飲食業界にDXを 店舗オーナーの「やりたかったこと」が叶う世界を目指して

飲食業界にDXを 店舗オーナーの「やりたかったこと」が叶う世界を目指して

酒類の提供禁止や営業時間制限など、コロナ禍は飲食業界にさまざまな変化を余儀なくし、いまだ完全回復には至っていません。一度離れた働き手は飲食業界には戻らず、他業界に比べても人手不足が続いている状況。そんな飲食店に寄り添い、人手不足や業務の効率化を支援する手段を提供したい。これまでは『ホットペッパーグルメ』で集客のお手伝いをしてきた営業が、業務・経営支援サービス「Air ビジネスツールズ」を案内し始めました。

リクルートの飲食領域で長年、営業、そして営業マネジャーを務めてきた内海雄太郎が、今の飲食業界の状況を踏まえながら、飲食店の業務支援に取り組む思いを語ります。

コロナ禍で大打撃を受けた飲食業界

内海:私は2009年に入社以来、14年間ずっと、飲食店予約・グルメ情報サイト『ホットペッパーグルメ』の営業を担当しています。これまでは集客メディアである『ホットペッパーグルメ』だけをお客様にご提案してきたのですが、今ではリクルートが手掛ける業務支援・経営支援ツールである、「Air ビジネスツールズ」もお客様にご案内するようになっています。

では、なぜ私たちが飲食店の業務支援にまで取り組むようになったのか、それは飲食業界を取り巻く環境が目まぐるしく変わっていることも理由のひとつなんです。

2020年から始まったコロナ禍は、外食市場に大きな影響を与えました。相次ぐ時短要請に酒類の提供禁止、マスク会食の推奨など、飲食店は試練の日々が続きました。コロナ禍が落ち着いてきた2023年現在、前年に比べると回復傾向にあるものの、宴席の減少もあり、市場規模が完全に回復しているとは言えない状況が続いています。また、昨今の物価高が消費者の節約マインドを刺激していることも事実。

2023年1月の外食市場概況図

ですが、朗報もあります。2023年3月の『ホットペッパーグルメ』のネット予約状況を見ると、予約件数自体はコロナ禍前を上回る比率で上昇。3月13日からマスク着用が個人の判断になったこともあってか、消費者の外食意向は急速に回復していることが読み取れます。

2023年3月の『ホットペッパーグルメ』のネット予約状況図

人材不足が深刻化する飲食業界 デジタルツールの導入へ

―コロナ禍の影響はあるが、順調に回復しているというように受け取れますが…。

内海:外食市場は回復基調の反面、飲食業界の人材不足は深刻化しているんです。雇用機会や待遇が景況に影響されやすいことがコロナ禍で露呈し、コロナ禍が落ち着いた今でも、他業種に比べてアルバイト・パートが集まりにくくなりました。

これら人材不足を補う一助として、さまざまな企業がデジタルツールを提供しており、実際にキャッシュレス決済など何らかのデジタルツールを導入した飲食店の80%は、導入による効果を実感しています。

シフト管理や予約受注、配席管理に売上管理などを手助けしてくれるデジタルツールを使うことで、本来飲食店として「やりたかったこと=さらなる料理の味の追求や接客水準の向上など」に注力できるようになりますよね。リクルートでは、人でなければ生み出せない価値の創造に集中していただくことができるようになること、これがDX(デジタルトランスフォーメーション)の意義だと捉えています。そのために私たち『ホットペッパーグルメ』の営業も、従来の広告営業だけにとどまらず、『Airレジ』や『Airメイト』などに代表されるような業務・経営支援サービス「Air ビジネスツールズ」を飲食店の皆様にご案内するようになったんです。

潜在化してしまった飲食店の課題に解決の糸口を

―今、人材不足に苦しむ飲食店の皆様にはデジタルツールの導入はさぞ喜ばれているのでしょうね。

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内海:確かに導入いただければ価値を実感いただけるのですが、実はその手前でデジタルツール導入に難色を示されるお客様が多いのが実態です。飲食店経営者のデジタルツールへの関心度は4割程度。6割近くの経営者は興味なしと答えています。以前、飲食店経営者に対して調査を行ったことがあるのですが、「経営している飲食店で以下のDXツールについて、導入にあたって迷っているポイントは何か?」という問いに対し、「オペレーションの見直しや変更が必要であるため、手間がかかり面倒である」という答えが多く挙がりました。

飲食店でなぜDXが進んでいないのか図

実際に私が担当しているお客様にも、ツールの導入に懐疑的な方は多いです。そもそも皆さん、今のやり方で仕事が回っているので、何かを変えようとは思っていないんです。レジ締めに30分以上かかることは当たり前、アルバイトのシフト管理に苦労することも日常。それが普通になってしまっていて、「不」だとは思っていない。ですが、長年『ホットペッパーグルメ』の営業として飲食店に関わってきた私から見れば、DXでこうした時間を短縮できれば、飲食店の皆さんがもっと本来の「やりたかったこと」に向き合えるのではないかという思いがあります。

特にコロナ禍以降の人材不足は深刻です。来店客が戻って来たにも関わらず、従業員不足で営業日数を制限せざるを得ない状況は、デジタルツールを使った業務の効率化で解消できる可能性のある課題なんです。もちろん、何か新しいやり方に手を伸ばすのは怖いこと。ですが、本来「やりたかった」ことに向き合う時間を手に入れられる。『ホットペッパーグルメ』という集客中心のメディアだけではこうした課題を解決できずもどかしい部分もあったけれど、業務・経営支援サービスのラインナップが増えた今だからこそ、解決の糸口をご提案できるかもしれない。そのために、お客様に向き合ってお話を伺い、課題解決に向けた最適なツールを組み合わせてご提案ができるように取り組んでいます。私たち営業も、新たに開発される新サービスを学び、データ分析のスキルを身につける必要が出てきました。正直覚えることだらけで大変ですし、意外とシフト管理に時間がかかっているなど、お客様も気づいていない潜在課題を引き出してご提案する難しさもあり、四苦八苦しています。ですが、変化していく時代や求められるニーズに合わせて、サービスだけでなく、私たち営業も変わっていかなくてはという思いから頑張れています。

「Air ビジネスツールズ」の導入でできること

―いくら便利なツールだとは言っても、導入費用などで尻込みされる飲食店も多いのではないでしょうか?

内海:便利なデジタルツールの導入には金銭的負担が大きいと思われることも多いですが、なかには無料で使えるものもあるんですよ。例えば弊社が提供している『レストランボード』。予約管理や配席管理、顧客管理に集計、顧客へのメッセージ配信などの便利機能を備えています。

飲食店経営者のデジタルツール関心度図

POSレジアプリ『Airレジ』も0円で使えるものです。会計、商品管理、顧客管理から売上分析まで、お店の会計にまつわる業務をこれひとつでまかなえるので、レジ締め時間が短縮され、会計ソフトと連携すれば、経理作業の負担軽減にもつながります。また、売上・人件費・原価などのデータを集計・分析するお店の経営アシスタント『Airメイト』も0円で使えるもの。他にも、費用は発生してしまいますが、お客様ご自身に注文をしていただくオーダーシステム『Airレジオーダー』なども飲食店におすすめのデジタルツールになっています。そして、これらのツールが全て同じIDで利用できるということが「Air ビジネスツールズ」の特徴。連携して使っていただくことでより便利になっていきます。

「Air ビジネスツールズ」の一覧図

実際にこれらを導入いただいたお客様からはお喜びの声をいただいております。例えば、複数ツールを導入いただいた、東京都練馬区の『八百屋バル』様。コロナ禍における休業・時短要請などで営業が不安定になり、恒常的にスタッフを雇用することもなかなか難しい状況にありました。スタッフ数が限られているため、電話予約の対応で店舗のお客様をお待たせしてしまったり、受けた予約の配席に時間を取られたり、お客様が注文をしたいタイミングで声をかけられず受注機会をロスしていたり、レジ締めに毎日30分以上時間がかかっていたり…と一つひとつはすごく大きな問題というわけではないけれど、解決できると良さそうな課題は山積み。

しかし『レストランボード』の導入で、『ホットペッパーグルメ』からのネット予約が自動配席されるようになり、『Airレジオーダー』でお客様に自分のペースで注文してもらうことにより注文機会ロスがなくなり、『Airペイ』『Airレジ』でレジ締め業務が簡略化し…といろいろな変化が起きました。結果、客単価上昇による売上UPや業務時間、新人育成時間の短縮につながっただけでなく、出てきた視覚的なデータを基に従業員全員の目線を揃え、皆で考えるようにすることで、さらなる業務改善につなげることもできたのです。『八百屋バル』様以外にも多くの導入店舗でお喜びの声をいただいています。

「Air ビジネスツールズ」導入飲食店の声

外食の楽しさを拡げるためにできること

―今後どのように飲食業界のDXに貢献していこうと考えていますか?

内海:現在、私だけでなく、全国各地に1000名以上いる営業が、日々飲食店の課題に向き合っています。また、200名以上のカスタマーサクセス推進担当も、「Air ビジネスツールズ」などリクルートのデジタルツールを導入いただいたお客様がうまくツールを活用できるよう 、徹底的に活用伴走を行っています。

コロナ禍で「待つこと」に対する抵抗感が生活者に芽生え、事前予約や受付管理システムがより求められるようになりました。今後もデジタル化が進んでいくことは予見されます。利用にハードルが高いと思われていたご高齢の方も銀行の窓口ネット予約を難なくこなしていたりと、デジタルツールを使うことが当たり前の世界になりつつあります。私たちもDXが飲食店の生産性を高めると考えていますが、あくまでデジタルツールの導入は手段。本来の目的は、顧客と従業員の満足度向上です。飲食店に来たお客様も待たされるストレスなく美味しい食事を楽しめて、働く従業員も機械に任せるところは任せて、接客や調理に集中できる。その結果として売上・利益の向上につながれば良いと思い、ツールのご提案を行っています。

リクルートが実施したマスコミ向けの飲食業界の勉強会

これまでの『ホットペッパーグルメ』での集客に関するご提案だけではなく、飲食店オーナーの方々が本来時間をかけたかったことに集中できる状況をつくり、夢の実現まで応援できる存在でありたい。そのために、日々営業もサービスも進化しながら、サポートし続けていきたいと思っており、こういった試みを飲食業界全体に広めていくためにも、日々飲食業界に対する調査を重ね、マスコミ向けに飲食業界の現状をお伝えする勉強会なども実施しています。コロナ禍で落ち込んでしまった飲食業界に少しでも活気づいて欲しい。コロナ禍で感じにくくなっていましたが、外食って楽しいこと。これからも外食することの楽しさを拡げていけるよう、いろいろな形で外食産業の成長に貢献していけたら嬉しいです。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

内海雄太郎(うちうみ・ゆうたろう)
リクルート 飲食Division 営業1部 アーバン2グループ

大学卒業後、2009年に入社。以来、札幌や大阪、宮崎、静岡、京都など全国各地で、『ホットペッパーグルメ』の営業を担当。2021年より現部署

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