多様な働き方

150人の執筆者と一冊の本を作り上げた編集者に学ぶ、協創型ものづくりに必要な視点

2021年11月15日 転載元:Meet Recruit

150人の執筆者と一冊の本を作り上げた編集者に学ぶ、協創型ものづくりに必要な視点

執筆に参加した150人のうち、ほとんどが書籍制作未経験。『東京の生活史』を手掛けた、筑摩書房編集部 柴山浩紀さんの体験から、「一般参加型商品・サービス開発」成功のヒントを探る

150人が語り、150人が聞く。前代未聞の形式でつくられた書籍が2021年9月に刊行された。その名も『東京の生活史』。聞き手は広く一般に募集された中から選ばれており、その多くはインタビューや執筆を生業としている人ではない。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が参加し、東京に生きる人々の話をフラットに並べたこの本は、まるで「#東京」で無作為にまとめられたSNSのタイムラインを眺めているようでもある。

この一大プロジェクトを担当したのが、筑摩書房の編集者、柴山浩紀さんだ。「一冊の本をつくる」という意味では、通常の制作プロセスよりも遥かに手間がかかるこの仕事を、柴山さんはどのような想いで受け止め、完成に導いたのだろうか。一般のビジネスシーンにおいても、ユーザー参加型商品開発や他社との協働プロジェクトなどが増えつつある今、多くの人を巻き込む仕事の体現者である柴山さんに、そのヒントを聞いた。

業界の常識や当たり前が通用しない難しさ。その先にある価値

『東京の生活史』は、社会学者であり作家の岸政彦さんの企画発案で生まれたインタビュー集。東京に生きる150人の語りを一冊に収録しており、1216ページ、150万字というかつてないボリュームも話題だ。以前から岸さんと親交があった柴山さんは、この原案となる構想を3年ほど前には知っていたという。しかし、まさか自分が担当するとは思っていなかった。

「岸さんがTwitterでつぶやいているのを見たんです。読み物として興味はあったけれど、作るとなれば相当苦労するのも想像できました。他の出版社から手が挙がるだろうとも思ったし、自分がやるとは考えてもいませんでした。それがある日、岸さんからメッセンジャーで相談されて。どう転ぶか未知数だったのですが、岸さんのお誘いを断りたくなかったし、『具体的なことは進めながら考えよう』くらいの感覚でスタートしました」

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