学生の視点と知恵で地方企業の持ち味を発掘!1週間の採用課題解決プロジェクトをオンラインで開催 ~後編~

2022年9月5日(月)から12日(月)にかけて開催された、「【1week】地方企業の“持ち味”を発掘!採用課題解決プロジェクト ~マチリク×HR AGENT COLLEGE×WOW! BASE~」。コロナ禍での社会体験の少なさからキャリアの軸を見つけにくい状況にある学生と、人材不足や自社の魅力の発掘・発信に悩む地方企業、双方の課題を解決すべく、リクルートの知見を生かして新たに開発した公募型採用課題解決プログラムです。 実施の背景やプログラムの全体像をお伝えした前編に続き、後編では実際のイベントの様子を詳しくレポートします。

オンライン開催により、東北から九州まで16名の学生が参加し、初日がスタート

今回参加したのは、大学2年生〜大学院2年生までの16名。文系・理系などいろいろな学部・学科の学生が集まり、1週間というプログラムながら、東北〜九州の全国から参加いただけたのは、オンライン開催ならではの魅力でもあります。参加目的も学生によってさまざまで、「地方出身のため、地方企業の持ち味を生かし発展を促すことに興味がある」「大学生活で学んだ技術や知識を大学外の課題に対して活用したい」「人材を最も深く追求してきたリクルートが地域活性化と地元企業のHRにどのように取り組むかを学びたい」「全国から集まる高い志を持った学生ともに課題解決プロジェクトに取り組みたい」といった声が上がっていました。

学生は、AチームからFチームまでの6チームに分かれ、今回ご協力をいただいた3社を2チームずつ担当しました。

  • ① イヨスイ株式会社(愛媛県宇和島市): 魚介類~船舶~水産加工等、水産に関わるさまざまなことを行う企業
  • ② 株式会社気仙沼商会(宮城県気仙沼市) :エネルギーおよびインフラの支援を行う企業
  • ③ 小豆島ヘルシーランド株式会社(香川県小豆島) :オリーブ事業および地域活性化を行う企業

各チームは2〜3名の学生とメンター(リクルートHR領域の従業員)1名で構成され、最終日までの1週間このメンバーで協力し合いながら課題を進めていきます。プログラム初日は、学生全員とリクルートメンバーの顔合わせからスタート。その後、チームごとに分かれて、お互いをよく理解し合うために事前課題で作成してきたワークシートを使ってそれぞれの自己紹介を行いました。ワークシートは、幼少期から大学にかけて自分の印象的な出来事をモチベーションの高低に合わせて記載する「モチベーショングラフ」、「得意/苦手・好き/嫌いの整理シート」、リクルートがキャリアプラン策定の際にも使用している「WILL-CAN-MUSTシート」の3つです。

「WILL-CAN-MUSTシート」

「WILL-CAN-MUSTシート」では、将来どうなりたいのか、プログラムを通じてどんな成長を得てどんな課題を克服したいのかといったことをテーマが設けられ、参加学生からは「地方企業のリアルな姿を学び、将来は地方創生に貢献できる人材に成長したい」「傾聴するだけでなく、自分の意見を積極的にチームに発信したい」といった熱い思いが語られました。

事前課題には、それぞれの担当企業に関する情報収集もあり、まずは学生自身で企業理解と魅力分析を行った上で本イベントに参加する流れとなっています。企業理解を深める力を養う研修なども実施。学生たちはビジネスパーソンがよく使う「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)「自社(Company)」の3Cフレームの活用から、HR領域社員が仕事で培った観点を元に独自に企画したワークや事例紹介など、 企業の魅力を多角的に捉えるための分析方法なども学びました。

リクルートの『マチリク』責任者からのメッセージ

また、学生から非常に反響が大きかったのが、リクルートの『マチリク』責任者からのメッセージ。地方移住への関心は高まっているものの、なかなか地方企業に人が集まらない現状の共有から、それを打開するための手段として、地方企業の魅力を言語化して世の中に発信していくことの重要性、今回参加する学生への期待などが語られました。初日のプログラム終了後も学生から多くの感想や質問が寄せられ、「地方企業の魅力発掘をする際に意識していることは?」「地方移住を決心した人のきっかけや決め手を知りたい」「地方で働きたいという学生を増やすためにはどういう要素が必要か」「地方移住を受け入れる側はどう感じているのか」といった問いに対して、一つひとつ丁寧に回答をしていました。

魅力発掘のヒアリングから最終発表まで何度も続いた、学生と企業のやりとり

プログラム2日目、3日目はチームに分かれてワークを実施。4日目の企業ヒアリングに備えて、さらなる企業情報のリサーチとヒアリング内容の精査を行いました。企業へのヒアリングは初めての経験という学生がほとんど。メンターがフォローしながら、企業の持ち味を見つけるための仮説設計・質問内容・ヒアリング方法 などをアドバイスしました。

活発に行われたメンターとのやりとり

活発に行われたメンターとのやりとり

ヒアリング当日には、担当する2チームの学生メンバーに加えて、各企業からは経営者、人事担当者、現場メンバー、実際にUIターンで入社した社員など、さまざまな方が参加してくださいました。最初の30分で企業側から会社説明を行った後、学生からの質問を実施。経営者への創業や地域への思いや目指すビジョンに関する質問から、人事担当者への新卒入社者に対する期待やサポート体制に関する質問、働く社員への入社動機や社風のよさに関する質問まで、学生ならではの視点で次々と質問が上がり、非常に盛り上がる中で2時間のヒアリングタイムが終了。その後も企業側ではチャットによって質問を受け付ける体制を整えてくれたことから、最終発表までの3日間の準備期間においても、学生と企業の間で質問と回答が飛び交い、リアルタイムでヒアリングを重ねることができました。

4日目の企業ヒアリングの様子

4日目の企業ヒアリングの様子

そして、最終発表の日。アウトプットにおける主なテーマは2つで、「地方企業の①持ち味を発掘し、②コンテンツ・プロモーションアイデアを提案」することです。1チームあたり発表時間は10分。発表後に質疑応答、全体講評、企業ごとのフィードバックが行われる流れになります。

時間のない中でもギリギリまで考え抜き、メンターとも壁打ちし、企業にも追加質問をしながら、アウトプットを作り上げたこともあり、各チームともに非常に高いレベルでの発表となりました。多くのチームでは、学生視点で捉えた企業の魅力の言語化、企業の採用課題、採用ターゲットのペルソナ(対象となる仮想の人物像のプロフィール、タイプ、趣味、価値観など細かく設定する手法)、採用コンセプト、課題解決のためのコンテンツ・PR方法を提案。採用コンセプトは、「海を越えて人とつながる あなたらしさで作る世界地図」や「島のために何かできるって最高だ」「地域を愛し、地域に愛されて100年、地方創生に新たな風を吹かせる!」など企業の魅力のつまった素敵なキャッチコピーが作られました。

最終発表

コンテンツ・PR方法は、ホームページのリニューアルやSNSでの情報発信、インターンシップに関する提案が中心でしたが、具体的な内容はチームごとにさまざま。20を超えるコンテンツ企画のアイデアを出したチーム、TikTokの台本まで書いてきたチーム、「気仙沼を愛し、気仙沼に愛される3日間」をテーマにしたインターンシップを企画して細かなタイムスケジュールまで作り上げたチーム、2週間〜1カ月かけた就農体験を提案したチーム、学生アンバサダーを活用したSNS運用を提案したチームなど、学生目線での企業の魅力の捉え方や情報発信の仕方に、企業担当者からも驚きや感動の声が上がっていました。

発表後は、全体講評と企業からの詳細な講評を経て、学生とリクルートメンバーで事後研修を実施。成果に向き合った1週間の自分、そしてチームの仲間へのProud(誇り)とSorry(期待)を共有し合い、メンターからのフィードバックを受けて、1週間に及ぶ長期プログラムは終了となりました。

しかし、これで終わらなかったのが、今回のプログラム。学生のアイデアでの中で、よいものがあれば実際に企業に活用していただくことを目指していましたが、実際に香川県小豆島の企業では、学生チームの提案を実行フェーズに移すプロジェクトを立ち上げることになりました。プロジェクト推進ノウハウ、スケジュール管理、課題調整力など、社会で絶対に役立つ生きた学びを得てもらうことを目的に、自由参加で学生にも参加してもらうプロジェクトになるとのこと。学生のアイデアが地方企業の採用力向上に生かされることを期待しています。

学生、地方企業、リクルート。それぞれが得た価値や学びとは

今回参加した学生への実施後アンケートでは、90%の学生が満足したと回答しています。では、具体的にどのような価値や学びを得たのでしょうか?参加した学生、企業、リクルートの担当者に感想を聞いてみました。

オンラインで行われたイベントの様子

オンラインで行われたイベントの様子

<学生>

  • 「新規事業企画や与えられた課題ではなく、企業様の本当のリアルな課題に向き合えた初めての経験となった。当事者意識を持って課題を解決することが、自分にとってやりがいになると感じることができました」
  • 「企業研究や分析法を学べて、実践的な知識を得ることができました」 「やり切れたことが何よりも嬉しい。ここまで頑張った成功体験がなかったけれど、今回は自分で自分を褒めたいです」
  • 「首都圏での就職しか考えていなかったけれど、地方企業の課題解決を通じて、地方にも良い企業があると認識できたことが収穫です」
  • 「チームでリアルな課題に向き合うという経験が有意義でした。普段の生活にはない充実した体験ができ、自分の強み・弱みの再認識や発見ができました」
  • 「日本の地方の大きな可能性を学ぶことができた。今後も実際に社会実装されるような地域貢献や環境問題解決にチャレンジしたいと思いました」

<企業>

  • 「採用活動でやらないといけないけどできていないことも多いので、聞いていて耳が痛くなることもあった。今回のプログラムで、魅力的な実行力のある施策まで落とし込んだ提案をもらったので、もっと学生目線を持って取り組んでいきたい」
  • 「提案の内容を聞きながら、まるでずっと前から一緒に働いているかと思うくらい、自社のことを理解してくれていて驚いた。学生さんたちは短い時間で、しかもオンラインという環境下でここまでやったことは本当に大変だったと思う」
  • 「改めて産業が地域と関わり合いながら発展してきた地域密着企業であること、こうした地域のよさを採用活動に生かせていないことを実感した。『この企業で働いてみたい』だけでなく、『この地域に住んでみたい』と思ってもらえる情報発信をしたい」
  • 「ヒアリングの場で自社の社員が学生たちの質問に答えている様子を見て、彼らが何を喜びに何を大事に働いているのかを、社長や人事担当者が知ることができた。入社後にあまりこういった深い話をしてこなかったので、もっと社員の思いを知りたいし、採用にも力を発揮してもらえるのではないかと感じている」

<リクルート>

  • 「オンラインでどう実現するのか、『マチリク』としても難易度の高い取り組みだった。しかし実際にやってみて、地方企業の事業や社員の思いに触れることで、学生たちの顔色が変わっていく様子を目の当たりにできた。それと学生たちが『まずはこの企業を好きにならないとダメだよね』と会話しているのをみて、改めて私たち自身が企業を深く理解して魅力を伝えていく重要性を感じた」(『マチリク』担当者)
  • 「アイデア、吸収力、違和感...学生視点のすごさを感じ、刺激をもらった。企業と人との出会いの可能性は無限大。普段の仕事でも、私たちが頑張ることでもっと紡げる出会いがあると改めて思いました」(メンター)
  • 「最終発表では、学生×地方企業様×リクルートallがタッグを組んだからこその課題解決提案だったと感激しました。学生さんからは、リアルな課題に向き合うやりがいや難しさを存分に感じられたり、自分の得意/好きに気づけたという声や、地方企業への就職も選択肢に入ったという声もあり、引き続きこのようなプログラムを企画していきたい」(WOW! BASE)

コラボレーションによって生まれた価値を、より多くの学生と地方企業に届けたい

今回のイベントは、『マチリク』×『HR AGENT COLLEGE』×『WOW! BASE』がコラボレーションし、それぞれのWILLと強みを発揮することで生まれた、リクルート初の採用課題解決プロジェクト。単体の事業だけでは難しい取り組みも協働することによって可能になることが証明されました。また「学生×地方企業×リクルート」という3者の連携も重要テーマの一つに。参加した学生と地方企業からは、選び選ばれる採用の場ではなく、ラフに意見を交換できる場としても価値を感じたという声が上がっています。今回のイベントを型化することで、今後はより多くの学生や全国の地方企業へ拡げていきたいと考えています。リクルートでは、これからも学生と地方企業の抱える課題や、さらには日本が抱える地方創生の課題の解決に向けて積極的に取り組みを続けてまいります。

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