ミドルシニア 40代後半~60代前半の働く価値観調査

Vol.2:仕事や会社に前向きだと、暮らしの満足度も高くなる【40代・50代・60代の仕事観】

Vol.2:仕事や会社に前向きだと、暮らしの満足度も高くなる【40代・50代・60代の仕事観】

「仕事をやめたいわけではないけれど、キャリアについてはあまり考えていない」。前回の記事でご紹介した第1回調査では、40代・50代・60代にとっての仕事に対する価値観が明らかになりました。

今の会社で働き続けるか、外に出るか。それともある年齢を境に引退するか。実際にどんな道を歩むかはもちろん個人の自由。けれど、「人から与えられた道」「なんとなく選んだ道」「自分で選んだ道」...と、自らの決断か否かや、その選び方によっては人生の充実度が異なるのではないでしょうか。

そこで、私たちが実施した第2回調査では、日本型雇用と言われる新卒一括採用や終身雇用の枠組みが残る環境を長く経験してきた"大企業のミドル・シニア層"にフォーカス。定年制度や働き方の大変革が起きようとしている今、仕事や会社に対する本音を探りました。今回はこの調査結果の中から、人生の折り返し地点にいるミドル・シニア層の人生の満足度にスポットを当て、キャリア意識による違いを紹介していきます。

※詳しい調査の背景・対象ついては、「調査にあたって」をご覧ください

キャリア意識は、プライベートやワークライフバランスにも影響する

第2回調査では、第1回の対象者をキャリア意識の程度によって「考えていない層」「自信なし層」「将来不安層」「展望層」「行動層」に分類したうち、「考えていない層」を除いた4カテゴリーの実態を調査しています。

キャリア意識は、プライベートやワークライフバランスにも影響する

まず注目したいのは、キャリア意識と人生の満足度との関係性。私たちは、仕事とプライベートを織り交ぜた5つの観点(勤め先・仕事内容・ワークライフバランス・これまでのキャリア・生活全般)で満足度を調査しました。すると、図1のように、「自信なし層」がすべての項目で平均を大きく下回っており、「将来不安層」と「展望層」「行動層」の間には一定の乖離が見られます。

キャリア意識別の比較なので、キャリアに関するスコアで差が大きいのは自然ですし、「勤め先」「仕事内容」の満足度に差が生じるのもある種当然。しかし、「ワークライフバランス」「生活全般」に関しても差が大きいという結果は、意外です。キャリアに意欲的かどうか、戦略的に行動をしているかどうかは、仕事だけでなく人生の充実度にも影響していると言えます。

(図1:満足度【キャリア意識別】)
「40代後半〜60代前半の働く価値観調査」満足度【キャリア意識別】

※「満足している」「やや満足している」「あまり満足していない」「満足していない」の4選択肢のうち、「満足している」「やや満足している」の回答を合算

年齢が上がるほどアクティブだが、「将来不安」はミドル・シニア世代共通の悩みに

次に、各キャリア意識のカテゴリーにおける年齢層?の内訳について。「自信なし層」ほどミドル・シニアの中でも低い年齢層が占める割合が多く、キャリアに前向きでアクティブな層ほど、60歳以上が占める割合が多くなっています。これは、60歳を超えると定年退職を経験、もしくは間近に迫っている人が多く、なかには早期退職制度をつかってセカンドキャリアに挑戦するなど、自ら決断をした経験が必然的に多くなることも要因の一つでしょう。 その反面、「将来不安層」に目を向けてみると、各年齢層がほぼ同じ割合で存在するのも特徴。言い換えるなら、「自分の経験・キャリアにはそれなりに自信があるが、漠然と未来に不安を感じキャリアに前向きになれない」と次のステップに進めない人がどの年齢層にもいることが分かります。

(図2:年齢内訳【キャリア意識別】)
「40代後半〜60代前半の働く価値観調査」年齢内訳【キャリア意識別】

不安層の本音「自分の能力は尊重されていないが、今の職場で働き続けるしかない」

また、図3のように、キャリアに対する価値観も調査。すると、「展望層」「行動層」のようなアクティブに行動を起こしている層ほど、「私のスキルはどこの勤め先でも活かせる」「キャリアは自分が決める」と自信を持っており、逆に言えばキャリアに不安な層ほど「自分のスキルが活かせる場所は今の環境に限定的で、キャリアは自ら切り拓くものではなく身を置く環境・状況で決まるもの」だという考え方をしていることが分かります。

会社との心理的一体感(エンゲージメント)について調査した結果においても、「展望層」「行動層」は現職で自分の能力が発揮できていると回答している割合が約6割いるのに対して、不安な層ほど「スキルと才能が尊重されず、活かされていない」と回答しています。 このふたつの傾向をまとめると、「今の会社は自分が輝ける場所とまでは言えないが、この環境でしか働けないだろう」と感じている人が多いのが「自信なし層」や「将来不安層」の本音だということでしょう。

(図3:働く価値観・エンゲージメント×キャリア意識)
「40代後半〜60代前半の働く価値観調査」働く価値観・エンゲージメント×キャリア意識

「40代後半〜60代前半の働く価値観調査」働く価値観・エンゲージメント×キャリア意識

アクティブに行動するようになるには、3つの壁を突破せよ!

このように、将来を見据えて行動を起こし、主体的にキャリアの決断をしている人ほど仕事はもちろんプライベートの満足度も高い傾向にあり、自分のキャリアに自信がなく受動的な考え方をしている人であっても今の仕事や会社に満足しているとは限らない様子。では、どうすれば多くの人たちがポジティブに行動できるようになるのでしょうか。

私たちは、調査結果の傾向から、3つの壁がミドル・シニア層のキャリアに対する前向きな意欲や行動を阻害していることが見えてきました。第1の壁は、自分が仕事で培った能力に自信が持てない「自信の壁」。第2の壁は今とは違う環境でも活躍できるイメージが描けない「展望の壁」。そして最終関門は実際に動くまでの意義が見つからない「行動の壁」(図4)。

(図4:キャリア意欲・行動を阻害する3つの壁)
キャリア意欲・行動を阻害する3つの壁

それぞれの壁をどうすれば突破できるのか。次回以降の記事では、調査結果に加えて実際の40代後半〜60代前半の事例や、ミドル・シニアのキャリアに詳しい専門家のアドバイスも交えてご紹介します。前向きにキャリアを見つめなおし、モチベーションを上げて壁を乗り越えて行く秘訣をお伝えいたします。

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