ミラキャリ通信 Vol.8 「自己成長」を目的とした兼業・副業者が増加 兼業・副業人材を活用したい企業が取り組むべきこと

ミラキャリ通信 Vol.8 「自己成長」を目的とした兼業・副業者が増加 兼業・副業人材を活用したい企業が取り組むべきこと

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘)が提供するサービス『サンカク』では、正社員採用はもちろん、副業という新しい働き方も推進し、企業の事業成長に本当に必要な人材獲得を支援しています。例えば、人材不足にお悩みの地方企業に対して、副業による新しい働き方の定着や、リモートワークによる地方創生の推進など、既存の手法では獲得が難しい人材に対して今までにない切り口の人材獲得活動を支援しています。

一方で、新型コロナウイルス感染症の影響も受け、働く人にとっても今後のキャリアや働き方について“もやもや”を感じる方も増えてきたのではないでしょうか?『サンカク』ではそんなビジネスパーソンに対し、「一歩踏み出すきっかけをつくり、自分では気付かないキャリアの可能性を発見したり、自分にフィットした働き方を見つける」、そんな場を提供しています。

『サンカク』から「未来の人材獲得」や「未来の働き方」、「未来のキャリア」についてお届けするプレスレターが『ミラキャリ通信』です。

『サンカク』の現場から - Report from Sankak -

2020年末から2021年初頭にかけて行った「兼業・副業に関する動向調査」によると、兼業・副業を実施している人は9.8%。一方、これまで兼業・副業の経験はないものの「今後、実施したい」と考えている人は41.8%に達しました。特に20代~30代の若手層において、兼業・副業の実施率や実施意向が高い傾向が見られます。
※調査の概要については、『リクナビNEXTジャーナル』でご紹介しています。併せてご覧ください。
URL:https://next.rikunabi.com/journal/20210421_d1101/

今回は、2月に発表した調査概要版では言及しなかった調査データをご紹介し、兼業・副業の実態を明らかにするとともに、兼業・副業人材を活用したいと考えている企業はどう向き合えばいいかをお伝えします。

まず注目したいのは、働く個人が「兼業・副業を実施した理由(してみたい理由)」です。
予測できた通り、「副収入」を期待する声が最も多いのですが、それに次いで、次のような目的を持っている人が多く見られました。

「自分の興味があること・好きなことをやりたい」
「主たる職業の仕事では得られないような知識や経験を獲得する」
「主たる職業の会社とは異なる場でやりがいをみつけたい」

兼業・副業実施の理由

兼業・副業を実施した理由 [兼業・副業実施中+経験あり/再開予定]

[兼業・副業実施中の人]および[過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人](複数回答 n=654)

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兼業・副業を実施してみたい理由 [経験なし/実施意向あり]

過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人(複数回答 n=436)

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リクルートワークス研究所が提唱する概念に、「コミットメント・シフト」があります。企業から企業へと移行するのではなく、「自分は何にコミットメントするのか」という観点で、仕事への関わり方を変えていくことを指します。
<参考>「転職」が無くなる時。“コミットメント・シフト”の時代。
URL:https://www.works-i.com/column/works03/detail053.html

また、同研究所では、誰もが希望の働き方・生き方を選択できる社会への突破口として「キャリアの支え合い(共助)」に焦点を当てています。
<参考>「つながり」のキャリア論 希望を叶える6つの共助
URL:https://www.works-i.com/research/works-report/2021/tsunagari_210316.html

兼業・副業に対する人々の意識は、まさにこうした「キャリア・働き方の変化」の方向性と一致していると言えるでしょう。

兼業・副業により、「効率化」や「新たな視点、発想」の効果を実感する人が多数

では、実際に兼業・副業を経験した人たちは、その効果をどう感じているのでしょうか。

調査結果では、副収入を得られたことはもちろん、「より効率よく仕事を進められるようになった」や「新しい視点、柔軟な発想ができるようになった」といった声が挙がっています。

兼業・副業を実施して感じたこと [兼業・副業実施中+経験あり/再開予定

[兼業・副業実施中の人]および[過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人](複数回答 n=654)

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実際、東京の経営コンサルティング会社に勤務しながら、副業として石川県の老舗和菓子屋のデジタルマーケティングに携わる30代男性にインタビューを行ったところ、「本業では機会がない経験を積むことで新たな知見が得られ、それが本業にも生かせている」とのことです。

※この事例の詳細は『リクナビNEXTジャーナル』記事をご参照ください。
URL:https://next.rikunabi.com/journal/20210421_d1102/

とはいえ、兼業・副業には難しさや不安もつきものです。

これから兼業・副業を始めてみたい人は「本業との両立(時間管理)の難しさ」や「休息時間の減少」を不安視しており、実際に兼業・副業を実施している人からも、「休息時間の減少」や「体力面や健康面の管理の難しさ」が課題として多く挙がっています。

兼業・副業の難しさ/不安

兼業・副業を実施して難しさを感じたこと [兼業・副業実施中+経験あり/再開予定]

[兼業・副業実施中の人]および[過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人](複数回答 n=654)

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兼業・副業を実施するにあたっての不安 [経験なし/実施意向あり]

過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人(複数回答 n=436)

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兼業・副業の実態―「実行・運用業務を担当」「月20時間未満」「月10万円未満」

では、兼業・副業をしている人たちはどのように働いているのか、「数」や「契約期間」、「役割」、「労働時間」、「報酬」のデータに注目してみましょう。

●兼業・副業の数

実施している兼業・副業の数は「1つ」という人が8割近くを占めています。複数の副業を同時進行する余裕はなかなか持てないようです。

実施している兼業・副業の数

兼業・副業実施中の人(数量回答 n=436) ※調査時点(2020年12月)で実施している兼業・副業の数

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●兼業・副業の契約期間

契約の期間は、数時間程度~1週間未満で完了する短期のものが4割強を占める一方、期間を定めていないものも4割近くに達しています。

実施している兼業・副業の契約期間

兼業・副業実施中の人(単一回答 n=436)

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●兼業・副業の仕事で担っている役割

兼業・副業者の約5割は「実行・運用」フェーズ―いわば「手を動かす仕事」に携わっています。「企画や戦略立案」や「コンサルティング・アドバイザー」を務める人も、それぞれ1割程度存在します。
なお、約8割の人は、兼業・副業の仕事内容と本業には「関係がない」と答えています。
先ほどの「兼業・副業への期待」でも触れた通り、副業だからこそ「好きな仕事」や「新たな経験」にチャレンジしている実態が浮かび上がっています。

兼業・副業の仕事で担っている役割

兼業・副業実施中の人(単一回答 n=436)

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兼業・副業の仕事内容と主たる職業の仕事内容との関係

兼業・副業実施中の人(単一回答 n=436)

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●兼業・副業の労働時間

1カ月のうち兼業・副業に費やす時間は、「10時間未満」や「10~19時間」が約半数。

副業中の方々に行ったインタビューによると、「本業の休日」のほか、「平日、本業の始業前・終業後」に副業に従事されています。コロナ禍によりテレワークが中心となった、本来の通勤時間を副業に充てられているようです。

1か月の兼業・副業の労働時間

兼業・副業実施中の人(数量回答 n=415)

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●兼業・副業の報酬

兼業・副業によって得られる1カ月の報酬は「10万円未満」が約7割を占めています。この金額を多いと見るか少ないと見るかは、人それぞれでしょう。例えば、高度な専門性や知見を生かして企画・戦略立案の役割を担うとなれば、「少ない」と感じる人もいるかもしれません。

しかしながら、「本業とは関係がない副業をしている人が多い」という先ほどのデータと照らし合わせると、新たな経験を積んで知見・スキルを得られ、かつ自由に使えるお金が増えることはメリットが大きいと言えるのではないでしょうか。

1か月の兼業・副業から得られる報酬

兼業・副業実施中の人(数量回答 n=414)

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以上のデータから、兼業・副業を実施している方々のリアルな姿が浮き彫りとなりました。

今後、兼業・副業の文化が形成されていくに従い、期間・役割・報酬水準など、より多様化が進むことでしょう。

なお、今回の調査では、兼業・副業を実施しない人に対しても、その理由をお聞きしました。回答で多かったのは、「本業が忙しく、時間がない」や「両立が難しそう」、「そこまで働きたくない」といったもの。しかしながら、兼業・副業経験者からは「効率的に仕事ができるようになった」や「やりがいを感じた」などのポジティブな効果が報告されています。一歩を踏み出してみることで、「意外とできる」や「働くことが楽しい」などの発見があるかもしれません。

実際、兼業・副業の満足度が高い人は、満足度が低い人に比べて、「新しい視点、柔軟な発想ができるようになった」や「やりがいを感じた」、「新しい知識やスキルを獲得できた」などの効果実感を強く持っています。特に「新しい視点、柔軟な発想」を得た満足感は、収入への満足感を超えている様子が見て取れます。いかに新たな経験を得るか―副業の選び方にもポイントがあると言えそうです。

兼業・副業実施の効果実感

[兼業・副業実施中の人]および[過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人]のうち、[副業満足度の高い人(n=123)]と[副業満足度の低い人(n=83)]を掲載(複数回答)

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なお、兼業・副業の実施に際し、理解者・支援者がいるかどうかによっても、満足度に大きな差が表れています。

兼業・副業実施時の理解者や支援者の存在

[兼業・副業実施中の人]および[過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人]のうち、[副業満足度の高い人(n=123)]と[副業満足度の低い人(n=83)](単一回答)

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企業が兼業・副業人材を受け入れ、活用するために取り組むべきこと

このように個人の「兼業・副業」への意識が高まる中、企業側でも兼業・副業を認める人事制度の導入が進んでいます。制度導入によって、従業員のモチベーションが向上すると考えている企業が多く見られます。

一方で、兼業・副業人材を受け入れる企業も増えてきました。調査によると、兼業・副業人材を受け入れている企業・受け入れていない企業はほぼ半々となっています。従業員の兼業・副業を認めている企業の多くは、同時に社外の兼業・副業人材の受け入れを行っています。このような企業では、社内や社外といった境界線はだんだんとぼやけつつあります。社内外の垣根を低くした新しい組織の在り方が生まれつつあると言えるでしょう。

「兼業・副業制度の有無」と「兼業・副業人材受け入れ」のクロス集計(n=1,648)

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※2021年3月実施の人事担当者向け追加調査の結果を掲載しています。

受け入れる目的として多く挙げられるのが、「人手不足の解消」や「社内にいない知識・スキルを持つ人材の確保」、「イノベーション創出や新規事業開発」などです。

一方、「これから受け入れたい」という意向がありながらも慎重になっている企業、リスクを懸念して受け入れない方針の企業も見られます。

そこで、人事担当者の皆さんに「兼業・副業人材を受け入れ、活用するために何が必要だと思うか」と尋ねたところ、次のような意見が寄せられました。

意識変革・環境整備
  • 社外からの人を受け入れる風土
  • 多様性を受容する価値観の浸透。特に経営層・管理職
  • 既存の社員との同一化と差別化についての認識共有
契約・ルール
  • 労働時間、業務内容の範囲をきちんと伝えて合意し、管理する
  • 会社と雇用者双方にメリットがあるように、お互いの求めることを明確にする
  • きちんと評価基準や給与基準を定めて、双方が納得する契約を締結する
  • 情報漏洩や利益相反などについて、文書などで十分に決め事をしてから受け入れる
任せる仕事内容の検討
  • 業務分担の範囲の明確化
  • 本業に支障を来さないように業務量を調整
  • ある程度責任のある仕事を任せて意欲を高めてもらえるようにする
  • 社内の人材とコラボして、シナジーを生み出せるような人材であるか見極める
評価制度・報酬の工夫
  • 対象者に期待する成果水準を明確に示し、結果どうだったのかをきちんとフィードバックする
  • 社員との福利厚生を含めた対価、評価の公平性

企業側が留意すべきは、副業人材が「単なる外部の支援者、業者」なのか「立場は違えど同じ悩みや目標を共有する当事者、仲間」なのかということです。

上記の意見にあるように、受け入れる立場として、「評価の公平性」や「意欲を高める」、「双方にメリットがある」など副業者の立場に立って、「副業する理由・モチベーション」に応えようとすることは重要です。逆に副業者自身がどういったスタンスなのかをしっかりと理解した上でお互いのニーズに合致する人材を見つけ出すことも重要です。同じ役割・条件を提示しても、人によって受け取り方が大きく異なります。

実際の例として、ある企業が新しい取り組みについて、複数の候補者に「戦略策定から任せたい」とオーダーした際、「面白そう。やりがいがある」と言った人、「それは主体者である企業側が決めることであり、副業者に求めるべきではない」と言った人、反応が真っ二つに分かれました。

兼業・副業人材が持つ価値観、副業に向かうスタンスは多様です。企業側はそれを認識した上で、お互いのニーズに合う人材と出会えれば、そしてお互いが納得のいくルールや評価制度を定めることができれば、兼業・副業人材の受け入れが成果につながるのではないでしょうか。

<参考>プレスリリース「兼業・副業に関する動向調査2020」データ集を公開(2021年4月22日)
URL:https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0422_8329.html

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