多様な働き方

「健全な人材流動化」をジョブ型雇用で実現する条件 中村天江

キャリア

2021年04月20日 転載元:リクルート ワークス研究所

「健全な人材流動化」をジョブ型雇用で実現する条件 中村天江

1 雇用流動化をネガティブからポジティブへ

日本企業がジョブ型雇用を検討する背景には、過度な新卒採用偏重を見直し、中途採用を増やしたいという思惑がある。少子化により若年人口は減少の一途をたどっているため、新卒の人材争奪戦は熾烈を極めるようになっている。また、DXやグローバルの事業の推進のためには、経験者を社外から獲得した方が効率的なこともある。
とくに人材の流動性が高いIT業界や海外では、市場価値に見合った待遇を提示できないと人材を獲得することができず、仮に獲得できてもすぐに辞められてしまう。魅力的な待遇提示が急務なことも、ジョブ型雇用への転換を後押ししている(※1)。

しかし、今まで日本では「雇用の流動化」は、ネガティブな意味で使われることも多く、必ずしもポジティブな事象とはいえなかった。バブル経済の崩壊以降、企業が人員を柔軟に調整し人件費を削減するために、正社員以外の労働者の活用を増やしたことで、不安定雇用や低賃金といった社会問題が起きたからだ。
いわゆる「非正規化」による雇用流動化と、ジョブ型雇用による雇用流動化に違いはあるのか。どうすればジョブ型雇用によって健全な人材の流動化を実現できるのか。本稿ではその点について論じていく。

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