赤ちゃんを産んで育休に入ると、子どもへの愛情があふれ、完全に仕事モードからママモードへ気持ちも変化します。育児に昼夜奔走して、職場との距離も離れてしまいがちかもしれません。

ここでは、スムーズに仕事復帰するために、妊娠中〜復帰直前にかけて、ぜひやっておきたいことについて、 産育休取得コンサルタントの堀江由香里さんに伺いました。

産後の提出書類は早めの準備手配を

まず、産後に提出しなければならない必要書類は、出産直前までに揃えておくことをおすすめします。 「産後脳」ともいうようですが、人によっては、ホルモンバランスが原因で、出産後に一時的に集中力が欠けたり、 情報処理力が落ちることがあるようです。給付金関連は人事経由で対応してもらえる場合が多いですが、 個人で手続きしなければならない確定申告や医療費の還元などもあります。 書類提出スケジュールの作成や、必要書類の収集など、やれることはぜひ先回りして進めておきましょう。

また、産休にかかわる書類には医師にもらう必要があるものも。 里帰りの人は手配書類にもれがないよう注意して。 パートナーでも提出代行できる書類はお任せして、産後はゆっくりと体力の回復に努めましょう。

産後の提出書類は早めの準備手配を

産休中こそパートナーと役割分担!

産休中には、パートナーと家事や育児に関する役割分担をしっかり相談・整理しましょう。 産休と育休で1年近く女性側が休むことになるので、何でもすべて女性側の役割となってしまいがち。 そうしないためにも「これからはチーム戦で!」と思いを共有しておけるとよいですね。

大切なのは、しっかり権限移譲すること。女性側に決める権限があってパートナーがただの作業担当になるのではなく、 パートナーに任せた家事や育児については、やるタイミングもやり方もすべてパートナーが決める分担にするのがポイント。 家事が苦手なパートナーには、食洗機や乾燥機付き洗濯機を使う家事を任せては? 食材の買い物や料理が好きなパートナーには得意なものを一任。妊娠安定期には、一緒に予行演習をしておくとよいでしょう。

産後は職場を訪問してコミュニケーション

子どもが生まれたら、ぜひ子連れでの職場訪問を。 できれば、あらかじめ産休前に「子どもが生まれたら、ご挨拶に来ますね」と話しておき、 面談や書類提出などのタイミングで顔を出すのがいいと思います。

復帰後は、どうしても子どもの熱や病気のために遅刻早退をして職場に迷惑をかけてしまうことも。 そんなときでも、同僚たちが子どもの顔を知っているだけで、 「あの子が、熱を出しているなら、僕がフォローするよ!」という気持ちにもなってもらいやすいもの。 書類提出や面談のタイミングに職場の仲間とランチに行くのでもよいと思います。 気軽にコミュニケーションを取って、会社の情報収集をしながら職場の雰囲気にふれられるとよいですね。

産後は職場を訪問してコミュニケーション

復帰直前には具体的な生活シミュレーションを

復帰直後は生活のリズムをつくるのが一番大変です。 そのためにも、復帰間近になったら生活のシミュレーションを必ずしておきましょう。

まずは保育園に子どもを預けるまでのルート、保育園から職場へ行くルートを実際に辿り、所要時間を計ります。 お見送りは雨天と晴天でルートを変えたほうがよいのか、自転車なのか歩きなのか、どこで夕食の買い物をするのか、 ネットスーパーを活用するのか...など。さまざまな場面を想像しながら、細かく生活導線を確認していきます。 両立の負荷を減らす上で、こうしたシミュレーションはとても役立ちますよ。

いざというときのセーフティネット準備は万全に

上長や同僚には、最初の1、2年は子どもが病気をしやすいということを理解してもらう必要がありますが、 いざというときのセーフティネットの用意も万全にしておきたいですね。 子どもが病気になったときの保育園へのお迎えはどうするのか、パートナーとの間でローテーションのルールを決めたり、 親や家族のサポートにどれくらい頼ることができるかを確認しておいたり。

親が仕事を休めないときには代わって世話をしてくれる病児保育やファミリーサポートなど、利用できるサービスをピックアップし、 登録を済ませておくのもよいでしょう。病児保育は登録タイミングにもルールがあるので、事前にチェックを。 自分たちがダメなら家族、家族がダメなら第三者に頼るなど、何段階かでサポート体制を組んでおければ安心ですね。

いざというときのセーフティネット準備は万全に

心強いママ友コミュニティ&ネットワーク

両立ライフを成功させるには、やはりママ友の存在はとても大切です。 会社のママ友や地域のママ友。いろんな働き方や生き方を見ることは、自分のキャリアにとってもプラスになります。 母親と価値観やキャリア観がかみあわない、親世代の考え方が参考になりづらい、といったこともある現代では、 何でも話せるママ友がいることや、ママ友のネットワークがあることが、支えになったりもします。

私がおすすめするのは、自分の子どもよりもさらに年上のお子さんがいるママ友。 ワーママでも専業主婦でも、2人目、3人目と子育て経験豊富なママ友は、家事育児のコツや時短術にも長けているので、 きっと頼もしいアドバイスをくれ、ときには相談相手になってくれると思いますよ。 ひとりで抱え込まず、孤独にならないためにも、ママ友つながりはもっておきたいですね。

「ワーキングマザー=時短」に縛られずキャリアを見つめて

多くのワーキングマザーは、「なんとなく」「みんながそうしてるから」と時短勤務を選びがちです。 でも、本当にフルタイムは難しいのか、まわりに協力してもらえる人はいないのかを、冷静にチェックするのも大切なことだと思います。

子どもは2〜3歳にもなるとぐっと自立度も上がってくるので、その時期からは仕事にギアを入れてみようかな、 と中長期的な視野を持って、キャリア形成を積極的に考えてみるのもいいでしょう。 「私は何年後にどんな仕事をしていたいのか」とイメージし、その思いを職場やパートナーと共有してみてもよいでしょう。 「ムリかも」と決めつけず「やりたいことに向かってまわりとオープンに話し合い、 向上心を持って仕事に取り組む」というスタンスを大切に。

チャレンジを恐れない考え方は、これから子育てとキャリアを充実させていきたい働くママに常に大事なもの。 ぜひ自分に欲張りに、充実した両立ライフを送ってほしいと思います。

著者プロフィール

※プロフィールは、取材当時のものです。

堀江 由香里

NPO法人Arrow Arrow 代表理事 堀江 由香里

産育休取得コンサルタント 日本ワーク/ライフ・バランス研究会 事務局長 中小企業ワークスタイル研究会 事務局長

人材派遣会社勤務を経て、病児保育・病後児保育の認定NPO法人フローレンスにて ワークライフバランスコンサルティングや病児保育事業を担当。 独立し2010年にNPO法人Arrow Arrow設立。

中小企業に向けて産育休取得コンサルティングサービスや女性社員活用研修を提供。 妊娠を機に仕事をやめてしまう女性が7割もいること、働きたいのに仕事に戻れない女性がいる現状に対し、 すべての人が自分の未来を自由に作れる社会を目指して活動中。1982年生まれ。2014年11月に女児出産。


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