両立支援 【笑顔のイクボスを目指す上司向け】 部下から妊娠報告を受けたら!?上司の心得

《復職への期待の伝え方》妊娠中の部下とのコミュニケーションの秘訣は「共感」と「納得」!【上司の心得09】

iction!が提供する「笑顔のイクボスを目指す上司の心得」

部下の妊娠と仕事の両立・職場復帰をサポートする上で、上司が知っておきたい情報を、12回にわたってお伝えいたします。

「妊娠中の部下に職場復帰への期待をどう伝えるか」で悩む上司は少なくありません。

今回は復職への期待の伝え方がテーマ。妊娠中や子育て中の女性ならではのコミュニケーション特性を知れば、どうしたらよいかが見えてくるはずです。

では、妊娠中の部下に職場復帰への期待を伝える方法として、最もよいものは次のうちどれでしょうか?

(1)「育休から復職したら、是非チャレンジしてほしい●●という仕事があるから、よろしくね。」とAさんに伝える。
(2)「育休から復職したら、Aさんの希望通り、●●の仕事を続けてほしい」とAさんの希望を優先する。
(3)「育休から復職したら、●●にチャレンジしてほしい。なぜなら、○○だから。この選択肢はAさんの希望に沿っているし、何よりも長い目で見たときに、Aさんにとって一番いいんじゃないかと思う」と、希望を受け入れた上で、本人が納得いくように理由を説明しながら、次のキャリアにつながる選択肢を提示する。

最もよいのは(3)です。
もちろん、ケースによっては(2)でも悪くないのですが、上司として部下育成を大事に考えるなら、多少は(3)の要素が入ってくるはずです。

《復職への期待の伝え方》キーワードは「共感」と「納得」!妊娠中の部下への期待の伝え方 上司の心得09

職場復帰への期待は 「納得」と「共感」のコミュニケーションで伝えよう

職場復帰への期待は 「納得」と「共感」のコミュニケーションで伝えよう

では、なぜ(3)がよいのでしょうか。
それは、女性には「共感」を大事にする傾向があるからです。

自閉症やアスペルガー症候群の研究で知られる発達心理学者サイモン・バロン=コーエン氏は、ヒトには共感性が高い「女脳」と、システム化を重視する「男脳」の2種類のタイプがあって、女性には女脳タイプが多いと語っています。(ただし、男脳の傾向が強い女性もいますから、その点はご注意を。)

平たく言えば、多くの女性は共感したりされたりすることが好きで、対人コミュニケーションでは論理よりも感情を優先させるのです。上司の期待も、感情的に納得できない限り、素直に受け止めることができません。ですから、理由を説明しないで期待を押しつける(1)のようなコミュニケーションでは、女性の部下は納得できず、感情的に反発するケースが多いのです。

それに対して、(2)は本人の納得度が高いという点では問題ありませんが、今度は上司の期待が十分に伝わりません。結局、(3)のように本人の希望を受け止めた上で、しっかりと理由を説明しながら、期待を伝えていくというのが、上司として理想的なコミュニケーションなのです。

妊娠・出産による離職を防ぐためにも、産休前の部下とキャリアや働き方についてコミュニケーションを

妊娠・出産による離職を防ぐためにも、産休前の部下とキャリアや働き方についてコミュニケーションを

最近は、女性のキャリアも多様化が進んでおり、働き方の選択肢が広がっています。その一方で、妊娠中や育児休業中の女性、特に初めての出産などで仕事復帰の経験がなく、育児をスタートしたばかりの女性は、たくさんの不安を抱えていたり、育児と仕事の両立を想像できないために働き方を決めかねていたりすることが多くあります。

妊娠報告を受けた後、体調への気遣いだけでなく、働き方やキャリアについても話し合っておきましょう。
妊娠や出産をいったん横に置いて、「そもそもどのような仕事にチャレンジしたいのか」「どういった時にやりがいを感じているのか」など、部下と話をすることが大切です。そういったコミュニケーションを通じて、本人にも復帰後の働き方を考えるきっかけやヒントが生まれ、出産後も働き続ける意欲につながります。

出産を機に退職をする人のうち、「子育てに専念したいから」という退職理由は3割ほどに過ぎません(リクルートホールディングス調べ)。それよりも、「職場環境が子育てと仕事の両立に適していない」「上司、同僚など職場の理解がない」といった職場事由で退職するケースが多いのです。そうした事由で退職する場合、上司が一因になっていることが多いため、上司には退職の理由を直接は言いにくいもの。もし「退職を考えている」「両立は絶対にできない」といった声を聞いたとしても、それを真に受けるのではなく、根気強く共感と納得のコミュニケーションを進めていきましょう。上司自身が、部下の妊娠・出産を、"部下との相互理解を深める一つのきっかけにしよう"と前向きに捉え、しっかりと対処していくことが必要です。

参考書籍:
●サイモン・バロン=コーエン『共感する女脳、システム化する男脳』(NHK出版)
●西村直哉・清家三佳子『一瞬で心をつかむ女性部下マネジメント』(幻冬舎)

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