ミドルシニア 40代からのキャリアのお悩み相談室 ~強み理解でモヤモヤ解消~

キャリアのお悩み相談#01:同期や後輩の昇進に気持ちが焦るも、自分に自信がありません。 (40代男性)

キャリア

2021年05月13日

キャリアのお悩み相談#01:同期や後輩の昇進に気持ちが焦るも、自分に自信がありません。 (40代男性)

「もういい歳だし、今さら新しいことに挑戦できる自信がない」「自分には自慢できるほどの強みや長所が見つからない」…。人生100年時代、コロナ禍で働き方も働く価値観も大きく変わっていくなかで将来が不安になり、これからのキャリアや生き方にモヤモヤとしている40代・50代・60代も少なくありません。

そんな方々の悩みの解決をお手伝いする企画が「キャリアのお悩み相談室」。この相談室では、さまざまな40代・50代・60代のキャリア支援を手掛けてきたベテランキャリアアドバイザーが、日々訪れる相談者のモヤモヤを紐解きながら、自分らしいキャリアを考えるためのアドバイスをしています。

今回相談室を訪れたのは、大手家電メーカー勤務のAさん。同期の半数近くが管理職に昇進し、後輩にも先を越されているなかで、自分はどうすればよいかと悩んでいるようす。Aさんのキャリアのモヤモヤを解消するにはどんなことが効果的なのでしょうか。

※この連載企画では、実際に寄せられた複数の相談内容をもとに架空の登場人物を設定。キャリアアドバイザー監修のもと構成しています。

Aさん

Aさん(46歳/男性/家族構成:妻と子ども3人)

大手家電メーカーで勤続23年。現在は販売促進部に所属。年齢的にもう自分の昇進はないかもしれないと思い始めた。仕事も評価されているのか分からない。人間関係や働き心地は気に入っており、環境が変わることに抵抗があるし、年収も落としたくない。このまま今の会社で働き続けたいと思っているが、仕事へのモチベーションも上がらずモヤモヤしている。

≪お悩み・モヤモヤの原因は?≫
出世かやりがいか、子どもの教育費は…。判断軸がありすぎて迷走中

Aさん: 今日は自分の可能性を教えてほしくて来ました。今46歳で、このまま役職につかないで50歳を迎えると、もう昇進の可能性はないと思うんです。今の会社で働き続けるべきなのか、本意ではないけど転職も考えた方がよいのか。こんな私には仕事がないような気もするし、選択肢を知りたくて。

アドバイザー: そもそもAさんが昇進をしたいのはなぜですか。

Aさん: 同期の半数が管理職になり、少し焦っています。それなりに結果は出しているつもりなんですが、一向に声がかからないのが不安で…。自分が評価されていることの確証が欲しい気持ちもあります。

アドバイザー: もし転職するとしたら、管理職もしくは管理職候補としての入社が条件になりますか。

Aさん: でもまあ、私はこの歳でマネジメント経験がないですから、管理職採用に受かる自信はあまりないですね。むしろ自分で手を動かすことは好きなので、可能なら現場の仕事は続けたいです。

アドバイザー: すると、単にポジションを上げたいというよりは、ほかに不満か悩みをお感じなのかもしれませんね。

Aさん: そうですね…。収入面の違いが大きいです。定期昇給でそれなりに給料は上がっていますが、うちの会社は役職がつくかどうかの差が大きく150万円くらい年収が変わってくるので。上の子どもが中学から私立校に通っているのでそれなりに学費もかかるし、子ども3人全員が大学に行く前提で考えたら、今よりも収入は上げたいです。

アドバイザー: 今の仕事を続けたい気持ちも、ポジションを上げて評価されたい気持ちも、家族のことを考えて収入を上げたい想いも、どれも大切ですよね。ただ、いろんな想いが交錯して絡まっているようにも感じるので、一度整理してみましょうか。この中で一番譲れないものは何ですか。

Aさん: うーん、できればどれも叶えたいですが、一つに絞るとしたらやっぱり家族です。少なくとも待遇面で下がるのは絶対に避けたいですね。

アドバイザー: 今のように「何としても譲れないもの」を考えてみることは大切です。ちなみに、収入を上げることにこだわるのであれば、その手段は昇進や転職だけとも限らないですよ。Aさんの会社の就業規定がOKであれば副業をやってみるのも選択肢の一つです。

キャリアを考えるポイント

他人の評価や周りの目を気にした“~すべき” “~ねばならない(他人軸)”に縛られすぎず、自分にとって叶えたいこと、譲れないもの(自分軸)が何なのかを深く考えてみましょう。

キャリアを考えるポイント

≪自分の強みの見つけ方・スキルの棚卸≫
普段は大人しいけれど、いざというときに社内調整力を発揮!

アドバイザー: Aさんの譲れないものは「家族のための収入」でしたが、ご自身として「やりたいこと(WILL)」はありますか。

Aさん: 今の仕事も好きだけど、管理職への憧れがまったくない訳でもないんですよ。でも課長や部長は苦労も多そうだし、明確に目指したい方向性が見えている訳ではないんです。そもそも昇進できる自信もないし…。あんまり真剣に考えてこなかったのがいけなかったですね…。

アドバイザー: Aさんくらいの世代はまだ終身雇用が前提と考えられていた時代の価値観で育ってきたので、自分のキャリアを見つめ直す機会が少なかった人も珍しくありません。これから考えていきましょう。では、「やりたいこと(WILL)」がないのでしたら、「自分ができること(CAN)」を起点に考えませんか。

Aさん: 自分ができること…。うーん、なんだろう。私は販促部門にいますから、新商品発売のキャンペーンやイベントなどの企画・運営を中心に経験してきました。

アドバイザー: すばらしいご経験ですね。では、もう少し具体的にAさんがやってきた仕事を聞いてもよいですか。例えば、もし転職の面接試験で「あなたのキャリアを代表する仕事のエピソードを教えてください」と聞かれたら、どんな話で自己PRをしますか。

Aさん: ある新商品のキャンペーンで、商品コンセプトをメインターゲットの主婦層にわかりやすく言い換えて使い方をSNSで発信したら、大きな話題になったことですね。開発側の意図をていねいに汲み取りつつ、ユーザーの家事の不満と上手く接続して成功できた仕事でした。また、別のキャンペーン時には広報部と営業部の関係性が悪くて連携がとれず、危うく失敗しかける状況だったのですが、双方の意見を聞いて仲を取り持ったことで成功に導けたこともありました。

アドバイザー: なるほど。今のお話から感じたのは、Aさんはずば抜けて社内調整力が高いことです。 ピンチのときに関係者に働きかけて問題を解決していくのは、Aさんが持つ素晴らしい能力だと思いますよ。

Aさん: 私がですか?人前で話すのは得意ではないし、組織の中では大人しい方ですよ。

アドバイザー: それぞれの思惑が交錯する中で話をまとめるのは、とても難しいことです。いざというときに困難から逃げ出さないこと。相手の話をていねいに受け止めて、自分の意見もきちんと提示していくこと。これは、今の会社・職種だけでなく、世の中のさまざまな仕事や場面でも活かされる能力。Aさんが仮に今とは違うキャリアを歩むとしてもご自身の強みとして使える「ポータブルスキル」だと言えます。

スキルの棚卸しのポイント

頑張ったこと、やり続けたこと、失敗談などのエピソードを下記の手順で整理してみましょう。

≪自分の強み(ポータブルスキル)を活かす方法≫
50代でも現場の第一線で働き続けるとしたら、どんな役割を果たすべき?

アドバイザー: では、Aさんの「強み=ポータブルスキル(CAN)」を軸にやってみたい仕事を考えてみましょうか。

Aさん: 調整力となると、やっぱり今の会社で管理職を目指すか、管理職になれる転職先を探すべきなんでしょうか…。管理職って要は上と現場との調整役ですもんね。

アドバイザー: 確かに、それも選択肢の一つですよね。でも、Aさんは管理職になることに100%ポジティブではないと。

Aさん: やっぱり現場の仕事が好きなんですよ。数字の管理や組織のマネジメントよりは、目の前の商品や人に携わっていたいです。

アドバイザー: これまでがそうだったように、管理職じゃなくてもAさんの能力が活かせるシーンはあると思います。その一方、もし今のまま仕事を続けるとしても20代・30代の後輩と同じ環境で働くことを意識して自分の立ち位置を変えて行く必要はあるでしょうね。ご自身が若いときを思い出してみてください。職場の50代の先輩をどう思っていましたか。

Aさん: 「俺たちの若いころは…」なんて昔話をするような、ちょっと面倒くさい人もいましたね。あとは、ほとんど存在感のない「気配を消している」先輩もいました。自分が50歳を迎えたとき、そうなっちゃうのは避けたいです。

アドバイザー: だとしたら、Aさんの持ち前の調整力を活かして、若手の後輩を助ける・育てるのもこれからの役割として考えてみてはどうでしょうか。Aさんは、会社の歴史を知っているからこそ交渉の引き出しや社内の人脈が豊富なはず。そうした若手にはないAさんのリソースを使えば、若手メンバーと関係各所のハブになれるかもしれません。

Aさん: 管理職になるにしろ、メンバーのままにしろ、「すべてが今のまま」という訳にはいかないということですね。

アドバイザー: 会社視点で考えれば、たとえ同じ組織のメンバーでもキャリア10年目の人と30年目の人に期待している役割は違うはずです。自分が今後どんな価値を発揮して何に貢献していくかを意識して行動すると、仕事に対するモチベーションやキャリアに変化が生まれてくると思います。

≪自分の強みをもとに未来を考える≫
自分の考えや想いを家族に伝えて、よく話し合ってみては?

Aさん: なんとなく、自分は現場主義を貫きたいことがわかってきました。自分の強みを引き続き活かせそうですし。

アドバイザー: 「やりたいこと」が見えてきたということですね。ただ、どんな道にもデメリットやリスクはあります。例えば、今のポジションを続けるのであれば、いずれ後輩が自分の上司になる可能性が高い。後輩から指示されたり、うるさく言われたりしてもきちんと受け止められるか。そうしたこともイメージしておいた方がよいでしょうね。

Aさん: なるほど。たしかにそれはちょっと気まずいですね…。うーん、やっぱり決められないです。

アドバイザー: もちろんこの短い時間で人生の大決断ができるものではありません。あっちもよいしこっちも捨てがたいと、気持ちが揺れ動きながら決めていく人が大半です。ただ、このときに一つみなさんにおすすめしたいのは、「自分で」決めること。Aさん世代の会社員は、自分のキャリアを会社に委ねてきた人が多く、決断する経験が乏しいので苦手な人が多い印象です。

Aさん: たしかに、ちゃんとキャリアに向き合ってこなかったかもしれないです。

アドバイザー: 決断する上で覚えておいてもらいたいことは、人間には感覚・感情・論理があるということ。仕事のことは論理的に考えがちですが、Aさん自身の感情や感覚も大切にしてほしいです。感覚・感情・論理で整理してみると、自分を客観視できるようになり、数ある判断軸の中で自分にあった軸が見つかりやすくなりますよ。ちなみに、Aさんはご自身がキャリアで悩んでいることを、奥様に相談しましたか。

Aさん: いや、仕事の話は家ではしないですね。

アドバイザー:  一度、今の気持ちや考えを相談してみてはいかがですか。奥様は仕事の中身については詳しくないかもしれませんが、「転勤の有無」「帰宅する時間」などは家族の生活に関わる問題。決断するにも奥様の理解は欠かせません。ほかのご家族では、奥様の本音は「家事・育児にもっと参加してほしい(家族のための時間)」だったこともあるくらいですから。

Aさん: そうですね。ちゃんと話をして、妻の意見も聞いてみようと思います!

未来を考えるアドバイス

大切なのは自分の意志で決断すること。後輩が上司になる姿が想像できるかなど、具体的なシーンをイメージしながら整理しましょう。

・・・(後日談)

Aさんはその後、奥様に自分の会社での状況を率直に話してみたそうです。奥様としては、「リスクを考えると転職は素直に応援できないけれど、昇進のプレッシャーを背負い過ぎなくてもよい」という意見。また、幸いにも下の子の手が離れたため、パートに出て働こうかと思っていたこともはじめて教えてくれました。「管理職になることを現時点で諦めてほしくないけど、ダメでも2人で何とかすればよいのだから、大好きな今の仕事を頑張って」と応援してくれたそう。今は自分の強みだと気づいた調整力や交渉力を活かしながら、販促キャンペーンやプロジェクトに向き合っています。

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