多様な働き方

もうひとつのエンジニア問題 ──豊田義博

キャリア

2022年02月17日 転載元:リクルート ワークス研究所

もうひとつのエンジニア問題 ──豊田義博

エンジニア、という言葉から想起されるのは、ITやゲームの分野で活躍するソフトウェアエンジニア。いつしかそんな時代が到来している。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が訴えられ、ITエンジニアが質量ともに不足していることが 声高に指摘される。デジタル化に遅れた日本の社会課題とされ、産官学がこぞってこのテーマに取り組んでいる。

そんな社会課題の陰に潜んでしまっているが、日本には、もうひとつのエンジニア問題が存在する。電気製品や自動車などの開発・設計に携わるハードウェアエンジニアの課題だ。大学で電気電子・機械工学等を専攻し、メーカーに就職し、「ものづくり大国」ニッポンという評価の獲得に大きく貢献した人材のキャリア課題だ。

キャリア不安の真っただ中にいるハードウェアエンジニア

グローバルマーケットで評価の高い日本企業といえばメーカーが上位を占める。彼ら彼女らハードウェアエンジニアは、今も日本の中核的な人材であることは言を俟たない。そして、デジタル化が進み、ソフトウェアエンジニアのニーズが劇的に高まるからといって、ハードウェアエンジニアのニーズがそれにとってかわられるわけではない。両者は代替的な関係にはない。デジタル化が進もうとも、モノがこの世界から消えるわけではない。これまでのモノが、デジタル化によって新たなモノへと姿を変えるときに、それを推進するのはハードウェアエンジニアだ。彼ら彼女らなくして未来社会はない。

しかし、彼ら彼女らは今、キャリア不安の真っただ中にある。「これまでのモノ」づくりに携わり、専門性を活かし経験を重ねてきた人たちが、「新たなモノ」への世代交代を前に、未来の行き場を見出せずにいる。

会社も、世代交代を意図した動きを取り始めている。業績が堅調なホンダが2021年夏に早期退職を募ったのはその典型例といえる。手を挙げた2000名余の社員の中に、エンジニアも相当数含まれていることだろう。そのエンジニアたちには、どのような未来が待ち受けているのだろうか。

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