障がい者の活躍

障害者にとって良い職場は全員に良い職場

職場マネジメントダイバーシティ

2024年02月06日 転載元:リクルートマネジメントソリューションズ

障害者にとって良い職場は全員に良い職場

障害者雇用とインクルージョンを考えるにあたっては、日本の障害者雇用制度の観点から考える必要がある。その背景にある問題意識は何か。企業が解決していくべき課題は何か。厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課課長(取材時) 小野寺徳子氏に詳しくお話を伺った。


アセスメントを強化して一般企業で働く障害者を増やす

日本は、民間企業に法定雇用率以上の障害者を雇用する義務を課しています。この場合の障害者とは、障害者手帳を持っている身体障害者・知的障害者・精神障害者のことを指します。一方で、ハローワークはもっと広い範囲で障害者支援を行っています。障害者手帳を持っていない人々、例えば「病院でおそらく自閉症だと診断されました」といった人々の就労支援もしているのです。私たちはどちらも障害者雇用と捉えています。

2016年から、障害者雇用促進法では企業が障害者を雇用するにあたり、障害者一人ひとりへの「合理的配慮」の提供を義務化しています。合理的配慮とは、それぞれの障害特性や困りごとに合わせて行われる配慮のことです。例えば、光の刺激が得意でない人は、仕事中もずっとサングラスを掛けることを理解した上で雇用してもらう必要があります。同様に、耳の聴こえない人には周囲に筆談をお願いしたり、疲れやすい人には休憩時間を設けてもらったりすることがあります。

問題は、障害者本人が自分にどのような配慮が必要かを十分に理解できていないケースがあることです。自己理解が不足していると、必要な配慮を受けられず、実力を発揮できなかったり、障害が悪化したりすることが少なくありません。

そこで私たちは、2022年12月に障害者総合支援法を改正し、「就労選択支援制度」の創設を決めました。就労選択支援とは、就労アセスメントを活用した支援です。就労を希望する障害者が就労支援サービスと協力して、自分はどのような職種や労働条件で働きたいのか、どのような能力・適性があるのか、就職後にどういった合理的配慮が必要なのかなどを評価・整理することです。

現在は特別支援学校の卒業生のうち、30%ほどは一般企業に就職しますが、すぐに一般企業に就職するのが難しい30%ほどの皆さんは、就労系障害福祉サービスを活用しています。就労選択支援を強化すれば、働く自信をつけ、思いきって一般企業にチャレンジする障害者が増えるのではないかと考えています。特別支援学校から一般企業に就職する人々、就労系障害福祉サービスから一般企業に移行する人々が増え、より多くの皆さんが適切な合理的配慮を受けながら、企業で活躍することを期待しています。

また、働いている最中に精神障害となった人々のなかには、本当は休憩などの配慮が必要なのに、自分は配慮などなくても働けると思い込んでいるケースが見られます。そのためにかえって精神障害を悪化させることがよくあるのです。そうした人々にも就労選択支援を活用し、自己理解を深めてもらえたらと考えています。

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