ミドルシニア 40代からのキャリアのお悩み相談室 ~強み理解でモヤモヤ解消~

キャリアのお悩み相談#02:来年には役職定年。自分が必要とされなくなる気がしてきました。(50代男性) 

キャリア

2021年05月13日

キャリアのお悩み相談#02:来年には役職定年。自分が必要とされなくなる気がしてきました。(50代男性) 

「もういい歳だし、今さら新しいことに挑戦できる自信がない」「自分には自慢できるほどの強みや長所が見つからない」…。人生100年時代、コロナ禍で働き方も働く価値観も大きく変わっていくなかで将来が不安になり、これからのキャリアや生き方にモヤモヤとしている40代・50代・60代も少なくありません。

そんな方々の悩みの解決をお手伝いする企画が「キャリアのお悩み相談室」。この相談室では、さまざまな40代・50代・60代のキャリア支援を手掛けてきたベテランキャリアアドバイザーが、日々訪れる相談者のモヤモヤを紐解きながら、自分らしいキャリアを考えるためのアドバイスをしています。

今回相談室を訪れたのは、食品会社で部長を務めるBさん。もうすぐ役職定年を迎える年齢になり、これから先の将来を考えるようになったそう。Bさんが新たな道を考えるうえでは、どんな自分の強みがヒントになるのでしょうか。

※この連載企画では、実際に寄せられた複数の相談内容をもとに架空の登場人物を設定。キャリアアドバイザー監修のもと構成しています。

Bさん

Bさん(54歳/男性/家族構成:妻と子ども1人)

大手食品会社で勤続31年。現在はマーケティング部の部長。会社ではそれなりに評価をされてきて大きな不満はない。来年役職定年を迎えれば給料が下がることが見えており、仕事へのモチベーションは下降ぎみ。1人息子も就職して独立しており、住宅ローンも完済間近。生活を心配するほどではないが、このままなんとなく続けて再雇用になってもよいのかと考え始めた。とはいえ、自分が何をやりたいのか明確なものがある訳でもなくモヤモヤしている。

≪お悩み・モヤモヤの原因は?≫
会社一筋30年。食品業界やマーケティング以外のことはほとんど知らない

Bさん: 食品会社で勤続31年、現在はマーケティング部の部長をしています。来年役職定年を迎えるのですが、このタイミングで仕事を変えた先輩たちも見てきたし、私にもよい仕事・よい会社ってありますかね?

アドバイザー: 会社の先輩方はどんな道に進んでいるんですか。

Bさん: 色々です。そのまま定年を迎えて今の会社に再雇用された人もいれば、中小企業に役員として迎えられた人もいますし、大学で講師をしている人や公共団体の事務方をやっている人も。中には定年を機に新しい仕事にチャレンジしようとしたものの、就職先がみつからず仕事がない時期が長かった人や、転職先で環境が合わずにすぐ辞めた先輩も知っていますけどね。私は部長まで務めたし、何かしら道はあるかなとは思っています。

アドバイザー: たしかにBさんのご経歴を評価して迎え入れたいと思う企業もあるとは思います。ただ、何事も想定外のことはつきものですので、Bさんのキャリアでも想定外が起きることを“想定”しておきましょう。

Bさん: それはどういう意味ですか。

アドバイザー: 例えば、Bさんと同じように大手企業で部長を務めてきた人で言うと、転職先で頑張りが空回りして組織に上手く馴染めなかった人もいますし、新しいキャリアに踏み出した矢先に家庭の事情が変わり、決断を後悔した人もいます。もちろん、これまでの経験を活かして成功している人も沢山いますが、“なんとなく”で決めてしまうと「こんなはずじゃなかった」という気持ちが大きくなりやすいです。

Bさん: うーん。そういうものなんですかねえ。

アドバイザー: では一つ聞いてみたいのですが、Bさんはこれからどんな仕事がしたいですか。

Bさん: そうだなあ…。もう歳だし、強いて言えば経験を活かして先輩たちのように後進の指導につければいいかな。

アドバイザー: それは、企業で人材育成を担うという意味ですか。それとも学生に教えることですか。広い意味では幼稚園や小学校で子どもを相手に教えるのも「後進の指導」ですよね。

Bさん: いや、さすがに子ども相手は考えてないです。今さら企業で若手社員を相手にするのもきついし、先生になりたい訳ではないしなあ…。いろいろと将来を考えていたつもりだったんですが、そこまで深く考えられていなかったです。

アドバイザー: Bさんのように1社で長く同じ仕事を続けてきた人は、素晴らしい職務経験と深い専門性をお持ちなのですが、自分の領域以外のことをほとんどご存知ない方が珍しくありません。情報をお持ちでないと必然的に選択肢が狭くなり、消去法で考えがちです。まずは広くアンテナを張ることから始めましょう。今日ご相談に来られたことも素晴らしい一歩目だと思います。

≪自分の強みの見つけ方・スキルの棚卸≫
エピソード形式で自分のキャリアを振り返り、自分の中の強みを見つける

Bさん: じゃあ、私に合う仕事はなんでしょうか。

アドバイザー: 私がキャリアアドバイスをする際に大事にしているのは、みなさんに答えをご提示するというより、自分の中に眠っている答えを見つけに行くサポートです。人に決められた道ではなく、自分で決めた道に進んだ方が楽しいじゃないですか。

Bさん: そうですよね。…でも、どうやって見つけていけばよいでしょうか。

アドバイザー: ご自身に備わっている能力(できること/得意なこと/強み)に注目してみましょう。もし面接で聞かれたら、何と言って自己PRしますか。

Bさん: 「食品業界で長くマーケティングに携わってきたこと」です。

アドバイザー: 職務経歴としてはそうですよね。では、Bさんはその仕事を通してどんな「仕事の仕方」や「人との関わり方」をしてきましたか。自分の強みを「食品業界のマーケティング」のように専門知識や技能だけで理解していると、どうしても選択肢が狭くなりがちです。業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力=ポータブルスキルを考えてみましょう。

Bさん: そう言われてもなあ。一通りのことはやってきたし、特にこれといって苦手なこともないんですよね。

アドバイザー: では、これまでのキャリアで印象深い仕事を思い浮かべて、その仕事を振り返ってみましょう。例えば、頑張ったこと、やり続けたこと、失敗談などでもよいです。

Bさん: 30代の頃に都道府県別の大規模な味覚調査を起案し、それ以降社内で定期的に実施される調査になったことですね。

アドバイザー: この仕事で、Bさんが工夫されたこと、努力したことは何ですか。

Bさん: そうですね…、「社内の常識を疑ってみたこと」かもしれません。食品業界では昔から関東風・関西風のような地域ごとの好みの違いが販売戦略に大きく関わっていますが、以前は担当者の感覚頼りでした。データにもとづいた判断がしたいと思ったし、食の好みは時代とともに変わっていくものですから、アップデートが必要だと思ったんです。

アドバイザー: なるほど。今のエピソードには、社会全体の動向を正しく捉える力や、既存のやり方にとらわれず新しいアイデアを打ち出す力が感じられますね。ちなみにこの仕事を遂行するうえでどんな人と関わってきましたか。

Bさん: 全国規模の調査でしたので、外部のマーケティング会社には多大なご協力をいただきました。関わる人も大人数だったので調整が難航する部分もあったのですが、粘り強く交渉を続けて調査体制をつくっていったのも思い出深いです。…そうか、他の仕事にも応用可能な強み・能力ってこういうものなんですね。

アドバイザー: まさしくその通りです。40代・50代・60代の方々にとっては、ポータブルスキルはこれから身に付けていくものというより、すでにみなさんの中にあるもの。過去を振り返り、スキルの棚卸をしながら気づいていく過程が大切なんですよ。

スキル棚卸のポイント

自分の強みに繋がる事柄に関して5W1Hで掘り下げていきましょう。普段の仕事の中で何気なくやってきたことを具体的に言語化し、客観視することで、身につけてきたスキルとして自覚できます。

※ポータブルスキル=業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力

≪自分の強み(ポータブルスキル)を活かす方法≫
「できる(CAN)」×「やりたい(WILL)」の掛け算で、強みを発揮したい環境を探る

Bさん: 自分の強みは少し見えてきましたけど、これが分かれば自分の進むべき道が決まってくるものですか。

アドバイザー: ぜひおすすめしたいのは、「できる(CAN)」と「やりたい(WILL)」を接続することです。自分が本当にやりたいことなら、自らに備わった能力(ポータブルスキル)が一番発揮されやすいでしょうし、モチベーション高く継続していく原動力にもなりやすいです。

Bさん: やりたいこと、かあ。やっぱりすぐには思いつかないです。

アドバイザー: 大丈夫ですよ。今すぐ結論が出るものではないので、じっくり考えていきましょう。ちなみにBさんと近しい立場の方だと、昔からの夢を思い出してその道に進んだ方もいらっしゃいますね。若いころに海外赴任をした経験を思い出し、語学力を活かしてフリーのツアーガイドになった人や、熱帯魚好きが高じてショップを始めた人もいます。

Bさん: 凄いですね…。私にもそういう趣味や経験があったらよかったんですけどね。仕事一筋だったからなあ。

アドバイザー: 「できること(強み)」を軸にやりたいことに辿り着くパターンもありますよ。これは極端な例ですが、例えば、企画系の仕事を長くやってこられた人が、ご自身の企画力や発想力を整理し、一冊の本にまとめて出版。この著書をフックに企画職初心者向けのセミナー講師をしている人もいます。

Bさん: なるほど。どちらかというと私はそっちのパターンのような気がします。ちゃんと考えていなかったですけど、今の会社に残るのか転職するのかだけでなく、独立する道もあるんですよね。私がぼんやりイメージしていた「後進の指導」って、セミナー講師とかコンサルタントだったのかもしれません。

キャリアを考えるポイント

「転職」「残留」の二択ではなく、起業やフリーランス、副業といった選択も増えてきています。同じ結論でも「選択肢がない」のか、「さまざまな選択肢から自分が本当にやりたいものを選ぶ」のかでは大きく違います。

≪自分の強みをもとに未来を考える≫
最悪のシナリオを思い浮かべてみて、それでもやりたいと思えるか

アドバイザー: 独立も考えてみたいと仰っていましたが、ご家族とも十分話してみてくださいね。

Bさん: そうですね。まあ、息子も独立しているので妻と二人ならなんとかなるかとは思ってはいるのですが。

アドバイザー: 奥様も同じお気持ちならよいのですが、これからも一緒に人生を過ごされる大切なパートナーですから、仕事だけでなくこれからの人生について話す機会を持たれることをおすすめします。また、どんな決断をするにしても、その道を選んだときの“最悪のシナリオ”は一度想像してみた方がよいでしょう。

Bさん: なんだかちょっと怖いですね。

アドバイザー: 独立すれば、毎月一定額の収入が入ってくることは保障されませんよね。軌道に乗るまで数ヶ月赤字が続くかもしれないし、いつから黒字に転換するかが決まっている訳でもない。独立・起業した人たちはそれでもやってみたいと自分の中で腹を括って一歩踏み出しています。新たな道に進むには相応の覚悟と準備が必要です。だからこそ、広く情報を収集し、深く検討し、自分の意志で決めるというプロセスを大切にしてほしいです。

Bさん: たしかにそうですよね。大抵のことは分かっているつもり、考えているつもりだったんですが、自分はまだまだ知らないことも多いし、案外深く考えていないことに気づきました。もっと自分のことを整理してみて、じっくり考えてみたいです。今日はありがとうございました。

未来を考えるアドバイス

目標が見えてきたら、事前に想定される困難を思い浮かべてみてください。それでもやりたいと覚悟ができるだけの情報収集と検討も重要です。

・・・(後日談)

分析力や課題設定力、発想力という自身の強みに気づいたBさん。その能力を活かして中小企業向けのコンサルタントとして独立するという道を志すようになりました。現在はその準備として副業で異業種のマーケティング活動の支援や、ブログを書くこともスタート。奥様から出された独立の条件は、「副業で今の収入の2/3以上稼ぐこと」だそうで、その目標達成に向けて実績を重ねているそうです。

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