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シンガポール人女性が活き活きと働ける理由|Vol.06

キャリア

2017年05月31日

シンガポール人女性が活き活きと働ける理由|Vol.06

アジア有数の経済大国シンガポール。平日に街の中心地を歩くと、働いている女性が多いことに気づく。どこか凛としていて、活き活きしているように見える。

出産してもみな、働き続けるのだろうか?日本人の父とシンガポール人の母を持ち、現在は日本で暮らすティアラ(31)にそう尋ねると、「女性とか男性とか、あまり関係ないですよ」という答えが返ってきた。 こうした考えは、50年前の建国時から初代首相のリー・クアンユーが積極的にアピールしてきたことだという。

リー・クアンユーは、こんな言葉を口にしていたそうだ。 「国民の半分である女性たちの可能性を信じ、彼女たちの力を最大限活用することなく、 豊かな国になることなどできない」

こうした考えは、いまも広く国民のなかに染み込んでいる。

両親の手を借りながら...

シンガポールでは、多くの場合、産前産後は4ヶ月の休暇が取得できる。

「その4ヶ月をどう使うかは完全に自由。3ヵ月で職場に戻り、 残り1ヵ月を分散して使うこともできる。どう使おうと、その人次第なんです」

早い職場復帰を支えるのは、シッターさんであったり、(子供にとっての)祖父母であったり、住み込みのメイドであったり。

二世帯で暮らしているのであれば、親に多少なりの謝礼を支払い、子供の送り迎えなどを手伝ってもらう女性は少なくない。

自分には手助けが必要だということ、手を借りながら何とか乗り切りたい、ということを両親に正直に話し、親からもアドバイスを貰う。そんな工夫をしている女性も少なくないという。

実家が必ずしも近くない場合は、平日は祖父母の家に子供を預け、週末は親子で過ごす、という家庭もあるそうだ(シンガポールの国土は東京23区の面積とほぼ同じ。国が小さいからこそできることではある)。

「ですが、ご飯をつくりに実家に行ったり、一緒に夕飯を食べたりするので、子供たちとは毎日顔を合わせる。完全に任せきりにするわけではないのです」

住み込みのメイド(ヘルパー)の手を借りながら子育てをする家庭も少なくない。家事や子供のお稽古事の送迎に家族同然とも言えるメイドの手を借りながら、仕事をすることを諦めたりはしないのだ。

建国時のシンガポールは、小さくて貧しい国であったことから、みな「もっと、もっと上を目指そう」という競争意識もある。子供がいても、頑張って働きたい、というのが、若い世代にも広く共通する次第だ。働く気持ちさえあれば、あとは何とかなる、方法はあるはず、という考えなのだ。

パートタイムも「仕事のプロ」

パートタイムも「仕事のプロ」

「男性だから、給料はこれくらい給料を貰っている」という種の会話を耳にしたことは一度もないという。正社員の賃金は男女に差はない。

ティアラ自身、20代前半から何度か転職繰り返してきたが、上司はほとんどが女性だった。20代の頃でさまざまな仕事を経験することは決して悪いことではないとされる。転職は多いが、若い世代の女性たちはみな、「結婚しても働くのは当たり前」という感覚だという。

働き方は、パートタイム、フルタイムとさまざまな形があるが、仕事に向き合う姿勢に差はない。

「パートタイムだったとしても、仕事をするうえではプロだよね。そんな会話をよくしています」

仕事は仕事、プライベートはプライベートと、境界線は保とうとするのは日本人の感覚に近い。だが、子育てと両立させようと奮闘している人がいれば、「何か手伝えることある?」と快く手を差し伸べる。「子供がいるから、先に帰るね」と言えば、「そうだよね、早く帰りな!」と送り出す。

「シンガポールの女性は、弱くはないですから」と、ティアラは笑う。思っていることを口にし、人の手を借りる時も自分の思いははっきりと伝える。

自分の気持ちに素直に、他人を信じ、仕事には100%の力を注ぐ。だからこそ、シンガポールの女性たちから、こんなにもパワーを感じるのかもしれない。

文:古谷ゆう子

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