかできない方法でやるんだという誇りを大切にして欲しいと思います。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

宇田川元一(うだがわ・もとかず)
埼玉大学経済経営系大学院 准教授

経営学者。1977年東京生まれ。立教大学経済学部、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了後、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、07年長崎大学経済学部講師・准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より現職。専門は経営戦略論、組織論。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞、著書『他者と働く―「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)はHRアワード2020書籍部門 最優秀賞受賞

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