多様な働き方

少数精鋭の社員を「店長育成プログラム」で早期戦力化し、評価と連動 Vol.1物語コーポレーション 前編(社員編)

企業事例

2024年03月13日 転載元:リクルート ワークス研究所

少数精鋭の社員を「店長育成プログラム」で早期戦力化し、評価と連動  Vol.1物語コーポレーション 前編(社員編)

物価の高騰や人手不足を背景に、これまでになく賃金上昇の要請が高まるなか、パート・アルバイトを含めて多数の従業員を抱える外食チェーン企業はどのように人材を採用、育成しているのか。今回は『焼肉きんぐ』の快進撃で注目を浴びる物語コーポレーションの取り組みを前・後編の2回にわたり紹介する。前編では同社の人財開発を統括する横浜任氏に、おもに社員の採用、定着について聞いた。

役職手当を重視し、キャリアアップにより給与が上がる仕組みを構築

郊外を中心に全国で出店を拡大する『焼肉きんぐ』は、今、外食業界で熱視線を浴びるブランドの1つである。客が座ったままオーダーする食べ放題のスタイルを武器に、この10年で売上倍増、店舗数は2007年の1号店以降、右肩上がり。経営する物語コーポレーションは他に『丸源ラーメン』をはじめ多数の業態を展開し、総店舗数は海外・FC含めて675店舗(23年8月末)に上る。23年6月期の連結経常利益は2期連続で過去最高益を更新、来期も上回る見通しと、好調を維持している。

正社員の数は23年6月末で1,401名。パートナー(同社のパート・アルバイトの呼び名)が2万6,217名だから総数の5%程度になる。「近年は、少数精鋭で店舗運営ができるよう社員比率を下げる方向にはありますが、毎年の採用目標数は十分に達成できています」と横浜氏は語る。外食産業にあって同社がユニークなのは、早くから「理念採用」を行ってきたことで、「基本は“個人の成長を重視する”といった、当社の理念に共感していただくことが大前提です」と横浜氏。「若者の価値観が大きく変わり、物欲などより自分がどうありたいか、あるいは社会にどう貢献するか、などに重きを置く傾向が強くなっていると感じています。当社の理念や、それに基づく『ダイバーシティ&インクルージョン宣言』は、採用における差別化の1つになっていると感じています」(横浜氏)

だが最近は、大手の外食企業も理念やパーパスを打ち出すようになったため、「少し戦いにくくなった感はあります」と率直に語る。もともと理念採用といっても決して給与水準が低いわけではなく、同業他社とのバランスを見て設定してきた。そのうえで一律のベースアップよりも、個人のキャリアアップにより給与が上がる体制づくりに注力してきたが、このところはその仕組みにさらに磨きをかけており、「評価の公正性や報酬への連動性をかなり見直して高めてきましたので、個人で見ると平均以上に昇給しています」と横浜氏。3か月ごとの目標設定や評価に加え、半年ごとに加算・減算も行っている。

さらに数年前から定期昇給を廃止し、役職手当にウエイトを置くようになった。「一律で2,000~3,000円程度上がるよりも、成果を出した人が1万円上がるほうがモチベーションにつながるだろうと。成果を出している社員の役職を上げて給与を上げよう、という方針を強化しています」(横浜氏)

社員のキャリアパスは現在、店舗社員からまず店長(副店長の場合もあり)に。その先はエリアマネジャーからブロック長、あるいは本社スタッフにと選択肢が広がるが、店長を経験するのが前提である。そのため到達目標を細分化し、順調にクリアすれば18か月で店長になれるプログラムを用意している。「以前は店長になるのに平均して3年ほどかかりましたが、プログラムの定着・進化により、予定通り18か月で店長に昇格する人が増えました。もちろんそれより早い人もいます。極端に言うと、短期間で店長になれば、役職手当(店長給)がついて入社1年目でも年収500万円超えが可能。成長の証しを報酬に求める人には、大きなモチベーションになっています」(横浜氏)

ピックアップ特集