電帳法対応が2024年1月から義務化。『Airインボイス』がストレスフリーな請求書管理にこだわる理由

電帳法対応が2024年1月から義務化。『Airインボイス』がストレスフリーな請求書管理にこだわる理由

中小企業・個人事業主にとって、請求書管理には課題が多い。というのも、改正された電子帳簿保存法(以降、電帳法)のもと、2024年1月以降、中小企業・個人事業主に対しても電子取引書類のデータ保存が義務化されるからだ。また、紙の請求書などの電子化保存(通称・スキャナ保存)は任意ではあるものの、紙を電子化する場合は7営業日以内に入力するなどの要件も存在している。

リクルートは2022年7月に振込も保管もラクになる請求書支払アプリ『Airインボイス』をリリースし、電子取引書類の保管に加えて、スキャナ保存には「スマホでの写真撮影」で対応できる機能などを提供している。23年8月から電帳法に対応できる新機能もリリースした。『Airインボイス』を立ち上げた浅野恭兵に話を聞くと、「お店のバックヤードで見た紙の請求書の山」がきっかけだったという。

『Airインボイス』とは? 電帳法に対応した保管・検索機能も充実

―2024年1月から中小企業も電帳法への対応の義務化が始まりますね。『Airインボイス』には電帳法に対応した機能があると聞きましたが、そもそもどのようなサービスでしょうか?

浅野:『Airインボイス』ではスマホのカメラで請求書を撮影すると、金額や振込先など必要な情報を自動で読み込んでデータ化し、アプリ上で指定日に複数の振込み(※)をまとめて予約・実行することができます。PDFなど電子取引の保管だけでなく、紙の請求書をデータ化して保存する電帳法の「スキャナ保存」にも対応することが出来ます。

電帳法に対応した保管・検索もできるように、撮影・アップロード・削除などの操作履歴を記録・表示する「アップロード履歴表示」、請求日・取引金額・取引先名での検索が可能になる「検索」を新機能として追加しました。これらを全てスマホで完結できるのがこだわったポイントのひとつです。

※ 振込機能についてはSBペイメントサービス株式会社との別途の契約締結が必要

『Airインボイス』で請求書をデータ化するために撮影する写真
請求書をスマホで撮影し『Airインボイス』でデータ化する。電子取引データ保存およびスキャナ保存の両方に対応しているため、全ての請求書を一元管理可能

『Airインボイス』立ち上げの理由。紙の請求書の管理の課題とは?

―振込みまでスマホで完結できるんですね! そもそも何に課題を感じて『Airインボイス』を立ち上げようと思ったのですか?

浅野:話せば長いのですが、2020年の春に請求書にまつわる法改正の動きがあることを知り、「これは中小企業や個人事業主の方々の負担は大きいだろうな」と思ったことがきっかけです。

以前『ホットペッパービューティー』というプロダクトに関わっていた時、美容室やネイルサロンなどによくお邪魔していたのですが、バックヤードに紙の請求書が山になっている光景を度々目にし、紙の請求書の管理は大変そうだという印象が残っていたんです。そこでどのような課題があるのか具体的に知ろうと思い、お店を営む方にご協力いただいて、経理業務を含む店舗運営を直接お店にお邪魔して何度も拝見しました。

インタビューを受けるリクルート従業員・浅野恭兵
『Airインボイス』では請求書管理にまつわる煩わしさを極力なくしたいと考えている

浅野:ご協力いただいたのは都内でおにぎり店を営むA氏の店舗です。お話を伺うと、店舗やご自宅などにさまざまなタイミングで届く請求書を、一旦カバンに入れ、バックヤードの引き出しのクリアファイルで保管。月末の終業後にパソコンを開き、請求書を一枚ずつ広げてネット銀行で振込み作業をされていました。日中に銀行に行きATMで10件ほど支払いをするケースもあります。それが終わったら税理士さんに税務のための書類を郵送していらっしゃいました。

ひとつひとつは短時間の作業ですが、それが積み重なるとかなり大変だというのが実感です。加えて、他のお店でも起きていたトラブルなのですが、請求書を紛失してしまうケースもありました。その場合、取引先に急いでPDFを再送してもらい、振り込んだりすることもあるそうです。

―請求書管理の煩雑さだけでなく、お店の方のストレスも相当なものに思えます。

浅野:そうなんです。「支払い漏れ」はお店の信用に関わるので、大きなプレッシャーも伴います。私も経費精算などの事務作業が決して得意なほうではないので、共感することも多く、その煩わしさを極限までなくしたいと思いました。そういう経緯もあり、『Airインボイス』には請求書に記載された支払期限を読み取って、支払い漏れを防止するリマインド機能を付けています。「忘れてしまうかもしれない」というストレスを減らすように作っています。

『Airインボイス』のサービスフロー図
『Airインボイス』では、まとめて振込み予約ができ、指定日に振込みを自動で実行できる。(振込機能についてはSBペイメントサービス株式会社との別途の契約締結が必要)

スマホ完結のUXとシンプルなUIで請求書管理の課題を解決

―浅野さんは100回を超えるヒアリングや現場訪問をしていると伺いましたが、「振込までスマホで完結できる」点にこだわったのも、ユーザー観察の結果によるものでしょうか?

浅野:はい、一番使いやすいUXを考えて、「スマホで完結できること」「アプリ上で振込みまでできること」にこだわりました。店舗で店長さんの業務を拝見していると、調理、接客、育成、新商品開発、発注などいろんな業務があり大変お忙しいんです。ちょっとした隙間時間でカンタンに請求書を処理し支払いまでできるようにしたい、というのが発想の起点です。その際、スタッフの人数が少ないお店だと、来客もあるなかバックヤードに戻ってパソコンを開くことは難しいので、スマホアプリが良いのではないかと考えました。

また、スキャナ保存の法的要件である「7営業日以内に入力」を可能にするためには、バラバラなタイミングで届く請求書を、届いた時に簡単に処理できるようにしたい。できるだけ手軽にと考えて、スマホでのカメラ撮影でスキャンする仕様にしています。

β版を作ってみると「スマホでできるなんて最高ですね。」と実証実験にご協力いただいた方からありがたいお声をいただきました。接客の合間にレジにいながら、またタクシーや新幹線で移動しながら、隙間時間に請求書の振込みができるようになったことに価値を感じていただきまして、現在のサービス化に至っています。

―『Airインボイス』のホーム画面のUIはとてもシンプルですね。こだわりはどのようなところでしょうか?

『Airインボイス』のホーム画面
『Airインボイス』のホーム画面。現在のステータスがすぐ分かるようになっている。金融業界特有の用語なども極力使用せず、迷わないUIを心掛けた

浅野:直感的に使える分かりやすさには特にこだわりました。ユーザーの皆さんはお忙しいので、迷わず次のアクションが分かるようにしたいと思い、極力シンプルで用語も分かりやすいホーム画面にしています。

サービスを作る過程では、ユーザーの皆さんがβ版やモックアップ版を実際に利用いただく様子を横で見ながら、手がふと止まったところで「何に戸惑いましたか?」とお伺いしてみる。そういう検証を何度も繰り返し、さまざまな課題を解消してUI・UXをチューニングしていきました。

仕入れ先の多様化、税務のDXなど、電帳法対応以外にもさまざまな効果が

―実際にサービスを利用されるお客様はどのような点にメリットを感じてくださっているのですか?

インタビューを受ける香川県高松市 の青果店「sanukis」店主
『Airインボイス』を活用中の「sanukis」。地元・香川県の農家から野菜を直接買い取り、販売まで行うこだわりの青果店

浅野:ありがたいことに、請求書管理に関する手間と時間が減り、支払い忘れのプレッシャーから解放された、というお声をいただいています。例えば香川県の青果店「sanukis」様からはこんなお声をいただきました。「常時取引している農家は50軒近くあり、農家さんへの振込みにネットバンキングで2時間はかかるのが当たり前でしたが、『Airインボイス』導入後、請求書が来たらすぐに撮影をし、振込日の設定をするように変化。まとまった時間をとる必要がなくなり、精神的なプレッシャーからも解放されました。」

このようにお客様によっては紙の請求書を郵送やFAXで受け取り、ATMで現金振込をするという一連の時間を80%削減できたと実感している方もいらっしゃいます。

副次的なメリットとして別のお客様から伺っているのは、「今までは仕入れ先を増やすと請求書処理が煩雑になるので、仕入れたい材料があっても一旦あきらめ、既存の仕入れ先から購入していました。請求書処理が楽になるなら、こだわった食材を多様な仕入れ先から購入でき、本当にいいものを商品に使えます。」と商品の価値をさらに高める店舗経営を開始されるケースも伺っています。

―他にも税務の負担軽減・ペーパレス化にもなると伺いましたが、どういった効果があるのでしょうか?

インタビューを受ける兵庫県西脇市「labo verde」のオーナー
「labo verde」。兵庫県西脇市のお菓子や軽食のテイクアウト専門店。ふるさと納税の返礼品にも選ばれている。会計をサポートしてくれている税理士さんへの書類送付がなくなった点も繁忙期には特に役立ったそう

浅野:『Airインボイス』では請求書や振込履歴をクラウドで共有できる「会計・税理士事務所へのデータ共有機能」を提供しています。URLを共有するだけなので、大量の紙の郵送もなくなりますし、税理士さんからも業務効率化・ペーパレス化にメリットを感じたという声もいただいています。

兵庫県の「labo verde」様ではこうご評価いただきました。「請求書の処理には月3、4回、車で10分のATMまで行って振込みをし、1回あたり1時間ほどかかっていましたが、『Airインボイス』を使うと全ての工程が数十分で終わるようになりました。会計をサポートしてくれている税理士さんへの書類送付がなくなった点も繁忙期には特に助かりました。『Airインボイス』で仕入原価が一覧化・可視化されたので、仕入れの無駄をなくし、原価高騰への柔軟な対応ができるようになり、振り返りや今後のお店へのビジョンづくりをする時間も増え、経営者として成長ができました。」

―これからはどのように『Airインボイス』を通じて人手不足の中小企業・個人事業主の皆さんや社会に貢献したいと考えていますか?

浅野:労働人口は減少していくなか、日本が現状の実質GDPを維持するには、2040年までに現状の労働生産性を15%引き上げる必要があります。中小企業が企業全体の99.7%を占める日本において、個人事業主の方や中小企業の皆さんの生産性向上に貢献することは社会的意義が大きいと捉えています。

そして、私は生活する消費者の皆さんが、多様なお店を「選べること」が大事だと思い、選択肢を未来に残すお手伝いがしたいと思っています。チェーン店もあれば、その地域ならではの多様な個人商店もある。自分の住む街や旅先で、その時のニーズに応じたチョイスができることは、人々の人生を彩り、社会の豊かさにもつながると思うからです。

経営がもっと楽になり、これから起業しようとする人が本業に集中できる。そういう状態を当たり前にすることを目指しながら、人的投資が難しい中小企業や個人事業主に対して、これからもお店の存続のサポートになるようなサービスを創り、機能を磨いていたいと思います。

『Airインボイス』を立ち上げたリクルート従業員・浅野恭兵

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

浅野恭兵(あさの・きょうへい)
株式会社リクルート SaaS領域プロダクトマネジメント室 Airプロダクトマネジメントユニット Airプロダクトマネジメント1部 Airプロダクトマネジメント2グループ

SIerで大手チェーン店向けのシステム開発のプロジェクトマネジメントやアプリのディレクション経験後、2017年リクルートに入社。『SALON BOARD』のディレクター、『ホットペッパービューティー』のプロジェクトマネジャー・ディレクターなどを経験。2020年より現部署に異動し、『Airインボイス』のサービス担当者・プロダクトマネジャーに

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