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デジタルハリウッドSTUDIO福岡のケース-育児中、在宅、転勤族でも「プロ」目指す 「ママグロースハッカーズ」の新しい挑戦

2017.04.05

女性の社会進出は重要課題とされていますが、最新の男女共同参画白書(平成28年版)によると、第一子の出産を機に約6割の女性が離職しています。一方で「ママ」の目線は、企業やサービスの改善に大きなポテンシャルを持っています。事実、家計を握っているママたちが、自分たちがまさにターゲットになるWebサイトを「ママ」の目線で改善し、売上が大幅に伸びた例が少しずつ生まれています。

そのサイト改善に大きな役割を果たしているのが、「グロースハッカー」。 Webサイトの効果や収益力を高めるために、データ分析やノウハウをもとにデザインを改善し、 企業やサービスを急成長させる仕掛け「グロースハック」を専門に行う人たちです。

では「ママ」のポテンシャルと、「グロースハッカー」の技術が一緒に活用されたら...。そうした取り組みが、実際に九州・福岡で行われています。その名も「Growth Hack for Women プロジェクト」。福岡市の創業特区プロジェクトとして、デジタルハリウッドSTUDIO福岡、Kaizen Platform,Inc.、㈱リクルートジョブズの3社が協働で、未経験の子育てママを グロースハッカーへと育成するユニークな取り組みを2015年5月にスタートました。

このプロジェクトでは、デジタルハリウッドSTUDIO福岡で約8ヶ月間に渡る 「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を開催。 デザインやWebの基礎からグロースハッカーとしての実践的なノウハウまでを学べるとともに、 修了後の就労支援まで受けられます。昨年5月に卒業した1期生のママたちは現在、ほぼ全員が在宅で、子育てと両立しながらママグロースハッカーとして活躍しています。

現在も2期生16名が講座を受講。場所や時間に縛られないグロースハッカーという新しい働き方の実現に向け、実際にどのような講座が行われているのかを取材するため、デジタルハリウッドSTUDIO福岡の校長、高橋政俊氏にお話を伺いました。

某政治家の「グロースハック」とは?

この日の講座のテーマは、「グロースハックとは何か?」を実際にイメージしてもらうこと。講師は、㈱リクルートジョブズで現役の「グロースハッカー」、渡邊がつとめます。

この講座では、実際にあった例をもとに、グロースハックとは何かを説明します。その事例のひとつが、とある有名政治家が行った選挙キャンペーン。資金調達の戦略として、 サイトのA/Bテストを500回も繰り返したといいます。

ひとつのページはブルーの背景に、政治家が1人で、意志の強い表情で写っています。 もう一方は、白色を背景に、政治家が家族とともに笑顔で写っています。下部のボタンは、前者は「サインイン」、後者は「もっと知る」。

結果は後者のサイトのほうが、はるかに多くの寄付を集めたといいます。受講生のママたちからは「家族の写真で親近感がわく」「笑顔なのが良いと思う」といった声があがりました。講座は、こうした事例から、実際のA/Bテストのやり方、さらにはWebサイトをどう改善していくのか、といった技術的な面にまで話が及びます。

Webの仕事は少し経験がありましたが、独学でしたし、きちんと学ぶのは初めて。 きちんと判断・評価をしてもらい、プロとして仕事がしたいので、そのハードルを越えないといけないと思っています。」

そう話すのは、2期受講生の中村万智子さん。2016年に仙台から福岡に引っ越した際に一念発起し、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を受験したといいます。夫は転勤族。どうしても夫の辞令に縛られてしまい、仕事を決める上では「すごくハンデが大きい」と言います。「でも、それを払拭するのにどのような働き方があるかを模索しています。きちんと勉強し、自分のスキルの柱を作って、『在宅で働くママでもここまでできる』というのを証明したい。育児中でも、在宅でも、転勤族でも『こういう働き方がある』というのを体現して、 それが他の地方にも広がっていけばいいなと思う。」

もともと海外(ニュージーランド)でライターをしていたというブルック朋子さんも、 子ども2人を育てながら講座に通っています。子どもが寝静まった後に、 勉強や他のママとのミーティングを始める生活。現在は「とても大変!」 と話しますが、充実した表情でこう話してくれました。

「夫はイギリス人で、ITの仕事。もしかしたらまた海外に住むかもしれませんし、そうなるとWebの仕事は場所を問わずできるので、いいなと思っていた矢先にこの講座を見つけました。いまは興味津々!で、やってみたかったことばかり勉強しています。子どもが学校に行くようになったら時間もできるので、卒業後は仕事をしながら、 自分の専門分野を磨いていきたいです」

ママの経験は絶対に「プラスアルファ」になる

こうしたプロジェクトを立ち上げるキーマンとなったのが、デジタルハリウッドSTUDIO福岡の校長・高橋政俊氏です。高橋氏はその原動力のひとつとして「幼少期の、母親が内職している姿を見ていたこと」と挙げてくれました。故郷の特産品であるうちわを作る仕事をしていたそうですが、当時の状況は厳しく、その賃金はほんのわずかだったそう。在宅での仕事を「もっとポジティブに」。 そして、「社会に評価してもらえる、母に自慢してもらえるような仕組みを作りたい」と話します。

「母親が子どもの近くで面倒を見ることができて、かつ収入もあれば、もっと活き活きできる。そういうモデルをいつかは作りたいと思っていました。デザイン志向のあるビジネスパーソンを、市場が欲しがる時代が来るのは間違いないので、そうであれば、ビジネス経験のあるママや、家事・育児とマルチタスクをこなしながら、消費者目線で日々選択をしているママをグロースハッカーに育てるプログラムで、世の中に貢献できると思ったんです」

「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」の開講は9月。子どもの夏休みが終わってからの開講で、さらに冬休み、春休みといった「子育てスケジュール」に配慮したカリキュラムが組まれています。また費用面でも、通常受講料のうちの一部を㈱リクルートジョブズとデジタルハリウッドSTUDIO福岡が負担する奨学制度を用意。仕事に繋がるスキルを習得したいママに、 チャンスが広がっています。

市場も「ママ目線」が役に立つ領域が広がっています。1期生が在学中に高橋氏が組織した「ママグロースハッカーズ」では、企業のサイト改善案件で、ユーザーの目線に近いママの提案がたびたび採用され、成果をあげています。さらに男性向け商材のイメージがある、車や不動産といった高額商品も、 実は夫の名前を使ってママが資料請求していたという事例も多いとか。

「実は、そもそも企業側が設定しているターゲットが間違っているケースも見られます。 実際、家族向けの商品やサービスはお母さんが選んでいることのほうが多い。ママ目線でサイトを改善することで、飛躍的にパフォーマンスが伸びる可能性があり、そうした事例も少しずつ増えています」

「キャリアをムダにせず、どんどんチャレンジしてほしい」

2期生も5月の卒業まで、あと残りわずか。サイトの改善提案やディレクションで、様々な企業の課題を解決できるよう、早いスピードで経験値を積んでいます。ママグロースハッカーズの人数がさらに増え、 経験値が向上すれば、ママグロースハッカーズに関心を寄せてくれている多くの企業からグロースハックを目的とした多様な案件の受注も可能になります。

「今後は、ママグロースハッカーズが自走できるよう法人化を視野にいれており、 所属するママグロースハッカーの皆さんと一緒に3期、4期とママの育成を続けながら、 組織として成長できるよう支援を続けていきます。 ママが在宅でもスキルを磨きながら活躍できるモデルを、 他のエリアでもどんどんつくりたい」と、高橋氏は熱く語ってくれました。

「女性が母親になるときに、いままでのキャリアを捨てざるを得ない状況を変えていきたい。 そのキャリアをムダにせず、プラスアルファでスキルを身につければもっと輝くことができる。 インターネットが身近になって、私たちは産業革命の中にいます。子育てで忙しいママであっても、 その波に乗れるチャンスがあるわけで、実際に働ける場も、働き方もどんどん増えていきます。 私には無理とか、今から始めても遅いと諦めず、どんどんチャレンジしていってほしいですね」


◆参考情報

リクルートジョブズ "Growth Hack for Women プロジェクト"特設サイト

Kaizen Platform

デジタルハリウッド福岡校

ママグロースハッカーズ|Mama Growth Hackerz


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