多様な働き方

「そもそも仕事はつらいもの」観を正面から考える 【ワークス1万人調査からみる しごととくらしの論点】

調査レポートキャリア

2024年05月16日 転載元:リクルート ワークス研究所

「そもそも仕事はつらいもの」観を正面から考える 【ワークス1万人調査からみる しごととくらしの論点】

「ワークス1万人調査」は20歳から69歳までの就業経験のある人全てを母集団としたライフキャリアに関する調査である。このコラムシリーズでは、この「ワークス1万人調査」(※1)を用いて、仕事と生活のあり方や課題、よりよいライフキャリアのためのポイントについて、各研究員の視点から掘り下げてきた。
今回は、これまでリクルートワークス研究所でも、様々なキャリア研究でも正面から扱うことが少なかったテーマである「そもそも仕事はつらいもので、楽しもうとするのはムダだ」という考え方について、調査から判明した結果を紹介する。

「反労働観」

ワークス1万人調査では、ライフキャリアについて幅広い考え方を捉える目的で、以下のような1つの質問を設けていた。
「仕事とはそもそもつらいものであり、そこに楽しさを見出すことは困難だ」

当該設問に対しての全回答者の回答結果は図表1のとおりだった。「そう思う」が7.5%、「どちらかといえばそう思う」が23.7%、「どちらでもない」が37.7%、「どちらかといえばそう思わない」が22.1%、「そう思わない」が9.0%。そう思う・どちらかといえばそう思うの合計は31.2%、どちらでもないが37.7%、そう思わない・どちらかといえばそう思わないの合計が31.1%であり、「そう思う」計と「そう思わない」計が拮抗した結果となっている。

本稿は、この「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた者に焦点を当てる。「仕事とはそもそもつらいものであり、そこに楽しさを見出すことは困難だ」とする方々だ。米国労働市場において2022年に注目された言葉に「静かな退職(※2)」がある。この背景にあると指摘された労働・仕事観に、「アンチワーク」(anti-work)があった。BBCでは、アンチワークが思想的背景とする1人の哲学者の言葉を引用しつつ以下のように整理している(※3)。

「『多くの働き手が仕事にうんざりしている。単なる本能的な仕事の拒否ではなく、意識的に拒否する動きかもしれない』とブラック氏は書いており、人々は必要な仕事だけをし、残った時間を家族や自分の情熱に捧げるべきだと提言している」(※4)

各種のキャリア理論や企業で唱えられている“キャリア自律”、そして内発的動機づけや“will”の重要性、こういった議論をする前に、実は労働や仕事に対する反感や諦念といった気持ちが存在していることを正面から受け止めることが重要なのではないか。私たちリクルートワークス研究所の研究員やこのページを読んでくださっている「キャリア形成に関心がある人」には想像もつかないような労働観の社会人が存在するのだ、という点を冒頭で申し上げておきたい。 いずれにせよ、こうした論が国際的にも広く取り上げられていたことを前提に、今回の設問が「労働を意識的に否定し、ただ生きるために必要最低限な仕事だけをしよう」という認識を捉えたものとして、「反労働観」と呼称する。

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