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今も、始発電車で通勤⁉63歳で手に入れた"一石四鳥"の豊かな生き方

キャリア

2019年10月08日 転載元:らしさオンライン

今も、始発電車で通勤⁉63歳で手に入れた

秋本富士夫さん(63)の朝は早い。始発で職場の最寄り駅に着いてまず向かうのは、6時半にオープンするコーヒーショップ。始業までの2時間余り、ライフワークともいえる「絵の研究」に没頭する。日本を代表する大手電機メーカーとその関連会社で37年間、一貫して技術開発や海外向け受注の重要な任務を担ってきた秋本さん。定年後に手にしたのは、"一石四鳥"の充実した毎日だった。

「絵の世界観に魅せられて、定年が待ち遠しくて(笑)」

巷では、「定年退職後、何をしていいのかわからない」という話をよく耳にするが、秋本さんが、"それ"に出会ったのは50代のはじめ。オランダでの単身赴任中に、ベルギーの教会で目にした『ヘントの祭壇画』がきっかけだった。

上下段に分かれたパネルに、キリストの犠牲による人間の救いと天国の賛美が描かれたこの大作を前にして、インスピレーションがわいたという。

「当時、次世代型ネットワーク、つまりクラウドのアーキテクチャとはどうあるべきかを考えるのが僕の仕事だったのですが、この絵の上段の父なる神や聖母マリアがAI、下段にたくさんいる聖人や市井の人々がIoTでいえばエッジに見えてきた。そしてキリストを象徴する神秘の子羊と聖霊を象徴する鳩が上下をつなぐネットワーク。そこに、全体と個との調和をめざす世界観が表現されているように思え、これこそ、まさにクラウドそのものじゃないかとピンときたのです」

出発点は職業的な興味だったが、自らの気づきに胸躍るようなときめきを覚えた秋本さん。勢いにまかせ他の美術品を見て回るうちに、探求の対象はさらに中国やインドの東洋美術へと広がっていく。

「『クラウドは千手観音です』なんて、お客さんの気持ちをつかむための営業トークのつもりだったのに、研究を深めていったら、仕事のため云々というよりは、それを超えて、絵に込められた意味や現代社会との親和性を紐解いていくのが僕自身の生きがいになっていたのです。そしたら、もう、定年が待ち遠しくってね(笑)」

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