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キャリア自律は日々の仕事や人生の発達と影響し合う

キャリア

2022年02月21日 転載元:リクルートマネジメントソリューションズ

キャリア自律は日々の仕事や人生の発達と影響し合う

「社員がキャリア自律をすると、会社を辞めてしまうのではないか?」。そうした懸念を抱く人事の方が多いのではないだろうか。成人期の職業キャリア発達研究の第一人者・筑波大学教授 岡田昌毅氏に、研究成果と、ご自身の経験も踏まえたキャリア自律に対する考えについて詳しく伺った。

個人がキャリア自律をすると会社への愛着が高まる

私自身が以前、企業の人事部に勤めていましたので、人事の皆さんが「社員がキャリア自律をすると、会社を辞めてしまうのではないか?」という気持ちになることはよく理解できます。

私は2009年、当時日本電気の人事部に所属していた堀内泰利先生と共同で「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」*を研究したのですが、堀内先生もそのとき、まさに当事者として、同様の問題意識をもっていました。

その研究結果を一言でまとめると、「社員がキャリア自律をすると、会社への愛着が高まる可能性が高い」という結論になりました。もちろん全員がそうとは限りませんが、キャリア自律した個人は会社を辞めるどころか、むしろ組織を一層好きになることが明らかになったのです。

詳しく説明すると、キャリア自律は、仕事のやりがいや充実感、自己のキャリアに対する肯定的評価につながり、今後のキャリアの見通しを高めて「キャリア充実感」を促進します。そのキャリア充実感が、組織のために進んで貢献しようとする「情緒的コミットメント」を高めるのです。

一方で、キャリア自律が進むと、辞めれば失うものが大きいので組織に残る「功利的コミットメント」が下がることも分かりました。

つまり、私たちの研究の知見では、社員のキャリア自律を高めると、仕事に一層の充実感を覚え、組織や仲間のことをもっと好きになる社員が増えて、反対に打算的に働く社員は減る、というわけです。キャリア自律を高める施策を打つと、優れた社員が多く辞めてしまうのではないか、という懸念は、実はさほど必要ないものかもしれません。

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