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【フランスの働くを考える】Vol.4 週休3日制を導入するフランス企業の取り組み事例

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2023年09月19日 転載元:リクルート ワークス研究所

【フランスの働くを考える】Vol.4 週休3日制を導入するフランス企業の取り組み事例

イントロダクション

フランスで週休1⽇制(⽇曜休⽇)が全国で導⼊されたのは1906年である。その30年後の1936 年に現在の週休2⽇制(⼟⽇休⽇)が導⼊された。2019年に実施された調査では、84%のフランス人が週休3日制の導入に賛成しているとし(※1)、制度に対する議論がますます活発となっている。仏政府は現在、完全雇用の達成を目指す法案の骨子を準備中であるが(※2)、この法案の柱の一つに週休3日制の試験導入が組み込まれることが予定されており、一連の動きからも制度が全国的に導入される日が遠くないことがうかがえる。

こうして政府がやっと重い腰を上げたなか、すでに400以上のフランス企業が法制化を待たずに動き出している。賃下げなし・労働時間延長なしに労働生産性を改善することで週休3日制を導入する「フレンチ・スタンダード」は、試験導入した英国をはじめ、世界の様々な国や企業が注目している。今回のコラムでは、実際に導入した企業の例を検証する


週休3⽇制のパイオニア

資材リサイクルのYprema(※3)は1997年に減給を伴わない週休3⽇制を導⼊した。以降25年にわたり制度を維持し続けている。現在は、週30時間労働へとさらなる短縮を試みており、⾃他共に認める時短のパイオニアである。

Ypremaは、まず⾁体的に⼀番過酷な作業を行う現場の⼯員から導入し、週35時間労働を週4⽇に振り分けた。⼯員はシフト制で働き、3⽇の休⽇は基本的に固定にしている。オフィスの社員は各部署で最低2⼈(部署によっては3⼈)が稼働できるようにシフトし、3⽇の休⽇は各部署内で業務に差し⽀えないように話し合いをして決定する。

Ypremaでは、週休3⽇制が導⼊されてから「Polyvalence(複数の技能を有すること)」という考えが浸透した。例えば、⼈事部では通常は、給料計算担当の1名、⼈事・総務担当が1名、労務関係1名の3⼈体制であるが、1名が休みの時は他の2名が仕事を代替できるように、スキルを向上させる必要があり徹底して学ばせた。専⾨以外のスキルを得た社員は、これをきっかけにキャリアアップのための研修を受け、管理職ポストに就任するというケースが増えた。

社内では上昇機運が広まり、世代間のスキル伝達においても大きな効果がみられた。ターンオーバー制を全ての業種で行った結果、導⼊から7年後の2005年には、週の労働時間を短縮したにもかかわらず、機械の稼働時間は以前の39時間から44時間へと増加することができた。これは1年あたり1カ⽉分の稼働量に匹敵する、大きな上昇となった。なお、ビジネス・ケイパビリティも40%上昇しているという。

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