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定年制度はなぜ必要か―「45歳定年発言」にみる定年問題──坂本貴志

2021年11月11日 転載元:リクルート ワークス研究所

定年制度はなぜ必要か―「45歳定年発言」にみる定年問題──坂本貴志

事務職の仕事が見つからない

Aさん 「私は都内の中堅企業で事務職として勤めあげてきました。私の経験を活かせる案件はありませんか。」

職員 「60歳を過ぎて事務職員を募集している企業はほとんどありません。Aさんのご経験を活かせるような求人はなおのことです。いまAさんにご紹介できる案件は…こちらの○○警備保障の案件もしくは○○不動産でのマンション管理やタクシードライバーの仕事などはいかがでしょうか。」

Aさん 「(しばらく考えた後)…こんな仕事しかないのでしょうか。もう少し真剣に探してもらえませんか。」

Aさんはこれまで都内の中堅メーカーで勤め、60歳の定年を経て現在65歳を迎えている。このたび、再雇用の期限も切れ、長く働き続けてきた会社を離れるときが来た。

子どもたちは既に独立していて長年頭を悩まされてきた子供の教育費からは解放されている。住宅ローンもわずかながら残っているがほとんどが返済を終えている。ただ、月20万円弱の年金がもらえるようになっているなか、手元の貯金は心もとないのでもう少し生活の余裕がほしい。そして何より、フルタイムの仕事はもう勘弁してほしいが、仕事が全くないとなると日々の生活が退屈である。

前職を退職してしばらくした後、Aさんはハローワークの門をたたく。これはその時に交わされた会話である。

…とこれは架空の話であるが、特殊なスキルを有する人を除き、多くの高年齢者はこれに類似したことを経験している。なぜこのような事態が発生してしまうのか。まずはその構造を分析してみよう。

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